マーケティング組織が「プロフィットセンター」になるために
「いまやらないと未来はない! 日本企業に欠かせない、マーケティング主導による価値創造」と題された同セミナー。登壇した木村氏は、P&Gジャパンやソニーマーケティング、西友(ウォルマート・ジャパン)などで一貫してマーケティングに従事し、2018年4月にサンリオのCMOマーケティング本部長に就任した人物だ。
木村氏は初めに、3,200社を超える日本の上場企業のうち、「マーケティング」という言葉が含まれた組織を持つ企業がどのくらいあるかを紹介した。その答えは11%。ここから、日本において、マーケティングは十分に開拓されていない領域だということがわかる。
その理由のひとつには、マーケティングが「コストセンター」、つまり経費を使う組織として捉えられていることがあるそうだ。しかし木村氏は、マーケティングは本来「プロフィットセンター」であるはずだと主張。次のように言葉を続けた。
「マーケティングには、費用と投資の両方を扱う側面があります。費用はもちろん少ない方が良いのですが、投資は効果が大きいほうが良い。そこにぜひ投資をしましょうと会社を説得するのが、マーケティングの仕事なのです」(木村氏)
マーケティング=コストセンターという先入観を覆し、利益を生み出す組織へと変わるには、何が必要なのだろうか。木村氏は「プロフィットセンターになるための3つの処方箋」として、市場の定義、組織作り、そして自己変革を挙げた。
ベネフィットを見極め市場を再創出したマクドナルド
一つ目の処方箋「市場の定義」とは、「ブランド価値を再定義し、戦う市場を再創出すること」を指す。木村氏は、人がモノによって得られる「ベネフィット」に着目すべきとし、その発見に役立つヒントを挙げた。
初めに取り上げられたのは、ジョブ理論。「人が商品やサービスを買うのは片づけたい用事=ジョブを解決するためである」という考え方だ。この理論に従うと、たとえばミルクシェイクを買うのは、「通勤の自動車で手を汚さずにお腹を満たしたい」というジョブのため、という顧客のインサイトが見えてくる。そうすると、ミルクシェイクの競合は、アイスクリームやジュースではなく、手を汚さずにお腹を満たせる別のモノである可能性に気づくことができる。つまり、ジョブの発見が市場を定義する第一歩となるのだ。
次に、マクドナルドによるビッグマックの再定義を例にし、「市場の定義」の本質が説明された。木村氏曰く、「マクドナルドでは健康やカロリーを気にせずがっつり食べる。『背徳感、でも美味』というのが目指すところであって、ヘルシーメニューではない」。
「背徳感、でも美味」という市場では、マクドナルドは、安くて手軽であるという優位性をもっている。マクドナルドは、ハンバーガーという同種のモノと比べるのではなく、ベネフィットを意識することで、市場を再創出したのだ。
木村氏はサンリオにおいても、日々様々な疑問と向き合いながら「市場の再定義」に取り組んでいると明かした。