じげん平尾氏「絶対的CMOは存在しない」
CINCが運営するマーケティング戦略情報メディア「Marketing Native」が、2019年7月24日に開催した「CMO Path 2019」。morichの森本千賀子氏がファシリテーターを務めた前半のセッションでは、JapanTaxiの川鍋一朗氏とじげんの平尾丈氏が、経営者から見たCMOの立ち位置や、マーケターへ求めるスキルについて語った。
平尾氏は、「じげんでは、マーケティングをコストセンターではなくプロフィットセンターと位置づけている」と述べ、同社ではコーポレート部門以外は職種を問わず、ほぼ全社員がPLに対する責任を負っていると明かした。
「私たちは一人ひとりがマーケターという認識で仕事をしています。育成に関しては、研修よりOJTを重視していて、早い段階で実践にチャレンジしてもらうようにしていますね」(平尾氏)
また平尾氏が注目しているのは、テクノロジーやプラットフォームの進化が加速し続けていること。常に詳細なデータを追っていなければ、最新の状態をキャッチアップできなくなっている。このような状況から、「すべての領域を網羅する絶対的CMOは存在しない。相対的CMOを目指すべきです」と説く。
「じげんでCMOを目指す人には『じげんの中での相対的CMOであればよい』と話していますが、そのためには、自身の知識や経験を次のキャリアにどう活かすのか、戦略をもつことだと思います」(平尾氏)
たとえば、リアルな商材を扱うメーカーからネットプロダクト企業に転職して成功しているマーケターは、二つの企業において何が同じで何が違うのかを定義できている。CMOに求められるのは、網羅的なスキルや知識をもつことではなく、置かれた状況に対してどのような貢献ができるのかを考え、実践することなのだ。
JapanTaxi川鍋氏が語るマーケ部長とCMOの違い
一方、JapanTaxiの川鍋氏がマーケターに求めているのは「本当にサービスを使っているのは誰なのかをしつこく見続け、突き詰めて考える」ことだ。マーケターはつい計測可能な指標や本に書かれている理論に目を向けてしまいがちだが、リアルな世界に転がっているヒントはたくさんあるという。
これに対して平尾氏も、KPIだけを見続けることの落とし穴について指摘した。KPIを構成する掛け算の各要素のバランスはとても重要で、一点突破で一つの数字だけを急上昇させてしまうと、事業全体が崩れてしまうケースがある。「データを見るだけでなく、大きなストーリーを把握すること、つまり顧客と向き合うことが重要です」と平尾氏は語った。
またJapanTaxiで活躍しているマーケターの特徴について尋ねられた川鍋氏は、「現場に足を運んでいること」「自己ブランディングができていること」を挙げた。
「ネットの心地よい空間に逃げず、お客さんやタクシーの乗務員さんのところに足を運べるか。営業所に頻繁に顔を出す人は現場から信頼されて、物事がうまく進みます。
また人からの信頼や評価というのは、最後は『あいつはできるな』『こいつに任せれば大丈夫』という自己ブランディングができているかどうかというところに尽きます。小さなことで実績を積んでいくしかないのではないでしょうか」(川鍋氏)
なお、川鍋氏が語った採用したいCMO像は「事業開発の経験があり、マーケティングの素養をもっている人」だった。マーケティングのテクニックに関しては外部パートナーが知恵を貸してくれるが、経営者とともに社内で議論する役割は誰も代わることができない。川鍋氏はマーケティング部長とCMOの違いについて、「経営者目線があるかどうかです」と強調した。