美容・健康に関心の強いF1・F2層を中心に500万DLを達成
2017年3月にリリースされた「FiNC(フィンク)」は、F1・F2層を中心に支持を集めるヘルスケア/フィットネスアプリで、現地点で既に500万DLを突破している。同アプリは「カラダのすべてを、ひとつのアプリで」というコンセプトを掲げており、体重・睡眠・食事・歩数・生理などの「ライフログデータ」をまとめて管理できる機能のほか、専門家監修の美容・健康について学べるコンテンツが約3万本掲載されている。
「FiNC」の強みの一つは、独自開発のAIだ。歩数や睡眠は、スマホを持ち歩くと自動で記録され、食事は写真を撮るだけでAIが自動でカロリーを計算する。さらに、記録されたライフログデータを基に、パーソナルAIトレーナーがユーザーに合ったコンテンツをレコメンドする機能も備わっている。
FiNC Technologiesで広告事業を統括する吉田大介氏は、「FiNC」は美容・健康習慣を実現するための「プラットフォーム」であると話す。
「歩数計測アプリや睡眠計測アプリなど、あるカテゴリーに特化したアプリはいくつかありますし、様々な計測データを管理できるアプリも存在します。しかし、様々な計測データをまとめて管理できることに加え、美容・健康に関するコンテンツをこれほど多く配信しているアプリは『FiNC』しかありません」(吉田氏)
アプリの「ミッション」で商品の継続購入を促す
「美容・健康に対する意識が高い」「F1・F2層の女性」と明確にセグメントされたユーザーからアクティブに使われている「FiNC」は、企業向けに「プロモーション」「データ分析」「CRM」という3つのソリューションを提供している。取り組み事例として、サントリーが実施した「特茶プログラム」を紹介する。
「特茶プログラム」とは、「特茶」の認知拡大だけではなく、継続購入を促すことを目的として実施されたプロモーション施策だ。まず、QRコード付きの「特茶」を販売し、そこから「FiNC」アプリをDLすると、同プログラム専用の「ミッション」がユーザーに付与される。
「ミッション」とは「FiNC」独自の機能で、「1日に5,000歩歩く」などの目標を達成するとポイントやクーポンが付与されるという仕組みだ。貯まったポイントは、「FiNC」アプリ内に設置された「FiNCモール」で使うことができるのだが、ここで「特茶」も購入できるようにした。
「特茶を購入する方は、そもそも健康に関心がある方なので『FiNC』とも親和性が高い。そのような方たちに健康習慣を身に付けてもらいながら、かつ『特茶』の購買習慣にもつなげていく流れを形成していこうと考えました」(吉田氏)
認知獲得~購入、ファン形成までをアプリ内ですべて網羅
美容・健康に関心のある500万人が集まる「FiNC」上で商品を紹介し、ミッション・ポイントを与えることで、継続購入を促す。さらに、期間中に取得された「ライフログデータ」から、ユーザーのライフスタイルを分析。そのデータを基盤に顧客接点の構築や、施策の最適化を実現していく。
このように、「FiNC」は認知獲得からユーザー囲い込み、商品購入からファン形成まで、マーケティングファネルをアプリ内ですべて網羅できるのだ。
プロモーション期間中、「FiNCモール」における「特茶」の売上は大幅に拡大した。また「FiNC」で貯めたポイントは、コンビニクーポンとしての発行も可能なので、オンライン・オフライン問わず、あらゆる販売チャネルを押さえることができる。
若年層へのリーチ力が強み
現在、「FiNC」のソリューションを利用するのは、食料品や美容関連のメーカー企業が多いという。クライアント企業は、どのような課題感・狙いから「FiNC」のソリューションを活用するのか。吉田氏は、「まず、若年層の女性と接点を持つのが難しくなっているという背景があります」と説明する。
「若年層を中心にチャネルシフトが進み、『テレビCMだけではなかなかリーチできない』という課題感を持つクライアント企業様は多いです。また、美容・健康に関する商品は、誤った認識を持たれてしまうことも少なくありません。信頼度の高い大手メーカーの商品であっても、宣伝色の強い広告だと、その効果を疑われてしまう。きちんと裏付けされたコンテンツを通じて、生活者に正しい情報を伝えたいというニーズが一定数ありました。
また、コモディティ化しやすい商品カテゴリーの場合、他商品に手が伸びないようエンゲージメントを高めたいというお声もいただきますね」(吉田氏)
FiNC Technologiesには、薬剤師や看護師などの専門家が多数在籍しており、薬機法のチェックはすべて社内で完結できる。薬機法に遵守した表現を守れているかどうかには、細心の注意を払っているという。
「かなりデリケートな領域のため、ルールから逸脱しないようかなり細かくチェックを入れています。当社の場合、クライアント企業様と直接取り引きいただいている場合が多いのですが、やはり薬機法チェックの信頼性が高いからだと自負しています」(吉田氏)
また企業とのタイアップであったとしても、必ず「ユーザーの役に立つコンテンツ」になるよう、意識しているという。
「たとえばヨーグルトを宣伝する場合、ヨーグルトそのものを単純にアピールするのではなく、ヨーグルトに含まれるタンパク質に着目するなど、いかにユーザーにとって有益な情報を出せるかを意識しています」(吉田氏)
美容・健康の専門家で形成されるアンバサダー約600名と提携
社内の専門家とあわせ、「FiNC」では、美容・健康の専門家で形成されるアンバサダー約600名と提携している。彼ら彼女らを通じて情報発信できれば、健康意識の高いユーザー数百万人にリーチできるため、その発信力に対しても魅力を感じる企業が多いという。
アンバサダーの活用はアプリ内に留まらない。企業プロモーションの一環として、「FiNC」アンバサダーを起用したイベントやセミナー、フィットネス教室などを開催することもあり、デジタル・リアルの垣根なく多面的なサポートが可能だ。
ユーザーセグメントが明確なだけに、健康食品や化粧品など親和性が高い商品であればかなりの確率で良い成果を出せるはずだ。では、それ以外のカテゴリーでの効果はどれほど期待できるのか。
「現時点では、食品・飲料・化粧品・保険のプロモーションがメインですが、自動車や証券などまったく異なるカテゴリーでも、ストーリーの構築次第で十分効果を見込めると思います。人生100年時代と言われる今、美容・健康は今後ますます重要なテーマとなってくるでしょう。様々な商材・サービスに対応できるよう、準備を進めていきます」(吉田氏)
多数の「ライフログデータ」を活用していくために
「FiNC」は今後、女性向けコンテンツに加えて、男性向けコンテンツの拡充にも注力していくという。また、ユーザーのプライバシーに関わる部分の秘匿性は維持しつつ、「FiNC」が保有するライフログデータを活用する幅も広げていく。健康に関するビッグデータを蓄積し、マーケティングだけでなく、商品開発や改善に役立てられるような仕組みを模索中とのことだ。
最後に、吉田氏は、「FiNC」のプロモーションポリシーについて語った。
「我々は課題解決型のサービス提供に徹しています。お客様の課題を理解したうえで、解決するために当社でどこまでできるのかを提案しています。逆に、“この広告枠が余っているのですがいかがですか”というような、広告ありきの提案は間違ってもやりません。それはバナー広告1つとってもそうです。広告ありきになってしまうと、企画に落とし込んだときに目的が不明確になりがちですし、そんな状態ではクライアント、『FiNC』ユーザー双方に価値を提供できない。
ユーザーに対して有益な情報を提供しつつ、クライアントの課題も解決できる、三方良しなソリューションを提供できるよう企画を考えています」(吉田氏)