店頭のプロモーションをデジタルシフトするための4ステップ
MZ:2016年からこの座組が始まったと。Zoff様の抱えていた課題感に対し、オプト側からはどのような施策を提案されたのでしょうか。
山内:すべてで5つのステップに分けて施策を行っていますが、5ステップ目は現在進行中なので、今回はステップ4までの取り組みをご紹介します。全体像は下の図をご覧ください。

ステップ1:アンケートで来店への寄与を把握
MZ:ステップ1ではアンケートを行ったとのことですが、それはなぜでしょうか。
山内:国内で店頭販促にデジタル広告を活用するという事例があまりない状況で、店頭販促に有効かZoff様の中でも懐疑的だったためです。そのため、トライアルの一環として、アンケートを活用した検証を行うことで、店頭販促にデジタル施策が効くのか図ることにしました。

またアンケートにしたのは、施策を開始した2016年頃は広告を見たユーザーの来店計測までは実現できる技術が整っていなかったためです。
そこで、最初は店舗周辺への広告配信に加えて店頭アンケートを実施しました。店舗周辺エリアでスマホ広告を配信し、私たちが実際に店頭に立ち、期間中に配信したスマホ広告と紙のチラシのクリエイティブを見せて、どちらを見て来店したか調査しました。
私たち自身、どれほどの効果が出るかは正直未知数でした。しかし調査の結果、来店されたユーザーのうち「配信したバナーを見て来店」と回答したユーザーが一定数存在したことから、効果がある実感を得られました。
大平:当社では、デジタル広告といえばECへの送客に使うものという認識が強く、店頭販促に活かせるのかと思っていました。そのためまずトライアルで社内への説得材料を作ることにしました。狙い通り、チラシに引けを取らない回答結果を得られたので、次の施策につなげることができました。
ステップ2:売上相関を見える化
MZ:ステップ1で社内のプレゼンスを向上させ、本格的に施策をスタートしたということですね。ステップ2ではどのようなことを行ったのですか。
山内:この時に行ったのは、広告表示回数と対象店舗の売上成長率の相関分析です。まだ広告から来店数を計測する精度が高くなかったので、間接的ではありますが広告表示回数のボリュームと、該当店舗の売上成長率を分析することにしました。関東7店舗で実施したところ、それぞれの数値の波は綺麗に比例しており、相関関係を確認できました。
ステップ3:Wi-fi計測を可能に
MZ:広告インプレッションが多い店舗ほど、売上が増えていたということでしょうか。
山内:そうです。そして、ステップ3に入る段階で、ついにWi-Fiによる来店の計測が可能になりました。Zoff様はルミネなど複数階に渡る商業施設に多数店舗を持っていますが、高さに対応しているWi-Fi計測を実施することにより、高い精度で来店効果を可視化できるようになりました。ただ、店舗に専用機器を置く必要があるので、店舗側の協力も得つつ設置を進めました。
Wi-Fiの場合は滞在時間も計測できるので、通りすがりのユーザーも省くことが可能です。ここでようやく、重要な指標である来店数が可視化できるようになりました。来店単価をベースにPDCAを回せるようになったので、非常に大きな一歩だったと考えています。
大平:この頃には社内での評価も高まっていたので、店舗にも協力を仰げるような体制になっていました。ただ、店舗スタッフは普段様々な業務に追われているので、Wi-Fi導入時はできる限り負荷をかけないよう意識しました。
具体的には、Wi-Fiのトラブルシューティングなどのマニュアル作成や何かあった時の連絡先の周知です。エリアマネージャーへの事前共有も徹底しました。
ステップ4:流客分析で店舗間の行動も視覚化
MZ:では、ステップ4についても教えてください。
山内:ステップ4ではより深く、来店効率を上げるための有益なデータを収集するべく、流客分析を実施しました。たとえば、新宿駅近辺で広告を見たユーザーがそのまま新宿の店舗に行くかというと、必ずしもそうではない。ユーザーは、通勤・通学経路や居住エリアなど自分の生活導線にある店舗を選びます。そこで、広告に触れたユーザーが最終的にどこに流れ着くのか、エリアを横断してユーザー行動を分析しました。
これにより、エリアごとの広告予算配分や配信エリア設計を最適化できるようになりました。また、都心・地方・郊外など地域ごとで傾向がまったく異なることもわかりました。デジタルの店頭送客以外にも、あらゆる施策で応用できるデータが集められたと思っています。