オンライン恋活・婚活は当たり前のサービスに
近年、恋活・婚活を目的としたマッチングアプリ(オンラインデーティングサービス)市場が大きく成長している。リクルートブライダル総研の「婚活実態調査2018年」によると、オンラインの婚活サービスを用いて結婚した割合は過去最高を記録。2019年の同市場規模は約500億に上ると予測され(マッチングエージェント/デジタルインファクト調べ) 、20~30代の層を中心にオンラインでのパートナー探しは当たり前になっていくと見られているのだ。
そのような中、日本のブライダル市場の拡大をサポートしてきたゼクシィが、同ブランドのオンライン恋活サービス「ゼクシィ恋結び」を2014年12月、婚活サービス「ゼクシィ縁結び」を2015年2月~5月にスタート。その立ち上げ背景を、現在両サービスのプロモーション全般を担当するリクルートマーケティングパートナーズの宍戸誠一氏は、次のように語る。
「ゼクシィは、大切な相手と新しい人生をともにすることを決めた方たちへ寄り添うという世界観を育んでいます。その一方で、生涯未婚率の増加や婚姻組数の減少が社会問題となっている中、我々がお客様の幸せな結婚をサポートするために着目したのが、恋活・婚活市場でした」(宍戸氏)
ゼクシィブランドの恋活・婚活サービスという安心感
ここで、ゼクシィ恋結び・ゼクシィ縁結びのサービスを紹介したい。リクルートマーケティングパートナーズでは、結婚の一歩手前である出会いや恋のきっかけ作りを応援する恋活サービス「ゼクシィ恋結び」、結婚相手との出会いを考えている人を応援する「ゼクシィ縁結び」のサービスを展開。両アプリではオンライン上でコミュニケーションを取り、パートナーを探すことができる。
恋結びは、男性の月額会費が1,980円~(12か月プラン購入時の1ヵ月あたりの料金)であることに対し、女性は108円(本人確認手数料)。縁結びは男女ともに月額2,592円~(12か月プラン購入時の1ヵ月あたりの料金)という料金体系だ(いずれも決済方法・加入期間などで料金は異なる)。このようなマネタイズポイントの違いは、多くのオンライン恋活・婚活サービスに見られる。同サービスのマーケティング設計をする上で、重要な要素だ。
さらに宍戸氏は、ゼクシィ縁結びの特長として会員登録時の「価値観診断」を挙げる。これは、ゼクシィを通じて結婚した6,000組を対象に 、幸せな結婚生活を送るカップルを分析して作成された、18問の診断フォーマットである。診断結果は13タイプに分かれ、価値観の合う相手の紹介や、カップルの相性診断などに活用されている。
また業界初のサービスとして、個人情報を介さずにデート日程を決める機能「お見合いコンシェルジュ」を行うなど、安心でスマートな出会いのきっかけを提供しているのだ。
さらに、ゼクシィ縁結びはオンラインサービスだけでなく、対面の婚活相談カウンターや婚活パーティの運営とマルチチャネルのサービス展開が強み。この点も、出会い・結婚・出産領域をトータルでカバーするゼクシィブランドならではだろう。
両アプリが急成長できた大きな要因とは?
サービスインと同時にアプリをスタートしたゼクシィ恋結びに続き、ゼクシィ縁結びは2018年4月にアプリをリリース。現在会員数は、2017年度比で280%増加しており、75万人を超える。
その会員数の増加を目的に行っているマーケティング施策の一つが、中国アドテク企業Mobvistaのモバイルプラットフォームの活用である。
2013年に創業し、中国広州に本社を置くMobvistaは、2018年12月に香港証券取引所に上場。現在世界12ヵ国でサービスを展開し、直在庫保有量、データ量、AI技術力の高さなどから中国を代表するアドテク企業と評される。日本法人は2017年9月に設立しており、現在すでに日本国内の300以上のキャンペーンで、同社のサービスが利用されている。
宍戸氏は、Mobvistaを採用した大きな理由として「AIによる広告配信最適化」を挙げた。
宍戸氏によると、たとえば年末年始に帰省した際やGWなどの大型連休に婚活市場が大きく動くという。しかし、どのようなきっかけで婚活をスタートするかは、人それぞれであり、新規会員の獲得には幅広く広告を配信し、成果の良い媒体・クリエイティブを見つけていく必要がある。
しかし、「配信面の細かな分析が人力でリソースがかかり過ぎていた」と宍戸氏。この課題に対するソリューションとして最適だったのがMobvistaだという。
「MobvistaのAI機能はとても優秀で、広告配信最適化を簡単に実現してくれます。無料新規会員の目標KPIに対し、満足の得られる成果が出ていますね。また、運用担当の方も、こちらからの細かな要望も高い感度で受けとめて運用に反映してくれます」(宍戸氏)
世界中で膨大なデータ量を保有するMobvista
AIによる広告配信最適化・分析精度の向上は、各社がしのぎを削る領域だ。Mobvistaはエンジニアが全社員の半数以上を占め、その中にはAI専門に開発を進める者も多いという。この体制で開発しているAIの優位性について、同社の井料氏は次のように語る。
「まず中国はアメリカと並ぶ勢いのAI大国でもあり、AI人材の確保にあたっては、比較的行いやすい環境にあります。またMobvistaは、AIにとって生命線とも言える学習を行うためのデータを、グローバル規模の量と質で保有しています。その上で、効果計測用のSDKから課金や継続起動率などのデータを個人情報には触れない形で取得し、AIを用いてユーザーの行動分析を行います。この分析結果をもとに、配信を自動で最適化します」(井料氏)
では、Mobvistaは具体的にどの程度のデータを保有しているのだろうか。井料氏によれば、世界で約3.3億人に配信できる直在庫を保有し、その分量のアプリデータをデイリーで把握しているという。あわせて、同社のグループ企業で無料のゲームアプリ分析ツール「GameAnalytics(ゲームアナリティクス、本社デンマーク)」は世界で16,000社・6万タイトルが利用し、デイリーで9,000万人分のデータを収集している。
MobvistaのAIは、この膨大なビッグデータを用いて学習し、広告主からのオーダーに合わせた広告配信最適化を行うのだ。
中華系アプリへの配信に期待
続いて宍戸氏は、Mobvistaの利点に「中華系アプリへの広告配信が可能なこと」と「運用面の柔軟さ」を挙げる。
現在、TikTokをはじめとした中国企業発アプリのグローバル進出が著しい。Mobvistaは早くから中国企業アプリの海外進出を支援し、そのネットワークを築いてきた。ゆえに、カメラアプリ「Camera360」や、セルフィーアプリとして人気の「BeautyPlus」といったアプリの直在庫を抱えている。
また、成果地点や単価の変更など、細かいキャンペーンマネジメントが発生した場合でも、Mobvistaはスピーディに対応し、成果を維持できるよう運用面で支援。この点も、宍戸氏は高く評価しているという。
これに対し井料氏は、テクノロジーだけでなく「運用チームの拠点である北京との時差が1時間であること」「中国市場自体が競争が激しくレベルが高いため、知見や運用に長けた、プロフェッショナル意識が高いスタッフの存在」が成果を支えていると自信を見せた。
「Mobvistaでは常に、お客様に継続的な成果をもたらすことを意識しています。仮にキャンペーンの停止依頼を頂いた場合でも、なぜそのような判断をされたのかヒアリングを行い、そのフィードバックは、次回以降の機能や運用の改善へつなげています」(井料氏)
マッチングアプリ市場を健全なものに
最後に、宍戸氏・井料氏から今後の展望を聞いた。宍戸氏はまず、マッチングアプリ市場の形成について語った。
オンライン恋活・婚活サービスへの認知は高まっているものの、まだ不安を抱える潜在層はいる。リクルート内では同サービスの不安要素を「恥ずかしい・あやしい・高い」の頭文字からHATと定義しており、宍戸氏は業界全体で健全な市場形成へ努めていきたいとした。
「ゼクシィ縁結びでも、24時間365日のパトロールや本人確認の徹底など、マッチングアプリを安心安全にお使いいただくための体制を揃えています。そして、何よりもゼクシィというブランドは強みでもあり責任でもあります。登録されたお客様のアンケートによると、『ゼクシィだから』もしくは『リクルートだから』登録したというお声が多い。この期待にお応えし、会員の皆さまに対し幸せのきっかけ作りをサポートしたいです」(宍戸氏)
続いて井料氏も「引き続き、ゼクシィ恋結び・縁結びのアプリプロモーションへ貢献していきたい」と語り、Mobvistaのサービス拡大を掲げる。
現在、Mobvista日本法人が提供するサービスは、アプリインストールを目的としたプラットフォームが中心だが、今後、中国や欧米で展開している複数事業を、日本で導入することも検討しているという。
「Mobvistaでは、事業を展開する各国でのローカライズを徹底し、お客様をグローバルで支援する“グローカル”を打ち出しています。中国企業アプリの海外進出をサポートしてきたノウハウを、各国へ展開していきたいです」(井料氏)
各ストア経由で海外配信にチャレンジしやすいことも、アプリビジネスの特長だろう。中国企業発アプリの躍進、そしてアプリのグローバル展開を狙える環境に、アプリビジネスの新たな成長が期待できそうだ。