企業コミュニケーション設計の5つの順番
個人起点のコミュニケーションにおいて、まず認識しておかなければならないことがあります。それは、「タレント社員」にしろ「エバンジェリスト」にしろ、企業のコミュニケーション活動の一部だということです。そして、この「企業のコミュニケーション活動」のすべては「PR=パブリックリレーションズ」をベースに説明することができます(詳しくは前回記事を参照)。PR視点であらゆるステークホルダーを見たときに、「誰に?」「なぜ?」「何を?」「どのように?」伝えるのかが最も重要になります。ターゲットと期待する態度変容や行動などの目標を設定した上で、相手のインサイトを研究し、それぞれに合わせた働きかけを行うことが必要です。
一般的な企業のコミュニケーション設計の要素を整理すると、(1)ターゲット、(2)アクション、(3)インサイト、(4)メッセージ、(5)チャンネルの5つから成り立ちます。それぞれについて、具体的に解説していきましょう。
(1)ターゲット
「働きかけるべき相手は誰か?」を明確にします。ここで最初に考えるのは、「誰に伝えるか」ということです。企業における「つながる相手」は、決して消費者や取引先企業だけを指しているわけではありません。株主などの投資家・政府や地方自治体・金融機関など様々なステークホルダーが存在します。その時々の事業の状況や目的に応じて、働きかけるターゲットを選択することは重要です。また、たとえば同じ見込み客であっても「潜在層」なのか「顕在層」なのかによって、アプローチの仕方は変わってくるので、相手の状態についても明確にしておくことが望ましいです。
(2)アクション
ターゲットを決めたら、次にターゲットとどのような態度変容を期待するか、状態になってもらいたいか、どんな関係を構築したいかという「ターゲットにどう動いてもらいたいか?」を設定します。たとえば、メディアとの関係であれば「新商品を紹介してもらいたい」、消費者との関係であれば「新商品を購入してもらいたい」といったことになります。「自社のことを好きになってもらう」のように意識が変わることを目的にしても良いでしょう。
(3)インサイト
「ターゲットがどのように考えているか?」「ターゲットを取り巻く環境はどうなっているか?」を確認します。働きかけたい内容、テーマについて、「現時点で、ターゲットがどのように考えているのか」「どんな状況に置かれているか」について仮説を立て、確認します。リサーチ、グループインタビュー、観察などで補完することも可能です。
(4)メッセージ
期待する態度変容を起こすことができるのかを考えます。(1)~(3)までを明確にすれば、何を伝えたら良いのか自ずとわかる場合もありますが、A/Bテストやテストマーケティングなどにより小規模に検討する手法も有効です。
(5)チャネル
最後に、伝える相手と内容によって、どのような経路でメッセージを届けるかを見定めます。いわゆるメディア選定ですが、一般的なメディアに限らず、幅広い手法を想定する必要があり、たとえばどんなアプリから情報収集するのか、どんなイベントに参加するのか、誰の口コミを信用するのか、どんなコミュニティに所属しているのか、といった事を考え、具体的な施策を検討します。
この一連の流れで目的や手法を明確にしてから、はじめて具体的な活動へと移ります。次にタレント社員としての活動について、説明していきます。