「つながる=融合」から見いだされる「より良い顧客体験」
続いて中村氏がとり上げたキーワードは「顧客体験」。
「WebサイトやFacebookページを閲覧して資料をダウンロードするなどのデジタルの領域と、展示会やセミナーに足を運んで届いたDMに目を通すといったアナログの領域と、顧客の側はデジタルとアナログを意識することなく行動しています。
より良い顧客体験を実現できるかどうかで大きな差がつく時代にあって、マーケティングの現場でも顧客の側に立ったデジタルとアナログを組み合わせた施策こそが、より良い顧客体験につながると考えています。
シャノンでも、いきなり電話をした場合はアポイント獲得率が1~3%だったのに対して、ターゲット選定やメッセージ決定、フォロー設計などの事前準備をしてDMを送付したうえで電話をした場合はアポイントにつながる確率が12%だったという結果が出ています。さらにDMを送った後に電話をした場合は、約96%がそれほどネガティブな反応ではなかったという感触も得ています。
つまりイベントや展示会、セミナー、電話などアナログの領域でこそ効果がある顧客への接触頻度と、資料のダウンロードやDM、メールなどデジタルの領域が活きる接触頻度とを考慮した施策のためのシナリオ構築が求められているのが現状ととらえています」(中村氏)
BtoB、BtoCに関わらずデジタル×アナログ戦略による「より良い顧客体験」がマーケティングの成否を握っていると語った中村氏から最後に紹介があったのが、マーケティング施策上で課題となっている「非認知」と「既存顧客」へのアプローチだ。この課題に対する解決策として中村氏は「企業管理機能」という新機能を発表した。
企業情報を加えることで「非認知」および「既存顧客」へも対応
「図の紺色の部分は一般的にMAでカバーされているエリアですが、この部分はリード情報、言い換えれば人単位でのコミュニケーションとなり解決策があります。一方で、黄色い部分は企業単位で管理しないと解決できません。企業管理機能によって、企業情報を活用したマーケティングが可能となります」
では、具体的にどのようなプロセスで解決していくのだろうか。非認知の解決について、中村氏は次のように提案する。
「逆三角形型の購買ファネルの図は皆さんよくご存知だと思います。この購買ファネルへのアプローチは、『購入』から『商談』『比較・検討』へと下から上の階層へと最適化していくのがセオリーです。最適化を進めていくと最終的に『非認知』へたどりつくのですが、認知拡大の手段としてテレビCM、交通広告などに踏み切れるかというと、巨額の費用が必要となるのでハードルが高い。その中で『認知の壁』を超える手段として、デジタルとアナログの組み合わせが有効だと考えます」(中村氏)
たとえば、DMとの組み合わせ。非認知層へDMを送り、DMに反応してサイトへ訪問してきた企業担当者にだけ、電話でフォローしてというやり方をとれば、少しずつではあるが自力で非認知層へのアプローチが可能となる。こういったやり方も企業管理機能で実現できるようになるというわけだ。
続いて、既存顧客の課題に対する解決策についても提示した。既存顧客は多くの場合、マーケティングではなく営業/セールスが個別にフォローしているのがほとんどと中村氏は指摘。一般的に新規顧客への販売コストは、既存顧客の5倍必要という現実を示し、改めて既存顧客へのアプローチを見直すべきだと主張した。
この既存顧客へのアプローチという課題の解決にも企業管理機能が役立つ。展示会やセミナー、資料請求、ホワイトペーパーなど複数のチャネルからもたらされる顧客情報を企業管理機能と共に開発した、独自開発のマッチングエンジンで、新規顧客と既存顧客を自動的にリアルタイムで分類してくれるという。
「展示会後のフォローを例に試算したところ、従来の方法だと名刺のデータ化に1~2週間、リストの振り分けに3~7日、営業のアサインまでに1~3日かかるとすると従来の方法では11日から24日かかっていました。それが企業管理機能なら最短1日で可能です。最大1/24の時間短縮が実現できるので、その分スピーディーに次のアクションを行うことができます。
自社の事業やビジネスが“踊り場”で成長が見えないという企業の場合、認知拡大と既存顧客へのアプローチがうまくいっていないというケースが多いです。企業管理機能を搭載したSMPを活用いただくことで、踊り場の状況も脱するお手伝いができると考えております」(中村氏)
デジタルとアナログを意識することなく行動している顧客へ向けて、より良い顧客体験の提供はどの企業にとっても大きな課題だ。シャノンは、この課題に向き合い続け課題解決に最優先で取り組んでいる。その姿勢と覚悟を、経営トップの中村氏自らが示した基調講演となった。