ニッチな層に深く刺さる企画を
――御社は、「忖度まんじゅう」「医学会に行ってきました」でも大きな話題となりました。商品開発をする上で常に意識されていることはどういったものがありますか?


(写真下)「医学会に行ってきました」販売公式サイトより
稲本:商品開発をする上で意識しているのは、「企業経営」「消費者」「社会」の三つの軸です。これらに貢献できるかという視点を持つようにしています。
「忖度まんじゅう」は社会目線、「医学会に行ってきました」は消費者目線で企画した商品。結果的に反響をいただきましたが、元々は売り上げや利益を意識した商品ではありませんでした。弊社の経営基盤となる商品開発を最も重視し、その中で得た利益を消費者や社会のニーズに合わせたモノづくりで還元していきたいと常に考えています。万人の心に刺さるものではなく、少数であってもその人たちの心に深く刺さるような企画を目指しています。
――『マジックインキッチン』に限らず、御社の商品は他社とのコラボ商品が多いようですが、商品企画は御社側から持ち込むケースが多いのでしょうか?
稲本:6~7割は弊社から企画を持ち込むケースですね。当然、商品化にまで至らないことも多々あります。最近では、ありがたいことにジャンル問わず様々な企業からお問い合わせをいただき、相談を受ける機会も増えています。
話題化を狙いすぎず、「受け手」に任せる
――MarkeZine読者に向けて、何かアドバイスがあればお願いできますでしょうか?
稲本:あまり商品・サービスの話題化を狙いすぎず、未完成品をお客様に「預ける」感覚で世に出し、未完成品を磨いてもらうつもりくらいが良いと思っています。
「仕掛け」が良くても「種」がなければ花は咲きません。商品・サービスといった「種」をまずは大切に育て上げることが結果につながると考えています。あとは、炎上などのネガティブな反応を恐れすぎず、反応がありそうな層に対してしっかりと施策を打ち出すことが大切だと思います。
――どうもありがとうございました。
テレビやネットにおいては、「視聴率がとれるから」「ページビューが稼げるから」と言わんばかりにネガティブなニュースが氾濫しています。加えて、長い間社会に蔓延している閉塞感も手伝い、どこか重い空気が漂っているように感じられる現代の日本。そうした中でも、遊び心を忘れず、楽しい気分になれる商品・サービスを提供しようと切磋琢磨している企業が存在していることが、今回のインタビューでわかりました。稲本さんのお話を聞いて、少し心が晴れたような気がします。