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編集長インタビュー

マーケターは論文を武器にせよ ビジネスパーソンがいま論文を読むべき理由

論文の中に、実務の課題の答えが出ている可能性も

安成:西川先生は、「マーケター/ビジネスパーソンこそ論文を読むべき」とおっしゃいますが、その理由は何でしょうか。

西川:ビジネス界で困っていることの答えは、すでに論文の中で明らかになっていることが結構あります。ビジネス書を読むのも良いのですが、本より論文の方が読みやすいしハードルが低いと思います。しかも、世界最先端の知識が日本にいながら取得できます。

 本だと、全部読もうとするとそれなりのボリュームがありますし、本の途中ではテーマや主張が違うこともあります。論文は1本につき1テーマ1主張とシンプルで、Abstract(要約)に結論が完結にまとまっており、その300~500文字程度を読めば内容が理解できます。

 体系立った知識をイチから取得するのには、本の方が適しているかもしれませんが、個人的には、入り口は本より論文の方が入りやすいように思います。まずAbstractを読んでみて、面白そうと思ったら全文を読み、より構造的に理解したい場合は、その著者の本を読む流れがお勧めです。難しい用語もありますが、読み慣れると理解が進むので、気にせず読み進めていくことが大事です。また、図表などには大事なことが整理されているので、理解の手がかりとなる場合が多いです。

 海外の論文も同じ構成になっているので、AbstractのテキストをGoogle翻訳などのサイトに文章をコピぺするだけでも、概要を理解することができます。どの論文を読むべきかがわからなければ、「Google Scholar(グーグル・スカラー)」でキーワードを英語で検索して、他の論文に引用された数をあらわす被引用数(Google Scholarでは引用元数)が多い論文から読んでみるといいでしょう。

 もう1つのコツは、被引用数の多い中でも、最新の論文を選ぶことです。それまでの研究の流れや発見内容を整理してくれているからです。本文が見られない論文もありますが、まずは見られる論文から試してみましょう。

 自分の関心あるキーワードを「Google Scholar」で検索して、日本語・英語関係なく読んでみれば、おそらく同業他社のマーケターはまだ誰も知らない最新の知識を手に入れることができますよ。キーワード登録しておけば、自動的にそれに関する論文をメールで教えてくれる機能もあります。

安成:被引用数は、どれぐらいであれば信用に足る指標となるのでしょうか。

西川:分野やテーマにより異なるので、一概には言えませんが、何度か検索すると水準が見えてくるかと思います。ただ、日本語の論文は被引用数は少ないですね。海外と比べて、電子化されている論文の本数が少ないのと、英語で書かないとグローバルな論文に引用されるのは難しいので。

 初心者の方は、「Google Scholar」を使うのが便利だと思いますが、研究者や院生で厳密な情報が欲しいということであれば、有料ですが掲載論文の質的保証をしている「Web of Science(ウェブ・オブ・サイエンス)」「Scopus(スコーパス)」等のデータベースから選ぶのが良いでしょう。

 ただ「Google Scholar」の上位の論文と、そこで掲載されている上位のものはほぼ同じなので、ビジネスパーソンであれば無料で閲覧できる「Google Scholar」で十分だと思います。無料でビジネスに役立つアイデアが転がっていて、もしかしたら自分が今向き合っている悩みは既に誰かが解決して論文になっている可能性があります。答えが出ているのに知識がないまま挑むよりは、答えが載っている論文を読んでから実務に挑むほうが良い結果が生まれやすいと思います。

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新しい知識と知識の組み合わせからイノベーションが生まれる

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/08/20 08:00 https://markezine.jp/article/detail/31670

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