ビジネスをさらに加速させる3つの新機能
日本の月間アクティブアカウント数が3,300万を突破し、ビジネスにおいても外せないメディアとなったInstagram。イベント当日の会場は、1,200名以上の業界関係者で賑わった。冒頭に登壇したのは、Instagram製品部門の責任者であるヴィシャル・シャー氏。
「視覚に訴えるInstagramでは、実際に来店させる、購買を促すといった行動を喚起することができます。日本の利用者の83%がInstagramを見て行動に移したという調査結果もあります。ビジネスでもさらにご活用いただけるよう、Instagramはイノベーションを続けています」と語り、Instagramが特に注力するビジネス向けの新機能を紹介した。
まず、虫眼鏡のアイコンをタップすると表示される「発見タブ」への広告出稿が可能になったこと。発見タブには、利用者がフォローしていないアカウントの投稿が、興味・関心に基づきパーソナライズされて表示されている。新しい情報を求めているオーディエンスにリーチできるという利点がある。月間アクティブアカウントの半数がこの発見タブを見ているという。
2つ目は、ストーリーズ広告でもカルーセル形式、そして「アンケートスタンプ機能」や「絵文字スライダーステッカー」といったインタラクティブな要素を取り入れられるようになったこと。利用者のオーガニック投稿に近い形にすることで、広告をより魅力的なものにすることができる。
3つ目は、ショッピング機能のアップデート。たとえば、米国でテスト中の機能では、発売日タグが設定できるようになり、新商品のローンチに使えるようになった。利用者が発売日のスタンプをクリックすると、リマインダーを設定できる。先行してアディダスがドナルド・グローバーとのコラボシューズ発売の際に利用したところ、発売後3分で完売となった。Instagram上での買い物体験を向上させるために、ARによって化粧品や洋服を試せるという機能も開発中だ。
さらに、アメリカ以外で初めて、日本にもプロダクトチームを作った。シャー氏は、「日本の利用者がどのようにInstagramを使っているのかを理解してプロダクト開発に役立てていきたいと考えています」と意気込みを話す。
Instagramは若年層のマスメディア
続いて登壇したFacebook Japan執行役員 営業本部長の鈴木大海氏は、「若年層マーケティングに悩まれている広告主様は多いですが、若年層の方にとってInstagramはマスメディアになっていると捉えています」と語り、それを裏付けるデータを紹介した。
若年層(18〜29歳)が1ヵ月間でInstagramに接触している総利用時間は1億時間以上になり、2017年と比較して201%の伸びとなっている。起床から就寝まで一定の利用があり、ほぼすべての時間帯でInstagramが使われているそうだ。
また、若年層の検索行動は、“ググる”から“タグる”が主流になりつつあるとも話す。Instagramは自分の好きなことに関連する情報を発見し、出会う場になっているのだ。ビジュアルから入ることで、自分の感性に合うものを見つけやすいのだろう。たとえば、好みのネイルサロンをハッシュタグや立地などから絞りこみ、店が決まったらその中からやってもらいたい作例を保存し、店頭で見せてオーダーするというような使い方がされている。
「発見から、行動につなげることができるのもInstagramの強みです。若年層利用者の85%がInstagramの投稿を見て何かしらの行動を取ったと回答しています。もはや若年層にとって欠かせないメディアになっています」と鈴木氏。
ストーリーズについては、日本では1日に700万件投稿されていて、これは映画の尺に換算すると10,000本分にもなるという。日本は世界有数のストーリーズ大国だそうだ。デイリーアクティブアカウントの70%がストーリーズを利用し、Instagramの成長を牽引している。また、グローバルで最もよく見られているストーリーズのうち、ビジネス投稿の割合は3分の1を占めている。
ブランディング活用で大切な2つのポイント
続いて登壇したのは、Facebook Japanでクライアントソリューションマネージャーを務める竹林明日美氏。
「すべてのブランド担当者の方に考えていただきたいことが2つあります。まず、ブランドのアイデンティティを定義すること。Instagram上でどんなキャラクターがどんなメッセージを伝えていくのかです。2つ目は、ビジネスにおけるInstagramの役割を定義することです」と竹林氏は話す。
ブランドのキャラクターとInstagramアカウントから発信するメッセージの方向性を決めたら、それをプロフィールページに落とし込んでいくことが大切だ。それがInstagramにおけるブランドの顔となるためだ。プロフィールページは作ったらそれっきりにせず、新商品リリースのタイミングなどで定期的にアップデートしていく必要もある。というのも、プロフィールページにアクセスする人の3分の2が非フォロワーであり、多くの人がここを見てアカウントをフォローするか決めているからだ。
数百種類以上あるシグナルの中で重要なもの
さらに、竹林氏はファンを獲得した後のコミュニケーションのヒントとなるInstagramのアルゴリズムについて紹介した。Instagramには、大きく分けてフィードとストーリーズがあるが、どちらも利用者の日々のアクションをシグナルとして集め、計算の上で優先的に表示されるものを決定している。
数百種類以上あるシグナルの中でも重要なのが、興味関心と関連度の2つだ。前者は、コンテンツへの関心度の高さをスコア化したもので、後者はアカウントとのつながりの深さを視聴履歴やアクションを基に計算している。竹林氏は、「これらを踏まえ、楽しんでもらえるようなコンテンツを戦略的に配信していき、より多くのコンテンツで、より長い時間接点をもつことが大事です」と説く。
そのための具体的な方法として、まず投稿に統一感をもたせることを挙げた。ブランドが複数ある場合は、それぞれのブランドのキャラクターを統一させ、ブランドごとにオーディエンスと適切なコミュニケーションを取るために、アカウントもそれぞれ用意するのが良いという。そして定期的に投稿することで、シグナルを安定的に貯めていく。また、ビジネスプロフィールの機能を利用することで、インサイトで投稿の反応を見て質を上げていくことや、コメントにはできる限り反応して双方向のコミュニケーションを取ることも大切だ。
ストーリーズはブランドをより身近に感じてもらえる場所で、フィードに比べてカジュアルでよりインタラクティブなコミュニケーションが適している。たとえばセールや季節ネタなど期間限定的なお知らせや、完成された広告よりは、撮影の舞台裏、NGシーンなどより利用者が自分ごと化しやすいコンテンツと相性が良い。アンケート機能やライブ配信時のコメントで利用者とコミュニケーションをとり、シグナルを溜めることもできる。
そして、既存のフォロワーにもリーチを広げるためには広告が効果的だ。Instagramでは、新たに「ブランドコンテンツ広告」をはじめたという。通常のインフルエンサーマーケティングにターゲティングを組み合わせたものだ。これにより、企業はより多くの、そして狙い通りの利用者に絞ってコミュニケーションしていくことができる。
資生堂「レシピスト」では2つのアカウントを運営
ゲストとして資生堂ジャパンの服部裕子氏とセールスマーケティングのトータルサポートを手がけるテテマーチの三島悠太氏が壇上に招かれ、Instagramをブランディングに活用した事例として、スキンケアブランド「recipist(レシピスト)」のケースが紹介された。
「レシピストは20代前半の女性を主なターゲットとしています。20代女性にヒアリングしたところ、多くの方の行動としてスマホは必ず手にあり、特にInstagramは毎日使っているということでした。そのため、メインの接点となっているInstagramを中心に置くことにしました」と服部氏。
そして、エンゲージメントを高めることを目的とした公式アカウントと、それとは別に、認知を目的とした「たおりゅう」というキャンペーンアカウントの2つを立ち上げることにした。レシピストの全体的な広告宣伝企画とたおりゅうアカウントの運用については博報堂が担当し、公式アカウント運用をテテマーチが担当している。
「公式アカウントは、商品訴求だけでは飽きられてしまうので、毎月テーマを設けて、女性の1日を描いています。そうしたシーンと商品紹介と半々くらいで投稿しています」と三島氏。
一方、博報堂で運用しているプロモーション目的のたおりゅうアカウントは、架空のカップルとして、女優の土屋太鳳と俳優の横浜流星を起用している。これは、友達のカップルアカウントをフォローしているように感じさせ、20代女性の共感を得るためだという。また、レシピストの記者発表会をInstagramでライブ配信したことでも話題を集めた。
Instagramを中心に設計したクロスメディア戦略
レシピストでは交通広告も活用したが、そこからもInstagramにつなぐ設計をしたという。
「駅広告もすべてスマホで撮った縦長の写真を使い、コピーにハッシュタグをつけることで、Instagramをイメージしたデザインにしました。また、エリアによって写真を変えることで、『うちのエリアではこんな写真だった』と利用者が投稿したくなるような設計をしました。その結果、期待以上の認知を獲得できました」と服部氏。
竹林氏は、テレビだけでは若年層のリーチが難しくなってきており、SNSを併用したいという広告主も増えてきている多いと語る。そして、InstagramやFacebookを併用することで、テレビよりずっと少ない予算でリーチが拡大できるというデータを提示した。これによると、テレビに1億円投資すると20~34歳男女のターゲット層に対して40.7%のリーチが獲得でき、加えて1,000万円の予算でInstagramとFacebookを併用すると、重複を除いた純リーチが14.1%増えたという。
また、Instagram広告に使用する画像は、フィードの中でエンゲージメントの高いものを選ぶということもした。
「Instagramは自分の好きなものだけが表示されるメディアなので、ブランド目線でメッセージを入れてしまうと、その瞬間に嫌がられてしまいます。ターゲットに寄り添って共感を得ることを一番に考え、そのあとにブランドの伝えたいことや広告を少し入れるというように配慮しました」と服部氏は語る。
ブランディング目的のInstagram活用について竹林氏は、「フェーズによってやるべきことが変わっていく」とし、マスメディアを含めたコミュニケーション戦略の設計が重要であることを強調した。