SATORIが実践するデジタル接客
では一体どうすれば、見えない見込み顧客の心の変化を認識し、接点を持つことができるのだろうか。「SATORIでは、MAを知らない層にいち早く接触し、MAの存在を啓発するようにしました」と植山氏。「いちばん赤裸々に話せる事例」として、自社の取り組みを例に具体的な方法を共有した。
セールス&マーケティングのプロセスを「接触」「認知」「興味喚起」「行動喚起」の4段階に分解したとき、従来のセールス&マーケティングでは、2つの方法が用いられていた。
ひとつは「接触」からいきなり「行動喚起」を促すやり方。たとえば、大企業が大手メディアに広告を出稿し、リアルの展示会や自社イベントに来てもらって、見込み顧客に接触する場合がこれにあたる。もうひとつは、中小企業が予算を抑えて顕在層だけにアプローチする方法。しかしいずれの場合も、CPAが高くなりがちという課題が存在していた。
デジタルにおいてもプロセスそのものは以前と変わらず、それぞれの段階に応じた施策を設計する。重要なのは、4段階すべてで施策をデジタルで展開することだという。
(1)接触 見込み顧客が集まる接点を探す
「リアルでもデジタルでも、課題を抱える人が集まる場所で接点を持つことは同じ」と植山氏。同社のターゲット顧客である、マーケティングや営業に課題を抱える人たちとどう接触するかを考えたとき、目をつけたのがメディアだった。同社では「コンテンツマーケティング」か「認知促進広告」を使用しているという。
コンテンツ作りの際には関係者が集まり、ブレインストーミングで見込み顧客に検索されそうなキーワードを洗い出し、そのキーワードに基づく記事を制作したという。たとえば、「メルマガ 開封率」「マーケティングとは」という検索ワードであれば、それぞれ「メルマガの開封率はどのぐらい?平均から見るKPI設定について」「『マーケティングとは?』一番分かりやすい入門編」というタイトルの記事を用意するといった具合だ。
また認知促進広告では、広告ツールに備えられている「コンバージョン類似」という機能が役に立つ。この機能は、AIが自社の見込み顧客に似たプロファイルを持つセグメントを探してくれるもの。「コンテンツマーケティングは競合が同じことをやり始めると厳しくなりますが、コンバージョン類似を使用することで、他社と被らないオーディエンスを集め、効率よく配信を行うことができるのです」。
(2)認知/興味喚起 段階的にコンテンツを提示
この段階でもまだ、集めた見込み顧客は匿名のままである。その人たちに、どんなアプローチをとれば自社製品の良さを感じてもらえるのか。「リアルでセミナーを開いて情報を提供するのと同じで、デジタルでも、見込み顧客の認知や興味の度合いを判断し、それに応じたコンテンツを提示するのです」と植山氏は説明する。
同社では、インサイドセールスの記事を見た人にはMA関連の記事、MA関連の記事を見た人には導入事例、導入事例を見た人には資料請求のページを案内するといった流れで、段階的に啓発コンテンツを提供するように設定。実際にどの見込み顧客が興味をもってくれているのかを分析する時は、カスタマージャーニーマップやアクセス解析を用いるという。
しかし、ビジターは想定通りに案内したリンクをクリックしてくれるとは限らない。同社が興味喚起を促すためにやっていることは、次に読んでほしいと思う記事を、ポップアップやプッシュ通知で案内することである。
また植山氏は、「そのうち」の見込み顧客と「今すぐ」の見込み顧客に分けて配信することも重要だと述べ、読んでもらった啓発コンテンツをトリガーに、ステップ広告を出しながらリターゲティング広告を配信するというノウハウを加えて紹介した。
(3)行動喚起 ポップアップやプッシュ通知で行動を促す
興味が薄いところに対して発信する認知広告に対して、見込み顧客の興味が深まってきたところで配信するのが行動喚起広告だ。同社にとっての「行動」とは、資料請求やセミナー申し込みをしてもらうこと。これを目指して、MAツールの比較記事を見ていたり、料金表を見ていた場合は、資料請求やセミナー申し込みフォームをポップアップで出したりする。ポップアップやプッシュ通知も、行動を促すものに変えていく。