多様化するポッドキャスト・コンテンツとプラットフォーム
ハードウェアだけでなく、コンテンツとプラットフォームの多様化もアクセシビリティを高める要因になっている。コンテンツ量が増加しているのは、企業やメディアに代わってポッドキャストを制作するサービスが増えているためだ。
ポッドキャスト制作サービスの代表的な企業としてはGimlet Media、Panoply、Wonderly、Midrollなどが挙げられる。
Gimlet Mediaは2014年にニューヨークで設立されたスタートアップ。シードラウンドで150万ドル(約1億7,000万円)、シリーズAで600万ドル(約6億8,000万円)、シリーズBで1,500万ドル(約17億円)を調達した注目の企業だ。2017年9月には世界最大級の広告グループWPPが500万ドル(約5億7,000万円)を投じ少数株主になったと報じられている。
Gimlet Mediaはオリジナルコンテンツと企業とのタイアップコンテンツを制作・配信している。主力チャンネルの1つは同社創業者であるAlex Blumberg氏がホストを務めるオリジナルコンテンツ『StartUp』だ。起業家ゲストを迎え起業に関する様々な情報を配信、第1回はGimlet Mediaの起業ストーリーが紹介された。Observerによると、2015年2月時点の月間リスナー数は100万人ほどだったという。

企業とのタイアップコンテンツでは、eBayと共同制作した『Open for Business』が有名だ。連続起業家で投資家でもあるニューヨーク在住のJohnHenry氏がホストを務め、様々な起業家をゲストに迎え、ゼロからビジネスを起こすヒント、ビジネス課題の乗り越え方などを紹介している。
またGimlet Mediaはマスターカードと共同で『Fortune Favors The Bold』を制作。ギグ・エコノミーの中で生まれている新しいライフスタイル、お金の考え方、「成功」の定義の変化などを紹介している。
Panoplyは2015年に米オンライン出版のSlate Groupが設立したポッドキャスト企業。ハフィントンポスト、ウォール・ストリート・ジャーナル、ポリティコなど多くのメディアのポッドキャスト制作に携わっている。また、プルデンシャルやスターバックスなどともタイアップコンテンツを制作している。
Panoplyが制作に携わったポッドキャストで有名なのが、ゼネラル・エレクトリックと共同制作した『The Message』だ。地球外生命体からのメッセージを解読しようとする科学者たちのストーリーを描いたサイエンスフィクションで、第1シーズンは2015年10〜11月まで全8回にわたって配信された。リスナーは100万人以上にのぼり、iTuneランキングでは1位を獲得した人気シリーズとなった。その人気から2016年11月から続編の『LifeAfter』が10エピソードにわたり配信された。

ポッドキャストコンテンツ制作・配信に特化した企業の登場に加え、プラットフォームの多様化もアクセシビリティ向上に寄与している。
たとえばGimlet Mediaの『StartUp』は、Apple Podcastだけでなく、Spotify、GooglePodcast、Overcast、Stitcher、Tuneinなどを通じて聞くことが可能だ。
最近では、人工知能を活用したレコメンドサービスを提供するポッドキャスト・プラットフォームCastBoxへの注目が集まっている。2016年に設立したスタートアップで、当初は中国市場をターゲットにしていたが、その後拠点をサンフランシスコに移転。開発オフィスは北京にあるという。

クランチベースによると、CastBoxは2017年6月にシリーズAで1,280万ドル(約14億円)、2018年4月にシリーズBで1,350万ドル(約15億円)を調達。これまでの調達額合計は2,960万ドル(約33億円)になる。CastBoxのプラットフォームでは、人工知能を活用した音声認識によってポッドキャストのコンテンツを分析。ユーザーの履歴から、好みのポッドキャストをレコメンドすることが可能だ。CastBoxがポッドキャスト版のHuluやNetflixのような存在になれるのかどうか、今後の可能性に期待が寄せられている。
現在、黎明期の様相を呈しているポッドキャスト市場。人工知能など先端テクノロジーを活用したサービスは今後も増えてくると考えられる。現在、英語圏での動きが活発化しているが、少し時間をあけて中国語圏でも市場が立ち上がってくるはずだ。今後の展開から目が離せない。