ユーザーのモーメントを捉える複数のKPIを設定する
前述の2つの課題の解決策は、「KGIから一つのKPIに落とし込む」のではなく、「ユーザーの瞬間のニーズ(モーメント)を複数のKPIに置き換えること」です。多数のKPIが存在することを前提に、どのように分析し、可視化し、アクションしていくのかが重要になります。
具体的には「ロイヤリティユーザーを定義すること」をゴールにするのではなく、「より長く訪問してくれそうなユーザー」といったビジネス上重要なKPIを複数定義し、集合体としてKGIになるような状態を設計することです。
単一のKPIでユーザーの声を単純なグラフ化して判断するのではなく、複数のKPIでのデータでの分析・可視化のためにデータを活用することで、これまで捉えきれなかったユーザーに対して「One to Oneアクション」を実行することができます。これは、今後さらに多様化するメディアとユーザーとの関係性を密にしていくために必要不可欠な取り組みです。

“アクションにつながらないデータ”から価値は生まれない
前述のとおりKPIを細分化し、複合的に見ていくことで、ユーザーの瞬間的なニーズ(モーメント)ごとに適切なアプローチが可能になります。たとえば、記事広告やSNSの活用、好きなジャンルに応じたメールマガジンの配信など、パーソナライズしたコンテンツをそれぞれ一人ひとりに届けることが可能になります。
そのためには、それぞれのKPIに適切な粒度を設定することがカギとなります。そして、適切な粒度を設定するには、必要なデータをリアルタイムで収集し、アクションをとりやすくする環境の構築へとつなげていくことが必要になります。
必要なKPIを定義していくためには、一度ビジネスモデルからKGIを洗い出し、それらを構成するKPIを「誰がどのようにアクションしていくか」の側面から議論を深めるのが効果的です。理想的すぎるKPIを作ってしまい運用が袋小路にはまってしまうよりは、組織や運用の状況に見合うように、あらかじめ「誰が」「いつ」「どのように」アクションを取っていくのかが明確になるようなサイズ感で設計するとよいでしょう。
はじめのうちは取得できるデータをすべて活用しようと前のめりになりがちですが、アクションにつながらないデータを見ていても価値は生まれません。KPIの設定を組織とビジネスに合わせて行いながら、細かくアクションできる手段を増やしていくことで、最終的にはメディアとしての価値や信念を持った上で様々な角度からユーザーにアプローチできるプラットフォームを作ることが可能になるのです。