階段設計を応用して、購入のハードルを下げる
なめらかな階段を設計し、リード数や商談数を伸ばした後に直面するのが「リードや商談は増えているのに、受注につながらない」という課題だ。実はこのときにも、階段設計の考え方を活用できる。
たとえば「過去に1,000件の商談をしているが、受注数は100件で、900件が受注に至っていない」という場合、メールマガジンやインサイドセールスの架電で休眠顧客の掘り起こしをするよりも、900件の休眠顧客が買いたくなるよう、売り方を工夫した新メニューや新サービスを開発したほうが効果は大きい。
ここからはBtoB商材でよく使われる、効果的な売り方を五つ紹介する。いずれも「階段設計」の考え方を取り入れ、購入のハードルを下げているのがポイントだ。
1.無料トライアル期間を設ける
最もオーソドックスなのが、SaaS企業がよく使っている手法で、特定の期間、自社製品のすべての機能を使ってもらうやり方だ。いきなり有料プランを販売するのではなく、ハードルの低い無料トライアルによって自社サービスを使ってもらいながら、利用イメージをもってもらい、本導入につなげていく。たとえばサイボウズの「kintone」は、30日間の無料トライアルを提供している。
2.初日から有料だが、「○○日間返金保証」などをオファーする
無料トライアルに近い方法として、購入ハードルを下げるために返金保証などのオファーを用意するのも有効だ。
この方法は、サービスを使ってもらった場合の提供価値には自信があるが、事前にその利用イメージ/サービス体験が伝わりにくい場合によく使われる。特に人的サービスの場合、「無料トライアル」は原価がかさんでしまいリスクが大きいが、返金保証にすることで、初日から課金できる。たとえば、うるるの「fondesk」は14日間の返金保証をオファーしている。
3.一部機能/リソースを切り出し、廉価版や新商品を販売する
すべての機能を提供するのではなく、一部の機能のみを切り出した廉価版や既存のリソースを活かした新商品を販売するというパターンもある。
電通が展開しているのは、「伝える」部分に特化した「TANTEKI」というサービスだ。自社が保有するリソースの中から、コピーライター、アートディレクターのチームを切り出して、新商品として販売しており、視点次第でどんなサービスや事業でも取り入れられる方法であることがわかるだろう。
4.一部の作業を代行する
顧客側のリソース不足が原因で、サービス導入が先延ばしになっていたり、導入しても定着せず、解約につながったりすることがある。これらを解消することができれば、顧客の意思決定ハードルを下げることができる。
具体的には、サービス導入・定着にともなう一部の作業を、サービス提供者または第三者が請け負う方法をとると良い。たとえばSalesforceが提供するMAツール「Pardot」は、ツールの導入・活用支援をtoBeマーケティングなどのパートナー企業に委託している。
5.課金方法を変える
BtoB商談現場では、金額がネックになる場合は多い。そこでトータルの費用は変わらないものの、課金方法を変えることで、買ってもらいやすくする手法が存在する。toC商材では、携帯電話の分割払いがイメージしやすいが、toB商材でも、数百万円の初期費用がかかるHP制作を月5万円×5年間などに分割したリース契約が少し前に存在した。
認知獲得からサービス導入まで、どこにネックがあるかを把握する
ここまで、リード獲得、商談獲得そして受注獲得を伸ばすための階段設計の例を見てきた。
マーケターはCPAの最適化やCV率の最適化といった部分最適にこだわりすぎず、自社のビジネスプロセスやマーケティングプロセスの全体像を把握し、常に全体最適を行っていく必要がある。
ターゲット顧客の視点に立って、自社の製品・サービスは購入しやすい状態になっているだろうか。それを見直すための思考ツールの一つとして、今回紹介した「CVポイントの階段設計」のフレームワークを活用していただければ幸いである。