BtoBマーケの5つの障壁とその乗り越え方
乗り越え方1:意思決定者(経営層、上長)が十分にコミットする
死の谷で挫折してしまう最も多い理由は、意思決定者のコミットメント不足にある。「マーケティングを強化したい」と言っていても、次のような姿勢でマーケティングと向き合っている場合は、残念ながら成果は出ない。
・マーケティングの定例会議に出席しない
・施策実行を部下に丸投げし、進捗もモニタリングしていない
・施策が進んでいなくても、人的、予算的リソースの追加投入をしない
逆に、天才的なマーケターがいなくても成果を出している会社は、意思決定者が自ら次のような行動をとっている。
・マーケティングの定例会議に出席する
・施策の実行/進捗をモニタリングしている
・進捗が悪ければ、必要に応じて、追加リソースや予算の投下を判断できる
・最初の半年は思ったような成果が出なくても、「マーケティングを強化するんだ!」という強い気持ちで、プロジェクトを主導する
戦略や戦術、個別のマーケティング施策の巧拙の前に、「意思決定者のコミットメント」があるかどうかによって、BtoBマーケティングの勝敗は決まってくるのだ。
「BtoBマーケティング専門のコンサルタント」という外部支援者の立場から言うと、意思決定者のコミットメントがあるプロジェクトと、ないプロジェクトでは、難易度が100倍違う。コミットメントが得られない場合は、他に優先順位の高い経営課題があるのかもしれない。物事にはタイミングがあるため、意思決定者がやる気になるまで待つことをお勧めしている。
乗り越え方2:専任のマーケティング担当者を置く
次々と事業を成功させている某上場企業経営者が「新規事業は兼務では難しい。集中しないとうまくいかない」と言っていたが、マーケティングゴールを達成する一連のプロセスも、一つの事業立ち上げに近い行為である。BtoBマーケティングのプロジェクトも、兼務では立ち行かなくなることが多い。
マーケティング担当者が兼務だと、たとえば、本来1週間で終わる打ち手に1ヵ月以上かかることがある。また、「四六時中、自社のマーケティングについて考えている」状態には程遠いので、新しいアイデアも出にくい。知見の蓄積も遅くなってしまい、専任の担当者と比べて、死の谷の期間が2~3倍に伸びる。
そして、現実的には死の谷の期間が長くなればなるほど、企業内でマーケティングに対する投資が打ち切られる可能性が高まってしまうのだ。
スタートアップ企業の経営や新規事業を兼務で進める人が少ないように、マーケターも兼務ではなく、最低1名は専任で確保することが望ましい。専任の担当者を置き、強力にタスクを進めてもらうことで、1秒でも早く、死の谷を突破できるようにしたい。
乗り越え方3:外部からBtoBマーケティングの知見を取り入れる
意思決定者のコミットメントがあり、専任のマーケターを置いたとしても、社内にBtoBマーケティングの知見がないと、戦略や計画の精度が低くなり、時間とお金を無駄にしてしまう。私自身も、昔事業会社にいた時に、見よう見真似でBtoBマーケティングを担当し、時間とお金をずいぶんと無駄にしてしまった。
そんな実体験を経てお勧めしているのは、意思決定者と現場担当者、外部の専門家パートナーがチームを組んで、プロジェクトを進める方法だ。幸い、BtoBマーケティングの経験者も少しずつ増えている。また、副業・フリーランスという新しい働き方の広がりも影響して、知見を持った人材にアクセスすることが昔に比べて簡単になっている。
プロジェクトを進めるにあたり、意思決定者と現場マーケターだけでも良いが、外部の専門家パートナーが加わると無駄な遠回りがなくなり、意思決定者と現場マーケターだけで2年かかる場所まで、半年で到達できたりする。
一方、現場マーケターと外部の専門家パートナーだけでは、それぞれの施策について「実施する/しない」の判断ができず、スピードが劇的に落ちてしまう。体感としては、中規模施策ごとに、1ヵ月ずつスピードが遅くなっている。
もちろん、意思決定者と外部の専門家パートナーだけでは施策が実行されないので、当然、成果は出ない。
(1)意思決定者
(2)実行力の高い現場マーケター
(3)外部の専門家パートナー
が三位一体になった時に、精度の高いマーケティング活動を、スピード感を持って推進できる。
