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花王廣澤氏が若手視点で聞く、これまでとこれからのマーケティング

ビッグデータ時代に必要なマーケティングの本質とは【花王廣澤氏×フェイスブックジャパン中村氏】

マーケターの仕事領域は広がっている?

廣澤:繰り返しになりますが、マーケティングを行う環境に大きな変化はあっても、目的と考えるべきことはそこまで変化していないということですね。では、マーケターが取り組む仕事という視点で見た時、どのような変化が起きていますか。

中村:アナログな作業が減った分、より素早いタスク処理やテクノロジーへの理解力などが求められるようになったと思います。一方で「マーケターとは何か」を一義的に定義するのが難しくなってきたと考えています。

 前職のP&G時代は私なりのこうあるべきというマーケター像がありました。ですが、今の会社に入り、様々な業界のマーケターと出会う中で、ビジネスモデルが違うと、タスクや注力すべき点、業務範囲が大きく変化することを学びました。

 つまり、マーケターの仕事やスキルは、その人が所属する業界・ビジネスモデルに影響されやすく、多様化が進んでいるのではないでしょうか。

廣澤:以前は環境だけでなくマーケターのスキルという点でも同質性が高かったのが、ビジネスの多様化に合わせてスキルにも多様性が求められるということですね。次の質問ですが、データが大事とされる現代ではマーケターでも、データサイエンティストが行うような領域のことまで取り扱うべきなのでしょうか。専門家に任せるという選択肢もありますが。

中村:専門家である必要はないと思います。ただビッグデータの時代ですので、データサイエンティストが行っている仕事の目的、統計含め様々な手法論とその違い、業務プロセスを論理的に理解できる状態を目指すべきだと思っています。

 かつて、ビッグデータの構築を担当した際、私の上司が「論理的に理解し、仕組みがわかれば、自分は何ができるのかが判断できる」というアドバイスをくれました。その域まで達していると、データも経営資源として多様な角度で理解ができ、マーケティングにも活用しやすくなります。私自身そのことに気づけて非常に良かったと思っています。

データは仮説を検証するためにある

廣澤:ここからは、データ活用の仕方など中村さんの実務に即したお話を伺います。仕事を進めていく上で、データがありすぎるが故に出した仮説・インサイトに対しての根拠を逐一証明しなければならないようなことが起こっていると思います。

 ただ、データはあくまで過去のものなので、100%の予測は難しく、ただデータを積み上げていくだけでは各社似たような答えに至ってしまうのではと思っているのですが、中村さんはどう思いますか。

中村:データ自体ではなくその使い方がポイントだと思います。マーケターが一番しなければならないと思うのは、「こうすればビジネスが伸びるのではないか」という仮説の立案と検証です。

 データをもとに仮説を試すか試さないかを判断するのではなく、実際に仮説に基づいてやってみたビジネス結果を、なんとなくではなくデータで可視化する。このように、科学的な検証を進め、次の新たな仮説につなげることが重要だと思います。

 さらに、単発で仮説を考えるのではなく、継続的に立案と検証ができる仕組みを用意する必要があります。ちなみにその観点で見た時、FacebookとInstagramは非常に有効なプラットフォームだと考えています(笑)。

 実際にFacebook・Instagramのデータは、ログイン情報を用いた人単位です。結果、正確なリーチやターゲティングができます。また検証用の調査手法として、かなりアカデミックに正しく設計されたコンバージョンリフトやブランドリフトなどを用意しています。データドリブンで複数のアイデアを検証できるプラットフォームを活用するのは現在の速さが求められるマーケティングの世界では非常に有効だと思います。

廣澤:お話を伺って、「仮説→検証」という前提がないために「データがない場合は意思決定をしてはいけない」という思い込みが生まれている可能性があるなと思いました。「データドリブン」という言葉に縛られているとも言えそうです。

中村:データドリブンに取り組むことは手段でしかありません。また、データの量や種類の制限はあれども、データをもとに仮説を検証するというのは昔から行われてきたことです。

 持っているデータありきではなく、「まずはビジネスを伸ばすための仮説を立て、そして仮説検証のためにどのようなデータをいかに集めるか?」と考えるのがデータドリブンの本来あるべき姿だと思います。繰り返しになりますが、マーケターがすべきことは仮説の立案と検証です。さらに言えば、検証結果で得られたノウハウを仕組み化して、再現性の高い売れるルールを考えることが求められます。

廣澤:今は、すでに持っているデータで何をするか考えてしまっている危険性があるということですね。そうではなく、仮説を検証することを見据えてデータを集めるのが大事、Measurable(計測可能)な設計を意識すべきということですね。

中村:マーケティングは、仮説を絞ったり、広げたりの繰り返しだと思っています。たとえば、ビジネス上の根本的な課題を見つけるための仮説とそのためのリサーチや因果推論などを使った分析は、絞る作業にあたります。今抱えている課題から様々な情報をもとに仮説を絞り、根本的な課題を見つけていくんです。

 そして根本的な課題の解決策を考える際は、逆にマーケティングアイデアすなわち解決策としての仮説を広げます。データドリブンに進めるだけでなく、他の企業の人から意見をもらうと言ったことも、仮説を広げる方法として有効です。そして出てきた複数のアイデアを、データで可視化しながら検証することが大切だと思います。

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データ提供は、ユーザーの共感が重視される時代へ

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/05/13 09:00 https://markezine.jp/article/detail/30743

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