オフライン行動データのために自社開発CRMをカスタム
とはいえ、オフラインの行動をデータ化するにはどうしても手数がかかる。「いわゆる銀の弾丸はないという状況でして、システムに頼れない部分は人力で地道にコツコツ蓄積しています」と松原氏は説明する。
具体的にどのように収集しているのか。
かつてレバレジーズではSaaS型のCRM/SFAを活用していた事業もあったが、現在は自社開発のCRM/SFAへとスイッチしている。営業担当者は、自社製のCRM/SFAに営業活動のさまざまなデータや、求職者/事業所のデモグラ情報やサイコグラフィックデータを登録するのだ。

このCRM/SFAをさらに作り込み、営業がオフラインのユーザー行動データを入力しやすくしたり、電話やLINEなどの営業活動を自動的に蓄積したりできるように開発を進めているという。
セミナーへの参加、契約締結などのデータを収集
実際にCRM/SFAを作り込んで取得しているオフライン行動の1つに、オフラインセミナーへの出席・欠席がある。オフラインセミナーへの参加申し込みはWeb上で行うので出席予定者は事前に把握できるものの、実際に出席したかどうかまでフォローできていなかった。
そこで2018年秋にCRM/SFAを改修。イベント予約者をリスト化して、来場受付が完了したら営業担当者がリスト横のボタンをクリックする仕組みを導入した。ボタンをクリックするだけなので、営業担当者の手間は少ない。こうしてオフラインの「リアルイベントで会話済み」というデータを記録し、リアル行動ログとして蓄積できるようにした。
オフラインデータをマーケティング施策に取り込む試みのひとつとして、売上発生フラグを活用した広告配信がある。これはGoogleアナリティクスの機能の1つであるMeasurement Protocolを活用した施策で、現在一事業部でテスト稼働中だという。
Measurement Protocolとは、インターネット接続デバイスで発生したヒットを収集し、Google アナリティクスに送信するための方法だ。たとえば小売業なら、リアル店舗で買い物したユーザーを会員証IDなどで特定し『◯◯という商品を購入した』という履歴をGoogleアナリティクスに渡すといったことができる。
「レバレジーズでは、CRM/SFAに登録された売上発生フラグをGoogleアナリティクスに戻し、そのデータをGoogle Adsと連携することで有望なオーディエンスに広告を当てていく機能を実装しました。これにより、ROASを高めることができると期待しています」(松原氏)

IP電話を導入して、電話記録や音声データも蓄積
収集しているのは、ユーザー側のオフライン行動だけではない。営業担当者の活動も、可能な限り自動で収集できる実装を進めている。2018年1月に稼働させたTwilioによるIP電話もその1つだ。
レバレジーズでは以前からIP電話自体は導入していたが、ログや音声の取得は管理画面から都度手作業で取得する仕組みになっており、IP電話機のセットアップなどの運用負荷が高い状態だった。そこでCRM/SFAリニューアルに合わせてTwilioを導入し、IP電話機を撤廃。CRM/SFA画面上の顧客プロファイルに表示されるダイヤルボタンをクリックすると、そのままユーザーに電話がかけられるようにした。インカムのみで運用でき、発信着信ログや会話音声データも自動で蓄積されている。

これにより、いつ、誰に、どんな内容でどのような会話を交わしたのかを確認できるようになる。TwilioとCRM/SFAをつなぎ込んだことで、自動的に営業活動のログが蓄積されるようになり、ユーザーが電話を取りやすい時間や、電話をかける回数の分析、最適化が進んでいる。
