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生活者の想像を超え共感をつかんだとき、広告でないものが広告に

2018/12/25 15:30

 マーケターを悩ませる、広告が見てもらいにくくなっているという課題。これに対し、“広告でないもので広告する”に取り組んでいるのが、クリエイティブエージェンシー・猿人の佐藤光仁氏だ。意外な視点を加えた技術や表現で、見る人の感情や感覚を刺激する同氏のクリエイティブから、生活者とまっすぐに向き合う広告の作り方を学ぶ。

※本記事は、2018年12月25日刊行の定期誌『MarkeZine』36号に掲載したものです。

広告でないコンテンツに広告の要素を

猿人 コピーライター・プロデューサー 佐藤光仁氏
2006年に大広入社。1年間の博報堂DYメディアパートナーズ出向を経て、2015年猿人へ。国内外問わず、多くのクライアントのコミュニケーション領域全般を担当する。エモーショナルでフィジカルな価値を共有できる企画・アウトプットを日々模索中。SPIKES ASIAシルバー、ONE SHOWブロンズ、CLIOファイナリストなど受賞多数。

――佐藤さんは「広告でないもので広告する」をモットーとされていると聞きました。このモットーについて教えてください。

 このモットーが意味するのは、アニメやテレビ番組、ミュージックビデオなどのコンテンツに、広告要素を付加することで生活者へ届けていくということです。現在、広告に携わる方の多くが「以前より広告を見てもらいにくくなっている」という課題に頭を悩ませていると思います。情報供給量が圧倒的に増えた結果、良質な情報ですら生活者に届きにくく、生活者が情報を見つけるのも困難になっています。

 それを打開するには、そもそも生活者が興味のあるコンテンツの中に広告的な要素を入れていく、つまり「広告でないもので広告する」ことが有効だと考えています。このスタンスは、前職時代に学んで以降、自分の企画の軸となっています。

――実際にその考えを実現した事例を紹介いただけますか。

 では、野村ホールディングス様の「みんなの自己ベスト」というオンラインムービーをご紹介します。これは「自分を超えること」を目標に、競泳の元メダリストやタイムに伸び悩んでいる小学生、トライアスロンに励むシニアやハンディキャップを持つ方など様々な背景の参加者が一堂に会し、自己ベストを更新するために必死に努力をする姿を約1ヵ月に渡って追いかけたドキュメンタリー企画です。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックへ向けた企業広告ですが、参加者一人ひとりの思いや努力を脚色することなく表現することを意識し、演技指導などは一切していません。オリンピック・パラリンピック関連の広告はアスリートに向けたメッセージや企業本位なものになりがちですが、このムービーでは、「きっと、みんな自分を超えられる」という普遍的なメッセージのもと、誰でも共感できるクリエイティブを目指しました。

――「広告でないもので広告する」を実現するため、大切にしていることはありますか。

 自分が生活者の立場で見て、心の底から信じられる取り組みであるかを大切にしています。クリエイターのミッションは、クライアントの意向や目的を世の中に響く形のコミュニケーションとして翻訳し、定着させることだと考えています。そのため、クライアントの方と丁寧な議論を重ねる必要がありますが、プロジェクトやプロダクトが世に出る時、そのような事情や経緯は生活者にとっては関係がないことです。

 そのため生活者目線で、広告やコミュニケーションに興味を持てるか、そしてわかりやすい表現であるか。さらに、友だちや家族にも伝えたいと思えるかどうかは常に意識しています。それがないと他人には絶対に届きませんし、逆に自分自身がやりたいと確信が持てたアウトプットは自ずと、過去の経験からも成功確率が高い傾向にあります。

 また「広告でないもので広告する」手法において、デジタルメディアはアウトプットの敷居を下げてくれますし、表現の自由度が高いため有効だと考えています。あくまでコスト面やワークフローに起因するものですが、デジタルに規定の尺はほとんどない上にWebサイトとの連動なども図りやすく、優れたコンテンツであれば伝播しやすい土壌があると思います。しかしながら、広告やコミュニケーションにおいて、デジタルは目的ではなくあくまで手段であるため、その点は忘れないようにしています。


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