マーケターが認識している「Z世代のイメージ」は正しいのか
友だちにLINEで予定を聞いたけれど、既読のままで一日たっても返信がない。そんな時、あなたはどう感じるだろう?
オンラインで緊密につながりあうZ世代にとって、LINEは情報の大動脈だ。その上で、対話の文化が絶えず生まれ、生き物のように進化してゆく。さて、Z世代は「既読無視」や「未読無視」を許すのか。それとも厳しいのか。アンケート結果を見てみよう。
●「既読無視・未読無視」を許す文化ができつつある(69%が共感)
●「既読無視・未読無視」はよくないことだ(41%が共感)
どうやら若者の間では「許す派」が「厳しい派」を上回り、既読無視・未読無視を許容する文化できつつあるようだ。一方で、約4割はよくないことだとも感じている。
この例のように、Z世代のトレンドといっても、必ずしも全員に共通するものではない。では、人々がなんとなく感じている「Z世代の特徴」のうち、どんなものはメジャーで、どんなものはマイナーなのか。
この疑問を解消すべく、学習院大学の学生を対象として、2019年5月に「Z世代の特徴的な価値観や行動」に関するアンケート調査(注1)を実施した。本稿ではこの結果にもとづき、マーケティングに関係する「Z世代の消費行動」を(1)Z世代に浸透しているもの、(2)Z世代で均衡しているもの、(3)Z世代の中でも少数派のもの、の3種類にわけて解説する。
なお、本稿は「学習院大学3・4年生」に対する調査に基づいており、日本の首都圏に住む大学生(20~22歳)を対象とした考察である。したがって中高生や地方在住のZ世代は、本稿とは異なる行動や価値観を持つ可能性があることにご注意いただきたい。
Z世代に浸透している(3人に2人以上が共感する)消費行動は?
はじめに「そう思う」「ややそう思う」の比率(以下、共感度と呼ぶ)が67%以上、つまりZ世代が3人集まれば2人以上が共感する消費行動を取り上げてみよう。
自分が気に入ればブランドは気にしない(88%が共感)
Z世代にとって大切なのは、社会的に認められたブランドではなく、自分自身のお気に入り。この質問に対する圧倒的な共感度の背景には、「多様性と個性を重んじる価値観」があると思われる。アンケートでもZ世代は“多様性に寛容(95%)”であり“人にあわせるより自分にあう場所を探す(88%)”ことが明らかになっている。この感覚は、子どもの頃から多様な人とつながり「群社会(むれしゃかい)」で生きるソーシャルネイティブ、最大の特徴と言えるだろう。前回の記事にも書いたが、Z世代は、情報やコミュニティを選択できる環境にいるために“膨大な情報から自分に心地よい情報のみに浸る(65%)”傾向にある。ただし、彼ら自身もそれを自覚している点が興味深い。
感動の瞬間を撮って共有したい(71%が共感)
Z世代に「日常的に使っているSNS」はなにかと聞くと、ほとんどが「インスタ(Instagram)」と回答する。この“感動の瞬間を撮って共有したい”という気持ちは、まさに「インスタ文化」と言えるだろう。ただし彼らは“知っている人にだけプライベートを知ってもらいたい(80%)”と考えていることもセットで理解しておきたい。小さなころからSNSによる炎上を見たり聞いたりしてきたZ世代にとって、いつ自分に牙をむくかもしれない不特定多数の人々ではなく、自分を理解してくれる内輪と喜怒哀楽をシェアすることが大切なのだ。ユーチューバーやインスタグラマーのように、不特定多数にむけて情報を発信したいZ世代は明らかに少数派と言える。
一周まわってアナログなモノが流行している(68%が共感)
アナログな味わいが若者に受けて大復活を果たしたインスタントカメラ「チェキ」などが最もわかりやすい事例だろう。日々刻々とテクノロジーが進化する世界で生まれたZ世代にとって「新しいこと」など当たり前で「目新しいこと」ではないのだ。たとえば音楽の世界では、クラウド技術の進化によって「過去の膨大な楽曲」にアクセスできるようになり、以前よりも「新曲の価値や意味」が薄れている。また「音の善し悪し」より「音楽を聴く体験」に価値はシフトしており、全米では33年ぶりにレコード売上がCDを上回る可能性があるとの予想も出てきた。「理想のオフィスってどんなところ?」と聞いて「高層タワー」と回答するZ世代に出会ったことがないのも、この流れなのだろう。
研究や講義の内容をまとめている下記ブログにて、「Z世代とは?」がひと目でわかる資料も公開しています。あわせてどうぞ。
Z世代を理解しよう(Join the dots)