JリーグIDの新規発行が増加。LTVも向上
平地:取り組みを経て、どのような成果が得られましたか。
石村:d払いによるチケット購入の絶対数と比率が上がり、Jリーグチケットにおけるチケット購入のうち10人に1人がd払いを選択しています。これはd払いの一般的な比率よりも、非常に高い数値です。

また、d払いの利便性が高いだけでなく、dポイントの利用シーンが多いことも成果の要因に挙げられます。チケット購入で貯めたポイントは、次の購入や一部のスタジアムで使うこともできます。このようなメリットから、チケット購入はd払いを選ぶファンが、増えているのではないでしょうか。
平地:これはすごい成果ですね! Jリーグさんとの協業で、d払いやdポイントの認知も広がっているように思います。笹田さんは、いかがですか。
笹田:最も大きな成果として強調したいのは、JリーグIDの新規登録者が多いことです。また、リピート購入の割合も高く、LTVも上がっています。共通ポイントを他業界で活用する事例は聞いていましたが、実際にここまでうまくいくと思いませんでした。
さらにドコモさんのDMPによる広告配信や位置情報の活用など、踏み込んだデジタルマーケティングの結果、非常に親和性の高いお客様が集まっています。特に、ドコモさんが保有する位置情報を用いた観戦者の動向調査では、平均来場試合回数がJリーグの独自調査と異なるケースもありました。
ドコモさんならではのデータを掛け合わせることで、リーチが広がり、トラッキングできるデータ量が増え、精緻化が進む。これらは、大きなメリットだと思います。
石村:シーズン通しての施策は、2018年が初めてでした。これだけの成果につながったのは、やはりJリーグさんの運用体制が整っているからです。土台としてJリーグIDがあり、クラブ側のデジタル人材育成にも注力するスポーツ組織の運営は、国内屈指の体制です。
さらに、JリーグID会員のメルマガ開封率やサイト回遊度は、dポイントクラブのユーザーよりも高く、ファンの関心が常に向けられていることを実感します。
エンゲージメントを高め、新たな観戦の提供へ
平地:最後に、今後の展望をお聞かせください。
石村:まずは、Club.J.LEAGUEとdポイントの連携強化です。また、スタジアム内でのdポイント利用も推進したいですね。チケット購入者のスタジアム内での行動や購買履歴が把握できるようになると、スタジアム内のお客様に対する取り組みも強化できると思います。
そして新しい柱となるのが、5Gによるサッカー観戦の体験向上です。高臨場パブリックビューイングやVR/ソーシャルビューイングなど、新しい観戦方法だけでなく、選手にフォーカスした情報発信なども幅広く展開していきます。
スタジアムの中でも、ハーフタイムの映像解説や、試合を別の角度で見るなど、テクノロジーを活用した特別な体験をお届けできたらと思います。もちろん、技術先行は避け、サッカー観戦の本質を損なわない形で、最適な方法を探っていきたいですね。5Gプレサービスが開始する2019年秋以降で実証実験を行っていきたいと考えております。
平地:笹田さんはいかがですか?
笹田:デジタル戦略の次のステップである、MA、プライベートDMPの導入・活用を進めたいですね。そして、パーソナライズしたアプローチで、ファンエンゲージメントの強化を目指します。
また、デジタルマーケティングの成功事例は各クラブへ横展開していきたいです。クラブレベルの粒度では、反応率が高くなる一方、リーチ範囲が限られるため、まだまだ効率に課題が残るのが現実です。石村さんのお話にもありましたが、スタジアムでのdポイント利用など、顧客接点をオフライン領域にも広げなくてはなりません。今後も、ドコモさんをはじめとしたパートナー企業の皆さまとデジタル活用を進めていきます。
平地:リーグでの成功事例をクラブにも横展開していくことで、さらにデジタル活用が進む未来が見えました。本日は、ありがとうございました。