SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』メディアデータから掴むインサイト

新車・中古車購入におけるデジタル時代の情報収集行動

自動車購入に見る情報収集行動

 今回は自動車の購入者を例として、購入前のオンライン上における情報収集行動を見てみることにする。メーカーやボディタイプによっても検討行動のプロセスは異なるが、今回はアンケートで聴取した情報を基に自動車購入者を「新車購入者セグメント」と「中古車購入者セグメント」に分け、購入前の接触サイトにどのような違いがあるのかを見ていく。なお、サイト接触状況の把握にはインテージシングルソースパネル(i-SSP)を用いた。まず各セグメントにおける購入前6ヵ月間での車関連サイト(カテゴリ計)の接触状況の内訳を表したものが図表1である。

図表1 車購入前6ヵ月間における関連サイト接触内訳(カテゴリ計・PV数ベース)
図表1 車購入前6ヵ月間における関連サイト接触内訳(カテゴリ計・PV数ベース)

 新車・中古車の各購入者セグメントにおいて、新着情報やレビューなどが確認できる「車情報サイト」や「自動車保険サイト」の接触サイトカテゴリの内訳比率に大きな差は見られないが、新車購入者は「メーカーサイト」に最も多く接触し、一方で中古車購入者は「中古車情報」の割合が最も大きいという違いが見られた。中古車購入者が中古車情報のサイトに多く接触するのは当然であるが、新車購入者の中でも「中古車情報」のサイト接触が一定数あり、必ずしも最初から新車での購入に絞っているわけではないことがわかる。

 図表1は購入前の6ヵ月間における合計値であるが、購入者はいつ頃からWeb検索行動を開始するのだろうか。両セグメントにおいてそれぞれのカテゴリ接触を時系列で見たものが図表2である。

図表2 車購入前6ヵ月間における関連サイト接触量の月次推移
図表2 車購入前6ヵ月間における関連サイト接触量の月次推移

 新車購入者セグメントから見ていこう。まず目に留まるのが「メーカーサイト」への接触である。購入の3ヵ月前あたりから徐々に接触量が増え始め、購入当月には検討開始時期と比べ約4倍に伸びている。一方で「車情報サイト」については購入直前の1ヵ月前からようやく接触が増加し始め、購入当月に大きく伸びている。このことから、新車購入者は「メーカーサイト」を軸として3ヵ月間程度検討を行い、ある程度具体的な車種が決まった段階で「車情報サイト」にアクセスし、目当ての車種に関する第三者による情報や試乗レビューについて情報収集を行っているものと推察できる。また、新車購入者においても「中古車情報」サイトへの接触があると先述したが、購入の1ヵ月前あたりまでは「中古車情報」に接触をしており、新車購入者でも一部においては直前まで中古車購入も候補に挙がっていると考えられる。

 中古車購入者セグメントにおいてはどのような動きになっているだろうか。購入までの接触量の伸びが最も大きいのが「中古車情報」である。しかしながら接触量の増加は購入の2ヵ月前あたりからであり、新車購入者と比べると購入までの検討期間は短いことがうかがえる。

 全体での接触傾向から、中古車購入者においては「中古車情報」サイトを軸とし、気になった車種の情報を「車情報サイト」で収集し、最終的に候補となった車種の詳細なスペック情報を「メーカーサイト」で入手しているようだ。新車購入と異なり、中古車購入に際しては時期によって市場の在庫や価格が変わるため、必然的に「中古車情報」サイトの接触が中心となり購入までの期間も短くなったと考えられる。

 今回の両セグメント間では性別や年代の構成に大きな差はない。つまり顧客のデモグラ属性のみに着目しても有効な情報提供は行えないということであり、先述のように新車か中古車かによって検討する期間や中身が異なるため、その顧客が検討におけるどの段階で何の情報を求めているかを見極めることが重要である。

購入検討サポートとしてのメーカーサイト

 図表1からもわかるように、新車購入者にとって情報収集の半分以上をメーカーサイトが占めており、検討者にとってメーカーサイトの情報は検討のための重要な情報源であることは言うまでもない。企業側にとっても自社のオウンドメディアは顧客の検討段階において自社商品をアピールし、購入を後押しするための貴重な場である。ここからは新車購入セグメントの中で接触の多かった「メーカーサイト」について各社ごとにどのような接触の違いがあるのかを深く掘り下げてみる。図表2では各メーカーのメーカーサイト接触の合算値としていたが、その内訳となる各社メーカーサイトごとの推移を表したものが図表3である。

図表3 新車購入者セグメントにおける「メーカーサイト」内詳細(メーカー抜粋)
図表3 新車購入者セグメントにおける「メーカーサイト」内詳細(メーカー抜粋)

 各社とも購入当月にかけて接触量の増加が見られるが、最も順調に接触量を伸ばしているのがA社のメーカーサイトである。最終的にどのメーカーの車種を購入するかでサイト接触の推移も変わってくるが、メーカー側からするとこのような自社サイトへの関与の上昇は理想的だろう。

 実際に各社メーカーサイトを見るといずれのサイトにおいても購入検討者向けのサポートページがあり、販売店の検索や試乗車検索が可能である点は同じであるが、A社のメーカーサイトでは現在乗っている車の下取り参考価格の検索や、見積もりシミュレーションでオプションを人気順で選ぶことができたりと、自社サイト内だけで車の買い替えに必要な情報を網羅することができる。こうした購入者の検討プロセスを考慮したサイト作りが上述のような結果に結びついているのだろう。

▶調査レポート
「車の情報はどうやって調べる? 行動ログデータから見えたデジタル時代の情報収集」(Intage 知る gallery)

次のページ
情報収集としてのYouTubeの役割

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
関連リンク
定期誌『MarkeZine』メディアデータから掴むインサイト連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

森山 尚樹(モリヤマ ナオキ)

株式会社インテージ コミュニケーション事業本部 メディアデータ部
2015年にインテージに入社。入社から現在に至るまでインテージシングルソースパネル(i-SSP)の運用部署にてメディア系パネルデータのパネル管理から商品の品質管理、商品開発を担当している。現在メディアプランニング支援のためのソリューション開発に従事。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2019/03/25 14:45 https://markezine.jp/article/detail/30637

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング