簡単な言葉を使い、脳に引っ掛かかるフックを作る
中山:最後に、枌谷さんの文章Hackを教えてもらえませんか?
枌谷:細かいテクニックでいうと、「140字以内のTwitterで切り取られやすくする」を意識しています。たとえば、最後のまとめをバッと切り抜かれて、ポンと出されたときに140字以内でスパッと言えているか? とか。
それと、印象的な言い回しを含ませたり、ちょっと脳に引っかかる言葉を散りばめておくこともします。

中山:さっきのQUEENの記事中でもやっていました?
枌谷:ええ。シェアするときって、文章中の言葉をコピペしてリンク貼るって行為がけっこうあるので、できるだけ一文を短く削る……とか、それを想定した文章の書き方が肝です。
(ご自身が書いた他の記事を見せながら……)たとえばここ、“失敗したときの経済的損失が大きいにも関わらず、ロジックだけで判断することが難しいのが典型的なBtoB商材なのです”の一文にある「経済的損失」という表現がそう。
中山:経済学者チックで、ちょっと専門家っぽい響きですね。
枌谷:でも、誰でも理解できる言葉ですよね。これを、「失敗したときのリスクが大きいのに、機能だけで選べないのが、よくあるBtoBの製品なんです」と書くと、わかりやすいのですが、すーっと流れて記憶に残らない。
中山:確かに……! でも、そう書いてしまう人が多い気がします。
枌谷:これがオリジナリティにつながっているかどうかはさておき、印象的なワードを含むツイートを数珠つなぎにしたかのような書き方というか、ツイートを連投するように書くことを、最近は意識しています。その集積が「シェアしやすい、バズりやすい、共感されやすい」コンテンツになっている面は、あるのかもしれません。
ここもそうですね(……と別の箇所を指差しながら)、“Twitter好きの社長さん相手には、Twitter戦略が効きます”みたいな話を書いているのですが、あえて“日頃からTwitterを見ることが習慣化しているツイ廃社長”と書きました。「ツイ廃社長」という表現もちょっとしたフックです。
中山:ツイ廃社長……ジワジワ来ますね(笑)。
枌谷:小手先のメソッドですが、言葉選びについてちょっと余談を重ねますと、キッコーマンのコーポレートスローガンは「おいしい記憶をつくりたい。」なんですが、これってすごくいいフレーズだな、と思ってます。
中山:これも“引っかかり”を感じますね。
枌谷:「おいしい」も「記憶」も見慣れた単語ですけど、「おいしい」と「記憶」が結びついた言葉は珍しい。だから、「おいしい記憶」って言われるとちょっと引っかかる。
中山:パンチライン感が出ています。
枌谷:たとえば、「おいしい食べ物をつくりたい。」とか「おいしい食卓をつくりたい。」だと当たり前で印象に残らない。誰でも知っている言葉だけど、あまり使われたことがない組み合わせだと、不思議な雰囲気が生まれます。しかも、メーカーである彼らがこれを言うのはすごく自然だから、文脈的にも美しい。さすがプロの仕事は違う、と感心します。
中山:専門的な解説から個人的なエピソードまで盛りだくさんなお話、ありがとうございました。とても有益で勉強になりました。私も精進いたします!
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