“マイクロトレンド”を活用したマイクロマーケティング事例
メディアのシームレス化の影響もあり、大きなトレンドが生まれにくい時代となって久しいですが、「トレンドが生まれない時代」になったのではありません。生活者の価値観が多様化した結果、年代性別を問わず誰もが知っている「マストレンド」が生まれていた時代から、世代ごと・クラスタごとの「マイクロトレンド」が同時多発的に複数発生する時代へと移り変わっているのが実態です。
そして、この「マイクロトレンド」を把握することが、マイクロマーケティングを成功させる上で非常に重要となるのです。
トレンダーズが2018年に実施したカシオ計算機の電子辞書「『EX-word』XD-Z4800」のプロモーション企画は、ターゲットが中学3年生と高校1年生という、まさにマイクロマーケティングが必要とされるものでした。
まず、ターゲットである中学3年生・高校1年生に対してトレンドについての定性調査を実施したところ、浮かびあがってきたのが「荒野行動」というバトルロイヤルゲーム。2017年12月に全世界に向けてリリースされたこのゲームは、当時高校生の間でブームになりつつありました。
そこでこのゲームと同様の世界観で、電子辞書がゲームアイテムとして登場するゲーム実況動画を制作し、実況にはターゲット層に人気のYouTuberを起用しました。その結果、Twitterを中心としたSNSでターゲット層の間で爆発的な話題となり、さらにその動画を店頭サイネージでも活用することで購買行動にも結び付けることができました。

「2018年JK(女子高校生)トレンド東西ランキング」においてもヒットアイテムとして
東西ともにTOP5にランクインしています。(https://markezine.jp/article/detail/30068)
このように、マイクロマーケティングを実施する際は、ターゲットクラスタ内でのトレンドを踏まえたコミュニケーションを設計することで、成功確度を高めることができます。その際、単にトレンドに便乗してはいけません。ターゲット内でなぜそれがトレンドとなっているのかというインサイトを的確に捉え、それに即したマーケティング施策を組み立てることが必要なのです。
メディア発想から「コミュニティ発想」への転換
これから訪れるマイクロマーケティング時代において、もう1つの重要な観点が「コミュニティ発想」です。
冒頭でお伝えした通り、マイクロマーケティングの根底にあるのは生活者の「多様化」です。この「多様化」と「コミュニティ」は一見相反するようにも見えますが、多様化が究極まで進んだ社会というのは、個々人レベルにまで細分化が進む訳ではなく、「マジョリティ」「マイノリティ」といった概念が消滅している状態であると私は考えています。
その結果、個人が周囲の意見や既成概念に囚われず、自分の価値観で自由にコミュニティを選ぶようになります。そうすると、コミュニティへの帰属意識やコミュニティ間での価値観の団結はより強固になっていくことが想定されます。
つまり、多様化が進むマイクロマーケティングの時代だからこそ、コミュニティの醸成と活用が欠かせないものとなっていくのです。
一方で、メディアも「リーチ数」より「エンゲージメント」を重要指標に据える傾向があり、「メディア=発信者」という立ち位置から「メディア=コミュニティ」への転換が進んでいます。実際、既に多くのメディアでユーザーとのエンゲージメントを高め、コミュニティ化を推進する取り組みを見かけます。
このような取り組みが進むと、広告主には「メディアプランニング」ではなく「コミュニティプランニング」の発想が求められるようになります。これからのマイクロマーケティングを成功させるためには、一方的な発信と露出ではなく、コミュニティの拡大や活性化を目的とし、そこで発生する熱量を効果指標として施策を設計することが重要とされるのです。
