逆境の中で生み出された32の技術
Amazonの書籍「商品開発」部門で売れ筋ランキング1位を獲得している(2019年1月21日現在)、『1秒でつかむ 「見たことないおもしろさ」で最後まで飽きさせない32の技術』。
本書が持つ最大の特徴、それは単なる企画・コンテンツづくりのためのヒントを集約したビジネス本に終始していない点です。
著者の高橋氏は、本書で紹介されている技術について、「この書籍に書かれている技術は、すべて銀河系一しょぼいでおなじみのテレビ東京に勤めながら、生み出された技術です」と述べています。制限された制作予算の中で、他のテレビ放送局に負けないコンテンツづくりをするため、同氏は様々な工夫や努力を積み重ねてきたそうです。
こうした、言わば逆境の中で研鑽された技術には、テレビ業界のみならず、営業や広告・PRの世界にも通用するエッセンスが凝縮されています。
企業は消費者の「1秒」と向き合う時代に
高橋氏は本書の中で、コンテンツ産業においては「1秒単位で消費者の気分と向き合う時代が来た」と語っています。この発言からは、スマホの普及などで消費者の可処分時間を奪い合う企業間の競争が激化する中、消費者の興味関心を引くコンテンツづくりやサービスの訴求をしていく重要性が高まっていることがうかがえます。
では、消費者との関係を1秒でも長く継続するためには、どのような技術が求められるのでしょうか。
高橋氏は、本書の後半部分「1秒も『ムダではなかった』と思ってもらうために」で、企業と消費者のつながりを強固にする技術として「サウナ力(りょく)」を紹介しています。これについて、同氏は以下のように説明をしています。
サウナは、最後に「水風呂に入る」という結末で最高潮の快感を得ます。そして、そのために、体にあえて「水風呂で奪うべき熱を蓄えさせる」という「体験」をする行為なのです。「熱」を得るという体験をしなければ、その「熱」を失う体験はできないのです。そして、その先にある、熱を失うことで得られる「効能」(サウナなら快感)も得られない。
つまり、商品・サービスを訴求する際には、単にその魅力や価値を「説明」するのではなく、それらを消費者が実感する「体験(ストーリー)」を用意することが、肝要だというのです。この視点は、特に新規の商品・サービスを訴求するにあたって欠かせないのではないでしょうか。
本書では、上記の他にも、高橋氏の実体験を交えた技術の紹介が多数掲載されており、そのすべてが具体的かつ実用的です。これまでになかったようなアイデアで新たな価値の創出を目指すマーケターや、自社が提供する商品・サービスの効果的な訴求方法に悩む広報・PR担当者、そして、業界のリーディングカンパニーに太刀打ちするために持つべきマインドを知りたい方にも是非推薦したい1冊です。