※本記事は、2019年1月25日刊行の定期誌『MarkeZine』37号に掲載したものです。
今、米国や英国などの英語圏ではポッドキャスト市場が急速に拡大している。Edison Researchの最新調査(2018年版)によると、米国では44%(12歳以上)がこれまでポッドキャストを聞いたことがあると回答。これは1億2,400万人に相当する人数で、前年比では1,200万人の増加となる。また26%(7,300万人に相当)が月間でポッドキャストを聞いていると回答、2013年の13%から大幅に伸びている。
インターネット広告の国際業界団体IAB(Interactive Advertising Bureau)の調査では、米国におけるポッドキャスト配信企業の広告収入は2017年に3億1,400万ドル(約350億円)に達し、前年比で86%の大幅上昇を記録したことが明らかになった。2020年には6億5,900万ドル(約750億円)に達する見込みだ。
新たな広告媒体として注目を集めるポッドキャスト。なぜ最近になり普及し始めたのか、その理由を探るとともに、今後の可能性を展望してみたい。
月間推定7,300万人、米国で急増するポッドキャスト・リスナー
「ポッドキャスト」という言葉が登場したのは2004年頃。英ガーディアン紙のコラムニスト兼BBCのジャーナリストだったBen Hammersley氏が「iPod」と「broadcast」という言葉を掛け合わせて作ったと言われている。
ポッドキャストはPDFや動画の場合もあるが、ほとんどが音声コンテンツだ。インターネット上に音声ファイルがホストされており、iTuneなどのアプリを通じてパソコンやスマホにダウンロードする。その多くがシリーズコンテンツで、RSSによって新エピソードが自動的にダウンロードされるのが特徴となっている。
ニュースを伝えるものから、起業家のストーリー紹介、コメディ、サスペンス、教育、ゲームに関するものまで様々なジャンルのコンテンツが配信されている。
冒頭で紹介したEdison Researchの調査結果は、近年のポッドキャストブームを如実に反映したものになっている。
たとえば「ポッドキャスト」という言葉の認知度合い。12歳以上のアメリカ人で「ポッドキャスト」という言葉を知っていると回答した割合は2006年には22%のみだったが、2018年には64%に上昇した。
認知度合いの高まりにともない、これまでポッドキャストを聞いたことがあると回答した割合も2006年の11%から2018年には44%に増加。また月間でポッドキャストを聞いていると回答した割合も2008年の9%から2018年には26%に増加している。これは7,300万人に相当するという。
ポッドキャストを聞いている12歳以上のアメリカ人を年齢層別に見ると、55歳以上が32%で最も多い。次いで35~54歳が31%、18~34歳が28%、12~17歳は9%となっている。年齢区分では大きな差はなく、どの年齢層もポッドキャストを聞いているということが示唆されている。
またポッドキャストは、リスナーのエンゲージメントが高いと言われているが、それも数字に表れている。1週間あたりのポッドキャストを聞く時間は、3~5時間が25%、5~10時間が16%、10時間以上が17%と多くのリスナーがかなり長い時間聞いていることが判明。さらにポッドキャストの1エピソードのうちどれくらいの量を聞いているのかという質問では、44%がほとんど聞くと回答、43%がすべて聞くと回答している。
聞く場所に関しては、家が82%、車/トラックが58%、歩きでの移動中が41%、職場が34%、ジム/エクササイズ中が29%、公共交通機関が28%となっている。家では、子育てや料理、掃除の最中に聞いている人が多いことが示唆されている。またアマゾンエコーなどのスマートスピーカーで聞く人が増えている可能性も指摘されている。
ポッドキャストが近年急速に普及している理由の1つにアクセシビリティの高まりがあると言われている。もともとパソコン経由でポッドキャストを聞くことが多かったが、近年のスマホの普及によってポッドキャストを聞く場所と時間の制約がなくなっているためだ。ポッドキャストを聞くデバイスに関する質問では、2013年には58%がパソコン、42%がスマホ/タブレットで聞くと回答していた。一方、2018年にはパソコンが24%に下がり、スマホ/タブレットが76%に上昇した。