ライフスタイルを変える力がある
西井:サブスクリプションのおもしろさに、ユーザーのライフスタイルを変えてしまう影響力を持っていることが挙げられると思います。たとえば、弊社のミールキット「KitOisix」は、毎日の買い物や献立を考えるという、これまで当たり前とされていたライフスタイルに変化をもたらすようなサービスです。
山脇:動画配信サービスの場合は、レンタルビデオ店へ行き、映画のDVDなどをレンタルするという行動に変化を与えたと思います。ただ、依然としてレンタルビデオ店を利用される方は多いです。我々としても、この層へのアプローチにはまだ伸びしろがあると考えています。ちなみに、西井さんは話題の映画を観忘れてしまった時、どうされますか?
西井:後日パッケージ化された製品を買うか、レンタルビデオ店へ行きます。
山脇:そうですよね。最新作を観たいという方は、レンタルビデオ店を利用されることが多いと思います。というのも、映画の場合、公開後は「パッケージ販売」「有料の個別課金配信」「見放題の動画配信」の順に視聴方法が広がります。そのため、レンタルビデオ店で入手したほうが早いんです。
ただ、「dTV」では、次に早く視聴ができる「有料の個別課金配信」に対応しています。つまり、見放題の動画配信サービスよりも先に新作にアクセスすることができます。「店舗へ行かずとも新作から旧作まで視聴できる」「延滞金のリスクもない」という体験価値の認知を拡大させるようなプロモーションをしていきたいですね。
西井:まずは、これまでの習慣を変える最初の一歩を乗り越えることが課題ですね。
山脇:各施策でユーザー行動を変えるきっかけを作ることもできますが、世の中の変化に後押しされると、行動も変わっていくと思います。ですので、ユーザー数や継続率も重視しつつ、長く付き合いたいと思ってもらえるようなサービスを設計していくことがまずは大切だと考えています。

あらゆる場所・手段で動画視聴ができる体験を
西井:私は、動画配信サービスはこれから価格競争になっていくのではないかと予測しています。そのような変化の中で、「dTV」は「dマーケット」というプラットフォームの一部として「dポイント」との連動性を持っています。この点は、競合サービスと比べて優位性が高いと思うのですが、今後はどのような展望を描いていますか。
山脇:サービスが同質化してくると、ポイントなどの付加価値が意思決定に関与してくるかもしれないですね。我々で言えば、「dポイント」を保有することで「dマーケット」が提供する多様なサービスをお得に楽しみたいというニーズも高まってくると思います。
今後の展望としては、テレビのような大きな画面で誰かと一緒に映像を楽しめる体験を提供していきたいです。「ひかりTV for docomo」は、まさにそれを想定して作られたサービスです。「ドコモテレビターミナル」を導入すると、「ひかりTV for docomo」「dTV」「DAZN for docomo」といった各動画配信サービスにおける、あらゆるジャンルの動画を楽しむことができます。
西井:スマートフォンでの動画視聴を、「みんなで集まり大画面で楽しむ」という形に広げたいということですね。ある種の揺り戻しにも見えますが、従来のテレビと違うところは、個別最適化されたコンテンツが豊富にあるという点でしょうか。
山脇:やはり、動画をテレビで見る体験や満足度は、スマートフォンでの視聴とは一線を画すものだと思っています。今のスマホネイティブ世代が結婚して家庭を持つようになった時に、リビングのテレビで家族や友人と様々な動画を楽しめるような世界を目指しています。
今後も、あらゆるデバイスでの視聴や各種サブスクリプションサービスとの連動を可能にすることで、より大きなネットワークを築いていきたいですね。
西井:本日はありがとうございました。
第3回では、月額制のファッションレンタルサービス「エアークローゼット」についての対談を予定しています。