新しい価値を提供する商品
MZ:これまでにCFLで開発された商品について教えてください。
山邊:第1弾商品の「ふるシャカ」は、サイコロ状のポテトスナックに味付けパウダーを入れてシャカシャカ振って混ぜるお菓子なんですけど、そのときに出る音で応援するという商品です。音って、食においては基本的にネガティブな要素なんです。それを応援という、する側もされる側も嬉しいポジティブな行動に使えるようにしたアイテムです。これも発想を広げて、インタビューやデータ分析の結果からたどり着いた一つの形です。
応援というコンセプト以外で価値を高めるという点ではパッケージにもこだわり、建築家の人にデザインをお願いしました。カルビー発祥の地でありCFLの拠点である広島で第1弾を発売。今年は東北バージョンを発売し今後も全国に展開していく予定です。
MZ:CFL発の第2弾商品も完成しているんですよね。
山邊:「のせるん♪」という、パンに乗せて焼くだけで食べられるレトルトのおかずを作りました。流通の方からは、もっと安いレトルト商品が既にあるので絶対に売れないと散々言われたのですが、7月にクラウドファンディングをやったら4日で完売しました。この商品のコンセプトは、親御さんの罪悪感を軽くすることなんです。ちゃんと作る時間はないけれど、温かくて手作り感もあり、三大栄養素のバランスが良いものを家族に食べさせたいというニーズに応えているわけです。大きなジャンルでいくと似たような商品があるかもしれませんが、その背景にある悩みや概念がまったく違います。
もっとお客様のことを知るために
MZ:山邊さんから見て、パートナーとしてのヴァリューズの強み、一緒にやってよかった点はどんなところですか。
山邊:僕は相当面倒臭いことを言ったと思うのですが、和田さんは一度もノーと言わなかったですね。ヴァリューズさんには、定型のフォーマットでアウトプットするだけじゃなくて、僕のオーダーメイド的な依頼にもいとも簡単に対応できる能力を持った人材がズラリと揃っています。多分、データを見るって想像力を要することですよね。
和田:データは既にあるものの延長なので、もう決まっているものの運用の場合は良いのですが、ゼロからイチを生み出すときには、いいジャンプをできるための土台を作ることが大事だと思っています。そのジャンプには、想像力が必要になりますね。
MZ:和田さんから見て山邊さんとのお仕事はいかがでしたか。
和田:山邊さんは、周りの人に応援したいと思わせる方です。それで、いろいろなパートナーの方と一緒に新たなものを作り上げていっています。
山邊:それは嬉しい話ですね。よくメーカー側が外部の企業の方を「業者さん」と呼びますが、僕はそれが嫌いで、パートナーさんと呼んでいます。業者さんというのは、メーカーからの依頼をしっかりやるのが仕事ですから、ある意味それ以上の結果にはならないんですよね。でも僕は食品作りにおいては素人ですから、パートナーさんには、具体的な指示はせず「こんな物を作りたいのです」とコンセプトを伝えます。それを製品として形にするためには、そこに必死に知恵を絞ってくれる方々の協力が必要不可欠です。パートナーさんも具体的な指示がないことに最初は戸惑うのですが、だんだんおもしろがって僕らが想像していた以上の物を作ってきてくれたりするんですよ。一方で、「カルビーはもっとお客様のことを知るべきでは?」と思ってしまうことがあります。
MZ:それはどうしてでしょうか?
山邊:メーカーはどうしても流通を通してお客様を見ますからね。既存商品の強みもありますし。CFLでは、日常的にサポーターの方と触れ合い、お客様の生の声、本音が集まっています。それらとヴァリューズさんのような異業種のパートナーさんやデータを掛け合わせることで、本質的な顧客ニーズに応える商品を生み出していければと考えています。こういったやり方は遠回りのように見えて、新しい価値を提供していくために結局は近道になると思っています。