営業不振から一転、コミュニティに活路を見いだす
――freeeに入社してから、コミュニティマネージャーになるまでは、どのようなお仕事を?
2016年12月に入社し、研修も兼ねた数ヵ月は、全国のお客様を対象に電話やメールによるインサイドセールスを担当していました。翌年の春からは、地域に密着するフィールドセールスとして、名古屋を中心に中部地方を任されたのですが、人生で最も不調の時期に陥ったんです。契約がまったく取れず、自分の存在意義すらも見失ってしまう状況でした。名古屋には、プロダクトの良さを理解はしてくださっても、「身近な知人が使っているか?」が、意思決定に大きく影響する地域性があります。どうしたらいいかとかなり悩んでいたのですが、ふとコミュニティを作ってみようと思いつきました。
まずは、freeeをとても好きだとおっしゃるお客様を誘って、freeeの紹介やアップデート、他のツールとの連携などをお話しする、懇親会中心のセミナーを行いました。「お友達を連れてきてくださいね」と声をかけ続け、4回ぐらい開催した頃に、ある出来事が起きました。コミュニティに参加していた会計士さんから、「freeeを友達に薦めておいたから」と連絡をいただいたんです。アポを取ろうと連絡すると、提案する前から「川﨑さんがオススメするツールをすべて買います!」と言われ、5分で商談が終わってしまいました。その後も、お客様の紹介や口コミからの契約が続き、新規の契約数が全国で1番になったのです。本当に、お客様に助けていただきました。
――コミュニティを作ろうと考えたきっかけは?
実は、証券会社時代の経験がきっかけです。入社1年目の時、私は新規口座の開設を開拓するにあたり、担当していた地域の住宅すべてに、名刺を配って歩いていました。すると、ある女性が新規公開の株式を買ってくださったんです。さらに、「お友達を紹介しますね」と、その方が何人も紹介してくださり、一気に新規契約をいただくということを経験しました。やはり、知人による紹介や口コミには安心感があるんですよね。そのときのことを思い出して、freeeでもコミュニティを作ろうと考えたのです。
会社を説得し、コミュニティマーケ専任に
――営業での成果を評価され、名古屋も引き続き担当しながらマーケターとして再び東京本社に戻られました。しかし、すぐにはコミュニティマーケティングの仕事ができなかったとか。

はい。実は、会社と私の間でコミュニティマーケティングに関する価値観のズレがあったんです。名古屋にいた頃から徹底していることですが、コミュニティでは営業をしてはいけないと考えています。ですからコミュニティマーケティングは、中長期で運営をする必要があるんです。もし、「今月はコミュニティから3件の契約を取る」というKPIがあったら、提案したくなりますよね。すると、ビジネスライクになってしまい、コミュニティは壊れてしまいます。目先の結果を追ってはいけないのです。とはいえ、会社はスピーディーな成長が必要な時期ですから、3ヵ月単位で投資判断、投資対象が変わります。会社からは、中長期で考えるのは難しいと言われたのですが、私は諦めるつもりもなく、まわりを説得しようと動きました。
まずは、上司と毎週1on1ミーティングを行い、コミュニティマーケティングにどんなビジョンがあるかを伝え、それに対するアクションや進捗を4ヵ月間ずっと伝えていました。また、一緒に働くメンバーに向けても、朝会でコミュニティチームの取り組みを継続してプレゼンしていました。そして、社長の佐々木にも直接訴えていましたね。フロアで見かけたり、エレベーターで会ったときに、マジカチのステッカーを渡したり、コミュニティチームの活動を伝えていたのです。これらの活動を、通常の業務と並行して進めているうちに、熱意が認められました。2018年夏頃から、コミュニティマネージャーの業務に専任できています。
――コミュニティ運営のポイントを教えてください。
ユーザーが自走するコミュニティになるよう、企業がサポートすることですね。私が担当する「freee“マジカチ”meetup!」は、主に会計士や税理士のfreeeユーザーを対象としたコミュニティです。freeeの活用を通して、「本質的に価値のある“マジ価値”なサービス」を提供し、世の中も会計業界も良くしていこうという志のもと、集まっています。北海道から沖縄まで、全国6ヵ所にコミュニティがあり、現在広島のコミュニティを立ち上げているところです。
地域によってアジェンダは変わりますが、基本は3、4名の方に10分ほどのライトニングトークをしていただき、情報交換を行います。また、段ボールでできた「えんたくん」と呼ばれるコミュニケーションツールを使って、ワークショップも行います。えんたくんは、みんなで円になって座り、膝の上に置いて使います。すると、物理的に距離が近づいて会話がしやすくなり、すごく盛り上がるんですよ。そうして、参加者同士のコミュニケーションからの気づきを付箋にしてえんたくんに貼ったり、ツイートしたりとアウトプットにつなげます。
私が考える自走するコミュニティとは、自分たちですべて動くこと。マジカチの場合は、各コミュニティのリーダーたちが、開催日や実施概要すべてを決めています。freeeサイドは、相談にのるなどのサポートはしますが、実務や費用などの負担もすべてコミュニティ内で対応しています。参加者の自分ごと化が、自走するコミュニティのポイントですね。
