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リクルートメント・マーケティング 採用活動をマーケティングでハックせよ

激化する人材獲得競争に「マーケティング発想」という処方箋を 成否を分ける3つのプロセス

リクルートメント・マーケティングの採用プロセス

 リクルートメント・マーケティングのフレームワークにおいては、従来の本選考プロセスに加えて、見込み候補者への「リードジェネレーション」と「リードナーチャリング」、社員に対する「エンプロイーサクセス」の3つのプロセスについて新たに考慮します。次に、それぞれのプロセスにおける戦略について押さえていきましょう。

リードジェネレーション:見込み候補者からの認知獲得

 マーケティングにおけるリードジェネレーションの一般的なゴールは「見込み顧客の獲得」ですが、リクルートメント・マーケティングでは「見込み候補者に企業を知ってもらい、憧れを持ってもらうこと」です。こうした「憧れ」を勝ち取ることによって、ターゲットがいざ仕事探しに向け動き出した際に第一想起されるポジションを得ることができます。

 中途・新卒を問わず、見込み候補者からの認知を獲得するためには、「何を発信するのか(ストーリーラインの設計)」と「どこで発信するのか(情報発信チャネルの選択)」について戦略を立てる必要があります。

 コンテンツのストーリーラインを設計する際には、自社のナレッジ・ノウハウにターゲットの関心を引くような情報価値を持たせること、そして企業のビジョンに紐づけた情緒価値を織り交ぜることでターゲットからの共感を得ることが大切。特にミレニアル世代は「働く意義」を求める傾向が顕著なため、明確なビジョンの発信は、未来を担う若い人材への強力なアピールポイントとなります。

 また、設計に基づいた情報を発信するメディアの使い分けも必須です。SNS上のシェアや口コミといった第三者からの視点から形成される「アーンドメディア(Earned Media)」、自社サイトやブログなどでの発信からなる「オウンドメディア(Owned Media)」、そして他媒体への出稿による情報発信の「ペイドメディア(Paid Media)」。それぞれのメディアの特長を把握し、情報を届けたいターゲットの認知を獲得するために効果的な戦略を練るとよいでしょう。

リードナーチャリング:潜在候補者との関係構築

 認知を獲得した後は、いかにその候補者と継続接点を持って志望度を高めていくかが重要になります。このナーチャリングのプロセスが正しく機能することによって、ファネルの上流と下流のつなぎ込み、つまり認知を獲得した見込み候補者を本選考のプロセスへと後押しすることができます。

 リードナーチャリングの第1ステップである「ソフトセレクション」とは、自社に淡い興味を抱いている潜在候補者とリアルな接点を持つことです。たとえば、新卒であればインターン、中途であればカジュアル面談やミートアップなどを通じて、企業と個人がフラットに向き合う機会を創出し、相互理解を促進します。

 そもそも、見込み候補者の企業への志望度は一度に高まるわけではなく、彼らが興味を持つ情報を適切な頻度で受け取ったり、彼らの求めるタイミングでコンタクトを取ることによって、徐々に向上するとされています。その際に、ソフトセレクション等を通じて自社が接点を持った見込み候補者を「タレントプール」としてデータベース化し、候補者のステータスに基づいてアプローチタイミングを最適化することで、中長期的な採用活動の戦略設計が可能になります。近年では、コミュニケーション情報の管理にはCRMやタレントプール機能を有するATS(Applicant Tracking System=候補者管理システム)を活用し、持続性のあるコミュニケーションにはSNSなどのフロー型メディアを活用するなど、デジタル環境の発達により打ち手が広がってきています。

 自社への興味が形成され、候補者の転職意欲が顕在化してきたら、いよいよ選考への後押しをするフェーズです。その際には、候補者がキャリア選択において重視する軸を把握した上で、自社の姿を誇張せず伝え、正しく検討を促しましょう。

エンプロイーサクセス:社員の成功の実現

 リクルートメント・マーケティングのゴールは、候補者が入社することではありません。マーケティングにおいて、顧客のLTV向上やアンバサダー化といった「カスタマーサクセス」を目指すことと同じく、企業が社員の成功に貢献する「エンプロイーサクセス」の実現こそが真のゴールです。

 「エンプロイーサクセス=社員の成功」は、その語の新奇さとは裏腹にこれまでも人事領域で語り尽くされてきたテーマです。たとえば終身雇用が当たり前とされていた時代においては、企業に長く勤めること自体を成功とみなす均一的な価値観のもとで日本特有の企業文化や制度が発達していきました。しかし、終身雇用が崩壊して労働力の流動性が高まり、スキルやキャリアを「個人で選択する」時代においては、企業が社員に約束する「成功」の尺度についても個々の企業で定義し直さなくてはいけません。

 「個の時代」におけるエンプロイーサクセスを実現するための具体的なアクションが、「『成果』の定義と共有」と「『成功』の定量化」、「継続的なコミュニケーションや改善施策」です。企業と社員の間で成果の定義に齟齬が生じていると、社員が企業で働く動機でもある「成功」に到達できず、エンゲージメントが低下してしまいます。この悪循環を避けるために、成功を明確に定義し、成果を定量化することによってエンプロイーサクセスの進捗を正確に把握でき、状況にあわせた施策を講じられるようになるのです。

 このように、成長へのPDCAを短いサイクルで回して社員のエンゲージメントを向上できれば、社員の紹介を通じて採用される「リファラル採用」の増加につながるでしょう。アメリカでは入社経路の28%を占めるほどリファラル採用が主流になっており、国内においても入社後の定着率やカルチャーマッチへの期待からリファラル採用が大きく盛り上がりを見せています。リファラルを行ってくれる社員は企業への満足度が高い傾向にあるため、採用活動のゴールを入社までと捉えるのではなく、入社後のエンプロイーサクセスまでを戦略的に取り組む必要があるのです。

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「統一性」と「透明性」が大前提

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この記事の著者

小池 弾(コイケ ダン)

ウォンテッドリー株式会社 Recruitment Marketing Evangelist / Business Hiring Manager
慶應義塾大学経済学部卒。大手SIer、HRスタートアップを経て、2018年1月にウォンテッドリーのビジネス採用担当としてジョイン。現在は、ビジネスサイドのHR責任者として、組...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/08/19 08:00 https://markezine.jp/article/detail/31612

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