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定期誌『MarkeZine』デジタルクリエイティブの作法

「おもしろくないと始まらない」 ヘンなコンテンツの持つ力

 滋賀県の「石田三成CM」が記憶に残っている人も多いのではないだろうか。自身の仕事を「変なモノ作り」と話すクリエイター・藤井亮氏の映像は他のものと一線を画したものばかりだ。そこには、広告を見てもらうための同氏の徹底的なこだわりが詰まっている。同氏のクリエイティブから、話題にされる広告作りの一端を学ぶ。

※本記事は、2019年2月25日刊行の定期誌『MarkeZine』38号に掲載したものです。

見た人が伝えたくなる変なモノ作りに挑む

藤井亮氏
1979年生まれ。愛知県出身。武蔵野美術大学・視覚伝達デザイン学科卒。自ら制作するアニメーションの独自の世界観と、電通関西で学んだおもしろCMのセンスが混じり合うことで観た人に大きなインパクトを残す映像を多数制作。電通関西から2019年独立しフリーに。制作実績:滋賀県『石田三成CM』Eテレ『ミッツ・カール君』『サウンドロゴしりとり』宇治市『ゲームCM』など。

――藤井さんは、自身のプロフィールに「主に変なモノを作る」と書いていますよね。この「変なモノ」の定義を教えていただけますか。

 『他とは違うもの=変なモノ』という定義です。他と差別化できて、他にはない独自の映像を作ろうと考えています。マーケティングっぽい言い方もあるかもしれませんが、それだと格好つけている感じが出てしまう気がするので(笑)。

――そうした“変なモノ”は、マーケティングにおいてどういうメリットがあると思いますか。

 記憶に残りやすいというのと、人の言の葉に乗りやすい点ですかね。普通に綺麗なものやカッコいいものを作るよりは、「なんだったんだあれは」と話題にしやすいと思っています。ですので、見ている人が突っ込みたくなる要素を作ることは意識していますね。

 特に僕は電通関西支社にいた時代、メディアへの出稿量が多い大手クライアントの案件というよりは、地方企業や自治体など予算が限られているところを担当していました。そのため、広告投下量やメディアパワーではないところで勝負しなくてはならないことが多く、よりSNSの拡散などが求められたように思います。

 ただ、悩ましいことに、ローカルの企業・自治体の方々のほうが意外と「カッコ良く」「綺麗に」「立派に」して欲しいという要求は強かったりするんですね。

――そうした中で、藤井さんは“変なモノ”を提案するんですよね。その時、相手はどのようなリアクションをするのでしょうか。

 やりたいことがあっても、予算が少なければできることも少なく、有名タレントは使えないし、日本中に映像を流せるわけでもない。なので、限りある予算の中で効率良く目立たせ、印象に残すための方法であることは毎回説明しています。結果的にはいつも納得いただけますね。

――「石田三成CM」などをはじめ、藤井さんの作品はデジタルを中心に話題になるような作品が多いと感じました。デジタルで話題を作る上で意識していることはありますか。

 動画の視聴者目線で考えて、企業がお金をかけて作ったテレビCMに見せないということですね。

 Webで拡散する動画って、一般の人がたまたま撮った非日常だったりするじゃないですか。そうしたものと並列で並ぶことになるので、売り手目線の広告的なコンテンツにはならないようにしています。

 広告だとしても、「これが広告ならおもしろいから認めてやろう」と思わせたいんです。

――そう思わせるための、動画のアイデアやクリエイティブの作り方はどう工夫されているのでしょうか。

 テレビCMって綺麗に完結しているものが多いと思うのですが、僕はどちらかというと映像が見ている人のおもちゃにされるぐらいがちょうど良いと思っています。おもちゃというのは、映像に乗っかる形でボケてもらったり、いじってもらったりという意味です。

 それが難しい場合は「広告なのによくここまでやったな」と思われるようなもの。ただ、そういった動画作りはYouTuberなどが得意としているので、その人たちよりも突っ込んだものにしないといけません。

 つまり企業には、「広告である」というある種のハンデを背負いながらも、一般の方たちがアップする動画よりおもしろくすることが求められているのです。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/02/25 15:30 https://markezine.jp/article/detail/30395

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