クソリプにも「どうぞご自由に」というスタンスで
中山:前回は、主にBtoB領域での『独自性の発揮のコツ』について聞かせていただきました。今回は趣向を変えて、枌谷さん個人について掘り下げさせていければと思います。
枌谷さん(以下、枌谷):お、どんなことでしょう?
中山:いきなりで恐縮ですが、炎上させてしまったご経験ってあります?
枌谷:炎上をした経験は自分ではないと思っているのですが、変なリプライが湧いてくるとか、そういうのはたまにありますね。
NTTデータ→制作会社×2→フリーランス→起業して現職。得意分野はBtoBマーケ&デザインと業務システム/SaaSのUIデザイン。経営、営業、企画、人事、広報、講師、ブログまでやるなんでも屋だが基本はデザイナー。
Twitter @sogitani_baigie
中山:たとえばどういったときでしょうか?
枌谷:「Twitterではなるべく愚痴は控えたほうがよい」と呟いたときとか。
中山:いたってまっとうな主張じゃないですか?
枌谷:Twitterで愚痴を書くと、仕事でつながっている人から「こんな愚痴を言うんだ……」とか「自分のことも愚痴られそう……」と思われたりとか、マイナスしかないよねって意図で呟いたら、批判的なリプが集まってきたことがあって。
中山:「愚痴めいたツイートだってストレス発散の一つでしょ」みたいな反発ですか?
枌谷:ええ、「あなたがTwitterの使い方を決めるな」みたいな。Twitterって字数が限られているので、詳しく書けなかったり、文脈的に大事なワードを削ってしまったりすることがあるんですよ。このときも「仕事で使うなら」が前提だったけれど、そのワードを含めなかった。それで、プライベートで裏垢運用している人の愚痴も批判した形になってしまい、反発されたのだと思います。
中山:それ、外野が噛み付いただけですよね。「俺は違う」「私はこう思う」って言い合うのもTwitterの醍醐味ですけど。
枌谷:反論そのものは別に構わないと思っていますよ。ブログでもバズると、批判的なコメントや反論は必ず来ますし、ネガコメはバズったことの証なところもあります。個人的な感覚ですが、ネガコメが3割くらいまでなら許容範囲、それを超えるとちょっと書き方がマズかったのかも、って気はします。批判が5割を超えてくると、そもそも人を怒らせている書き方をしている可能性が高い、とか。
中山:Twitterで絡まれたときって、リアクションはするんですか?
枌谷:いえ、何も。「どうぞご自由に」というスタンスなので。
中山:書けば書いたでまたそれに対して絡んでくるからなぁ……。余談ですが、「うなぎ食べたってツイートして、『うなぎは絶滅危惧種だ』っていうアンチが来るようになったらインフルエンサーになった証拠」ってどこかで読んで、言い得て妙でした。
枌谷:社外秘の情報を出すとか、特定個人を誹謗中傷は完全にNGだし、社会人としての倫理観、職業人として守るべきことは守らないといけない。でもそういう最低限の配慮さえあれば、批判を恐れずに書く姿勢は大事だと思います。そもそも、私はネット上のコミュニケーションを20年以上やってきて、トラブルもそれなりに経験してきたので、見ず知らずの人の批判にそんなに心がざわつかなくなっているというのもありますけど(笑)。
「普通の人」だから書けることがある
中山:「内向的な人は文章執筆に向いている」って持論があるんですが、共感していただけますか?
枌谷:内向的な人って頭の中で1個のことをずっと考える傾向がありますよね。それを言語化すれば優れたコンテンツになりやすい気がします。個人的な観測範囲のことですけど、おもしろいコンテンツを書ける人ってオタクっぽい人が多い気がしませんか?
中山:します! 独自性に富んだコンテンツを会社として生み出したいなら、オタク属性が強めの編集長や編集者でチームを作るとか、アリかもですね。
枌谷:熱量が高く、オタクっぽく、内向的で、常日頃から頭の中でいろいろ考えていて、しかも意外と承認欲求と人に伝えたいって欲求が強い人は、文章執筆に向いているかもしれません。ただ、そういう人って「書きたい!」と立候補しない可能性が高い。なぜなら、そもそも内向的なので。だから誰かが才能を見つけて引き上げる必要があるかもしれません。
ところで、私からも質問なんですが、自分では「独自性が高いコンテンツを作ろう」という意識があまりなく、ただ日々書きたいことを書いているだけなんです。なぜ私が「独自性がある」という印象を持ってくださったんですか?
中山:なぜだろう……? 枌谷さんの文章って淡々としていて尖った物言いをしないのに、不思議と強い主張が伝わってくるのが普通と違うなって感じたから……ですかね。
枌谷:記事やテーマの独自性というより、伝わりやすさなんですかね。熱量を込めることにはこだわっているので、そこもあるのかもしれないです。
中山:ご自身を「非凡な存在」って思いますか?
枌谷:いいえ、ごく普通の人だと思っています。SNSをやっていると、「ああ、脳みその出来が違うな……」と思う人がたくさんいて、自分の発想の凡庸っぷりを思い知らされますね。
ただ、そこは割り切って、普通な人ならではの戦い方をしているところがあります。「普通の人=マジョリティ」ですよね。だから、普通の人の感性でコンテンツを作った方が共感されやすいと思うんです。独創的、個性的な人は、逆に共感されにくいので、少なくともオウンドメディア向けのコンテンツなどの世界では、もしかしたら不利かもしれない。ただ、こういう風に、普通の人間であることを前向きに捉えられるようになったのは、30代後半になってからですかね。
中山:ご自身が普通であることで、プラスに働くことってどんなときでしょう?
枌谷:たとえば、イベントで話しかけてくれる20代前半の方とかいらっしゃるんですけど、それって多分私が「普通」で「ちょうどいい位置にいる」からだと思うんですよ。雲の上の存在じゃないから、年齢は随分離れていても、気さくに声をかけてくれる。こういうところも、「普通の人」であることのメリットだと思ったりします。