広告主に「radiko」ならではの価値を提供
――「radiko」では、2018年7月よりオーディオアドという取り組みを行っているのを拝見しました。なぜこの取り組みが始まったのでしょうか。
以前より、「radiko」で取得できる聴取ログやアプリの利用履歴、「radioプレミアム」の会員属性データなどの自社データや、地上波ラジオの聴取率や外部のデータを集めたDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を構築しておりました。これをもとに拡大推計を行い、プレミアム会員やユーザーアンケート回答者以外で、データの取れていない一般ユーザーに属性情報を付与することができたので、今回の取り組みをスタートしました。
――インターネット広告のように、ターゲティングが可能になるということですね。
その通りです。これまでradikoでは、広告の部分に関しても地上波ラジオと同じものが流れていました。しかし、インターネット上でサービスを提供している手前、radikoならではの広告商品を作るべきでは、と以前から課題を持っていました。

そこで、これまでラジオ各局の番宣・局報を放送していたCM枠を活用し、DMPのデータをもとに、ユーザーの属性・嗜好性に合った広告配信を開始しました。このオーディオアドの実証実験は2018年7月にスタートし、同年10月からはエリアを拡大した形で実験を続けています。
ラジオ局にもメリットを
――オーディオアドという新たな広告商品で、「radiko」の収益源をまた1つ増やし、広告主に対しても新しい価値を提供しようとしているのですね。「radiko」が誕生したことでこれまでのラジオに比べて進化した点はありますか。
聴取データがリアルタイムで取れるようになった点ですね。ラジオの聴取率というのは、関東の場合、年に6回対象者に各局のどの番組を何時間聞いているか記録してもらっています。つまり、2ヵ月に1回ペースでしかリスナーの利用状況がわからなかったんです。
しかし、「radiko」はオンラインでサービスを提供しているので、利用状況がリアルタイムでわかります。ダッシュボードという管理画面で、「radiko」で番組を聞いている人が何人いるか把握できます。ラジオ局の方はこれらの情報を参考にしながら、番組の内容を評価しているんです。
――ここまでデータの活用が進んでいるとは、驚きました。「radiko」にとっての競合サービスはありますか?
特に音声コンテンツの場合、最近だとイヤホンなどを付けて聞く場面が増えているので、そうすると、その人は1つのコンテンツしか聞くことができません。つまり、音の出るものは全部競合だとも言えます。たとえば、SpotifyやYouTubeを使いながら「radiko」を聞くことはできませんよね?
しかし、その一方でAIスピーカーの登場などにより、音声コンテンツに注目が集まっています。我々もAlexaスキルを提供しているのですが、「Amazonランキング大賞 2018 (年間)」で「Alexaスキル」総合ランキングで1位を獲得しました。このような流れはラジオにとっても、「radiko」にとっても追い風であると言えます。
したがって、競合という考え方ではなく、我々は音声コンテンツ全体が盛り上がるよう、共存共栄できればいいなと思っています。