社員をタレント化するデメリットと対策
一方で、組織としてコネクタ役をアサインするデメリットは、「属人的になりがち(再現性、継続性が低い)」点だと言えます。どうしても人間同士のコミュニケーションが重要なカギとなる役割なので、個人の能力(人柄や性格、適正など)によって差が出ます。よって担当者の育成についても、時間がかかります。しかし、少なからずノウハウ化できると考えています。
では、どんな人物が向いていて、どのように始めて行けばいいのでしょうか? 「タレント社員」に向いているのは、常に好奇心を持ち、その探究心を満たすために自ら実行できる人物です。それを仕組み化していくことが育成の第一歩です。
また活動の再現性については、求められる要素を分解してみると整理できます。まず、活動の前提となる「事業や各部門の理解」、課題の把握については先述の通りです。加えて必要となるのは、「外部ネットワークとの関係構築」です。
外部ネットワークから知見を得るために、私がやっているのは、第一人者にコンタクトすることです。そして、相談したい相手が身近にいない場合、その相手が登壇する講演会や勉強会に出向くなどして、直接本人にコンタクトします。印象に残るように質疑応答で最初に手を挙げたりといった一歩からアプローチすることもあります。もちろん自分なりに、事前に本を読んで勉強したり、ネットの情報を収集したりするなどの予習は欠かせません。ただし、それだけで終えることはしません。本やWebに載っていない情報を得るためには、「実践している人や経験者、専門家に聞くこと」です。
はじめのうちは、いきなりアポイントを取ることに躊躇してしまう人も多いと思いますが、「小さな成功体験を積み重ねること」で、アポイントを取ることの抵抗感は薄れていくはずです。今までお会いしたことのない人に聞きに行って教わったことで「なるほど、目が開いた!」という成功体験を積んでいくことで、自分の中で実現に向けた行動へ移すハードルが、どんどん下がって行きます。
大切なのは、お会いしたい相手に直接お目に掛かる前に相手の著書やメディアでのコメントをチェックし、的確な質問をすることです。既に答えが出ていることは聞かないよう質問内容には十分配慮しましょう。
「探す→会う→発信する」のサイクルを回す
もう一つ、自分の活動や日頃感じている課題について「見える化」しておくことも有効です。「こういう発信をしている人なんだ」と相手に安心してもらえますし、予め存在を知っておいてもらえると、ファーストアプローチの際にやりとりがスムーズになります。
この連載もまさにそうなのですが、前回の記事が公開されたタイミングで、様々な方からご意見をいただくことができました。
今年も広報のnoteを書いていきます。 #個人起点 で今思っていることをまとめてみました! 最近の気づきです。個性発揮の側面でも、リモート等多様な働き方の側面でも、広報職のあり方はどんどんこちらの方向になっていく予感がしてます、、 https://t.co/BAQR029w4i
— Noriko Nakane (@nakane_no) 2019年1月31日
身近な課題や日頃考えていることを発信することで、自分の思い当たらない人から答えを得ることもありますし、自分が求めていた情報が向こうから飛び込んで来ることもあります。
このように、一連の動きを一つひとつ紐解いていくと、コネクタの活動というのは、どこかに向かって一方通行で進んでいるように見えて、一定のサイクルをぐるぐると回りながら進んでいるようなイメージを持ってもらえたらと思います。

こうして業界内での信頼を築いておくことで、もしもなんらかの原因で自社の評判が落ちてしまった場合でも、転ばぬ先の杖として組織のピンチを救ってくれる役割も「コネクタ」にはあると考えています。