年収を決める三要素とは?単一スキルでは頭打ちの可能性も
クリーク・アンド・リバー社 成岡 信享氏
デジタルマーケターやデータサイエンティスト向けの求人・案件紹介サービス「Symbiorise(シンビオライズ)」において、マーケティングを中心に、AIやビッグデータ、IoTといった領域の人材紹介を担当。採用担当者と転職希望者の双方と接しながら、キャリア支援を行っている。
――初めにデジタルマーケターの年収について、近年の傾向を教えてください。
成岡:まず、国税局が出している「民間給与実態統計調査(平成29年度版)」によると、すべての職種における一人当たりの平均年収は467万円となっています。これは、フリーランスを除き、企業に勤務している給与所得者について算出したものです。
一方、マーケターの年収は500~600万円だといわれていて、全体としては上昇傾向です。事業会社に勤めているマーケターの年収は、広告代理店などと比べて低くなりがちと言われてきましたが、CMOなどの概念の広がりにともない、金額が底上げされている印象ですね。
――マーケターにとっては嬉しい傾向ですね。実際にどのようなポジションにどれくらいの年収が提示されているのか、求人の条件を少しだけ教えてもらうことはできますか。
成岡:最近は事業会社も高めの年収で求人を出して、優秀な人材を探しているところが増えています。たとえば衣料品の製造・販売を手掛ける某企業では、新規ソーシャルサービスの立ち上げメンバーを、最大提示額1,500万円で募集しています。
また、いわゆるメガベンチャーや急拡大のフェーズにある会社ですと、比較的年収は高い傾向にあります。某ネット系の企業では、デジタルマーケティングのリーダー候補というポジションに、最大1,000万円という提示がありました。
――具体的にはどんな要因が、年収を決めるのでしょうか。
成岡:年収を規定する大きな要因には、スキル、役職・ポジション、企業の3つが挙げられます。
スキルは、「デジタルの知識が豊富」「AIなど最先端の技術を扱える」「データ活用のノウハウがある」といったもの。役職・ポジションに関しては、CMOやマネジメント層であればその分年収が上がってきます。
また、どの企業に所属するかということも、年収に小さくない影響を与えています。外資系企業や大手の広告代理店のほうが、年収が高くなることも多いです。
マーケターの給与は全職種の平均と比べると高い傾向にありますが、年収1,000万円以上の方もいれば、若手層だと300~400万円の方もいて、ばらつきが大きい職種といえます。
――他の職種に比べたとき、マーケターに特有の傾向はありますか。
成岡:当社ではマーケターに加えエンジニアのキャリア支援にも携わっているのですが、エンジニアの場合、特定のプログラミング言語を突き詰めプロフェッショナルを目指すことが、年収アップに結び付く場合があります。
一方マーケターの場合、一つの領域で専門性を高めていった際の年収の上がり幅が、エンジニアに比べて小さいのが特徴です。つまりマーケターは、単一のスキルだけでは年収が頭打ちになってしまいがちで、周辺領域の知識やスキルを身につけることがより強く求められているといえます。