JリーグのKPI、KGIは?
平地:クラブでの利用も想定して一元管理を行っているというわけですね。Jリーグでは、どのような成果指標を設定しているのでしょうか。
笹田:KGIは、入場者数(チケット販売)とDAZN利用者数、EC(MD)の売上、そして協業企業とのパートナーシップの強化です。

これらに紐づくKPIに関しては、「環境整備・リーグとしての利活用」「クラブとしての利活用」の側面から設計しています。リーグ側は、サイト・SNS・動画などによる情報接触数、JリーグID数、そのアクティブ率がKPI。クラブサイドは、データ利用を開始したクラブ数・利用頻度などがKPIです。クラブのデータ利活用に関しては、デジタル人材育成の研修を月1回行い、55クラブ中49クラブが参加するまでになりました。
ドコモ所有のデータ基盤を活用するビジネス支援とは
平地:続いて、NTTドコモさんとの取り組みに話を移したいと思います。ドコモが、スポーツ産業のデジタルマーケティング支援に乗り出した背景を伺えますか。
石村:まず、弊社として「スポーツ産業の成長と地域コミュニティの活性化を、テクノロジーで支援していきたい」という思いがあります。Jリーグ、DAZN、NTTグループによるスタジアム・ホームタウンのICT化を目的とした「スマートスタジアム事業」をはじめ、DAZN for docomoによる新しい映像視聴体験、そしてデジタルマーケティング支援。これらの取り組みを通じて、サッカー観戦にまつわる体験をよりエキサイティングにするというビジョンを描いているのです。

またドコモは、通信のご契約者だけでなくキャリアを問わないキャリアフリーのお客様も含めたサービス戦略へと、大きく舵を切っています。その軸となるのが、共通ID・dアカウントを入り口としたdポイントプログラムです。この会員基盤をもとに、自社サービスとパートナーサービスへの送客、ドコモの決済、データ蓄積と活用、お客様へのサービス提供というエコシステムを構築しています。
平地:なるほど。携帯電話利用の約4割のシェア(総務省「電気通信サービスの契約数およびシェアに関する四半期データ」より)を誇るドコモ独自のデータ基盤とエコシステムで、デジタルマーケティングを支援されているんですね。Jリーグさんとの具体的な施策についても教えてもらえますか?
石村:最初に Jリーグのオフィシャルサイトへドコモのタグを設置し、来訪者の可視化を試みました。さらに、データの利用許諾をいただいているお客様のプロファイルやオンライン・オフラインの行動・購入履歴などのデータと来訪者データを掛け合わせ、Jリーグへの潜在関心層をターゲティングし、Jリーグのチケットストアへと送客を行いました。

送客のチャネルは、プライベートDMPからの広告出稿とドコモのポータルや会員向けサイト、プッシュ通知などです。「d払い(ドコモのモバイル決済システム)のチケット購入でdポイント10倍」といったキャンペーンも行い、さらなるデータ蓄積と予兆モデルを足すことでモデルの精緻化を進めています。