情報収集としてのYouTubeの役割
ここまで車関連のサイト接触に焦点を当ててきたが、車の購入検討者は必ずしも車関連のサイトからすべての情報を収集するわけではない。図表4は車購入者の購入直近6ヵ月間におけるYouTubeの平均利用時間の推移を表したものである。

ベースとして一定の利用量はあるが、購入月に向けて利用時間が上昇していることがわかる。YouTube内での検索ワードを見てみると、「インプレッサスポーツ」、「スズキ ハスラー G 4WD」など、具体的な車種名で検索をしており、車購入検討材料としてYouTubeを利用していたことがうかがえる。最近では一般ユーザーによりYouTubeに試乗のレビュー動画が多く上げられており、来店前に事前に検討車の内装や実際の性能などを確認することができるのだ。こうした具体的な車種検討の段階において、ターゲットに向けた動画広告の出稿はもちろん、メーカーによる自社製品の検討者に向けた車両解説・製品メリットを訴求した動画投稿や、一般ユーザーにレビュー動画を投稿してもらうなどの施策を行うことで、同じ検討車の中でも優位に立つことができると考えられる。
検討行動の変化への対応
ここまで自動車購入検討段階におけるWeb接触状況の分析を通して検討プロセスの考察を行った。上述したようなオンライン上における買い手側の検討行動は、いわゆるAISAS※1モデルにおける「Search」にあたる。認知や関心を得るための広告出稿や顧客のアクションを促すための販促などに比べ、オンライン上における買い手の検討行動は企業側のコントロールできる範囲が限られている。しかしながら購入者の検討プロセスを細かく見ていくことで顧客の購入までの導線を把握し、それを自社サイトコンテンツ、マーケティング戦略に反映させていくことで、自社商品・サービスへの誘引と囲い込みを効果的に行うことができる。時代とともに変わる顧客の検討行動の変化を捉え、柔軟に対応していくことは売り手にとって永遠の課題であるが、それと同時に競合との差別化を図る大きなチャンスとも捉えることができるのではないだろうか。
※1 2004年に電通が提唱した消費行動モデル。Attention(注意)/Interest(興味)/Search(検索)/Action(行動)/Share(共有)の5つの英単語の頭文字から名づけられている。
▶調査レポート
「車の情報はどうやって調べる? 行動ログデータから見えたデジタル時代の情報収集」(Intage 知る gallery)