システム老朽化をきっかけにリプレイスを検討
Markezine編集部(以下、MZ):まず、今回ZETAのサイト内検索・EC商品検索エンジン「ZETA SEARCH」導入に至った経緯について伺います。導入前のゴルフパートナーでは、どのような課題を抱えていたのでしょうか。
久保田:ECサイトのシステム老朽化が進んでおり、入れ替えが必要な時期を迎えていたのがきっかけですね。また、旧ECサイトの検索能力が低く、長年改善したいと考えていたので、これを機にリプレイスしようと決断しました。
リプレイス時に他複数社も交えてコンペを実施したのですが、全社から提案を頂いた時点でほぼZETAさんに決まっていましたね。我々の中でやりたいことが明確だったので、どこであればその要望が叶えられるかを基準に選定したのですが、最も理想的な形で実現できるのがZETAさんだったんです。
また、営業担当の中川さんの提案も良かった。中川さんは、コンペ企業の中で唯一「御社の課題に対してこのように解決できます」という、我々の目的に合わせた内容に仕上げてくれました。
中川:当社の製品はパッケージで提供しているものではないので、お客様の課題に合わせていかようにも提案できます。今回のコンペでは久保田さんから事前にやりたいことのリストもいただいていたので、こちらとしても非常に提案が行いやすかったです。
求められるは膨大なデータの制御
MZ:ゴルフパートナーの中での要望とは、具体的にどのようなものだったのでしょうか。
久保田:当社のECサイトには30万点の商品があります。ゴルフ用品はカスタムパーツが非常に多く、カテゴリも多岐にわたります。商品IDも膨大になるため、それを制御できるようにしたいと考えていました。
また、当社では実店舗とECサイトの在庫を連動させているため、膨大なデータを高速処理できるかどうかも重要なポイントでした。
中川:中古品を扱う場合、新品に比べてデータの取り扱いに関する難易度が一気に高くなります。なぜならば、中古品の場合は1つの品番に対し複数の商品IDが付くからです。中古品は同じ商品でもそれぞれ状態が異なりますよね。まったく同じ商品はないので、別個の商品としてIDを登録する必要があります。在庫の数だけ商品IDを生成されるので、データ量も増え複雑になっていきます。
MZ:ちなみに、なぜ「ZETA SEARCH」であれば要望が叶えられると思ったのでしょうか。
久保田:「ZETA SEARCH」が様々な業界のリーディングカンパニーのECに導入されているからですね。それだけ、情報の制御と処理速度に対して信頼があるのだろうと思いましたし、老朽化しにくい仕様になっているのも魅力的でした。
山崎:我々はお客様の負担をできる限り減らせるよう、当社のエンジン部分に関しては5年後10年後でも問題なく利用できる仕様にしています。また、エンジニアによるチューニングも適宜行わせていただくので、導入から数年経っても利用者のニーズに合わせた検索結果を表示することができます。
15年越しに実装したい機能を提供できるように
MZ:「ZETA SEARCH」の導入が決まって以降、何から着手しましたか。
中川:まず、商品点数とパターンを整備するところから始め、検索処理のスピードとデータ連携の更新頻度を担保するための要件定義を行いながら、検索基盤の開発に取り組みました。その後、どのような検索機能が必要なのかを詰めていきました。
MZ:では、具体的にはどのような検索機能を付けたのでしょうか。
三原:実装はこれからなのですが、「どのプロが使っているのか」「ヘッドの色」「力が強い人・弱い人」など、より細かなニーズに対応し、より素早く理想の商品に辿り着けるような検索軸を追加します。
実は15年前にもECサイトを構築し、今挙げたような検索軸を実装したかったのですが、当時の技術では対応できず、結局リリースすることは叶いませんでした。その5年後、再度ECサイトを構築し無事開設することができたのですが、検索に関する要望を全て盛り込むことはできませんでした。
今回のリニューアルでようやく15年前から望んでいた機能を実装できるので、非常に嬉しいです。
トレンドの変化を検索データから把握
MZ:サイトリニューアル後、実感している変化があれば教えてください。
三原:特に変わったのは検索速度ですね。様々な検索軸を追加してもスムーズに結果が出るようになりました。検索周りのストレスは確実に減っています。
久保田:また、これまで取得できていなかったデータが得られるのも大きな変化ですね。最近の検索動向を見ると、ゴルフクラブの中でも「シャフト」というパーツに関する検索が多かった。このように具体的な検索ニーズがわかることで、ECサイト上にシャフト特集を組むなど、ユーザーが求める情報を出せるようになりました。
三原:ゴルフのトレンドは移り変わりが早いんです。数年前だとヘッドの色にこだわる方が多かったのに、最近はそこにこだわる人は多くない。今のトレンドが検索データから読み取れて、ニーズに応えられる体制を構築できたのは、今後のビジネスにも非常に役立つと考えています。
MZ:山崎さんは、三原さんと久保田さんの話を聞いてどのように思いましたか。
山崎:ゴルフ界隈のトレンドもそうですが、ユーザー行動そのものも大きく変化していると感じています。ゴルフパートナーさんのメインユーザー層である40~60代の方もスマホを使いこなし、ECも気軽に楽しむようになってきたのがここ3~4年の話です。年代に関係なく、ECサイトの使い勝手に対するニーズは高まってきていると思います。
そしてゴルフパートナーさんのように中古品を扱っている場合、買うユーザーだけでなく、売るユーザーにも同じことが求められます。利便性が高まり、売り買いがより簡単になれば、中古品の流通サイクルに変化が生まれてより活性化していくのではないかと思います。
あいまいな検索軸でも商品を探せるように
MZ:ZETAでは「ZETA SEARCH」以外にもレコメンドエンジンやレビューエンジンを展開していますが、今後ゴルフパートナーと一緒に取り組みたい施策はありますか。
中川:個人的には、検索軸に反映しきれていないデータを活用し、よりユーザーの求める検索結果を導き出したいです。ゴルフパートナーさんの場合、ゴルフに詳しいユーザーにとっては非常に使いやすいUIになっています。
一方、ゴルフ初心者にとっては少し難易度が高い。ただ、クラブに関する情報は膨大にありますし、それをうまく活かせば、あいまいな検索軸でも理想の商品を探せるようになるはずです。まずはその状態を目指したいと考えています。
山崎:実は、ゴルフパートナーさんとの取り組みをきっかけに私自身もゴルフを始めたんです。ユーザーとしてゴルフクラブを選んでみると、メーカー目線の説明が多いと気付きました。それらの説明を鵜呑みにして購入してみても、いざ使うと自分には合わないと感じることが多いんです。これは私だけでなく、周りのゴルフファンも同じはず。
ですので、ユーザー目線の情報をもっと潤沢にしていきたいと考えています。当社が目指すのは「お客様が後悔しない買い物を実現すること」です。売りっぱなしではいずれそっぽを向かれる。弊社ではレビューエンジン「ZETA VOICE」やレコメンドエンジン「ZETA RECOMMEND」も提供しておりますので、そのようなソリューションも駆使してユーザーの「買って良かった」を引き出せる仕組み作りをお手伝いできればと思います。
目指すはユーザーの声が見えるEC
MZ:ゴルフパートナー側としてはどのような構想を考えているのでしょうか。
久保田:システム目線で見ると3つのフェーズがあると考えています。まずはすでに取り組んでいる部分ですがデータの正常化です。保有するデータを綺麗に整えなければ、正しい検索結果も出てこないので。その次はデータの活用。中川さんのお話にあったように、保有するデータを新たな検索軸に活用し、よりユーザーの利便性を高めたいと思っています。
最後はまだ構想段階なのですが、ECサイトのSNS化です。山崎さんがお話ししていましたが、お客様目線の商品に関する情報を求めている方は多い。それに対応できるよう、お客様が商品に関するレビューを気軽に共有できる、見ることができる仕組みを実現したいです。
MZ:三原さんはいかがですか。
三原:当社は「全てのゴルファーにとって唯一の存在を目指して」を経営理念に掲げています。ただ、中川さんのご指摘通り、まだ上級者の方向けのECサイトになっているのが現状です。そのため、初心者の方に気軽に使っていただく方法についても常に考えています。そして、その手段としてレビューエンジンやレコメンドエンジンも有効だと思います。
今後も全てのお客様にとってゴルフクラブが購入しやすいECサイトを目指し、積極的にカスタマイズを行います。