9,300万超のIDデータを保有
2020年3月1日現在128社、183ブランド、約22万店舗が加盟している国内最大級の共通ポイントサービス「Ponta」。9,300万人を超える会員の実利用データを一元管理している。
会員登録時の基本属性データ(性別、年齢、居住エリアなど)をはじめ、アンケートなどで取得されるライフスタイルデータ、Pontaカードから得られる消費データや利用履歴、定期的に行っているポイントプレゼントキャンペーンにおける参加頻度や反応率など、多彩なデータが集められている。
それらのデータがIDベースで紐づいているので、ターゲットの人物像を特定しつつ、プロモーションを実行し、施策の効果検証、次の打ち手を分析していける点が、他社との差別ポイントだ。
また、ユーザーがアクティブかが常に把握でき、Webの行動履歴だけではなく、リアル店舗に足を運んだかまで計測できる点も大きな特徴である。
ファクトデータが持つ3つの力
ロイヤリティ マーケティングでは、そうしたリアル行動から取得できるPonta IDのデータ=「ファクトデータ」を活用したマーケティング支援を行っているが、その強みは「見つける」「届ける」「わかる」の3つにある。
1つ目は「見込み客を見つける力」。前述したPontaデータから、クライアントにあわせて見込み客を精緻に見つけていくが、「Ponta AI」という分析基盤も構築しているので、より精度を高められる。クライアント案件の制作ディレクションや調査分析を担当している森角敦氏は、「見つける力」がもたらすものについて以下のように語る。
「現在は、機械学習が行う自動分析とアナリストによる手動分析を照らし合わせて、どちらが効果的なのかを分析。その結果は機械学習にも反映させています。機械学習も活用することで、アナリストが発見できなかった示唆も出てくるのは強みになると考えています」(森角氏)
2つ目の「メッセージを届ける力」は、最大5,000万件と圧倒的なリーチ規模を誇る郵送DMをはじめ、メール、Pontaカード(公式)アプリ、Webディスプレイ広告など、オンライン・オフライン横断したアプローチが可能になる力。許諾の取れたのべ8,000万ID以上に対しリーチすることができる。
特に郵送DMは、許諾も取れており詳細なセグメントを行っても充分なボリュームを確保できる。シニア層に対してもアプローチできるメリットがあるという。
3つ目の「消費行動がわかる力」では、リーチしたPonta会員のIDを管理することで、実際にモノが買われたかを計測できる。データを組み合わせ分析することで、ネクストアクションを示唆する。これについては、Web施策であっても、コンバージョンのインセンティブをPontaポイントにすることで、ID把握が可能になる。
「最近『Cookieを活用した施策ができなくなるかもしれない』という悩みをよく耳にしますが、Pontaの場合、許諾の取れた会員IDベースでアクションを把握しているため、明確な利用許諾のないCookieに依存せず正確なコンバージョン数が把握できます」と、同社で営業を担当している吉崎愛氏は話す。
さらに、吉崎氏によれば「オンライン上のデータが取得できなくなった場合にも、コンビニやドラッグストアなどの利用データを活用することで、アクティブなユーザーを把握できる」という。Pontaがリアル店舗で貯まるポイントサービスとして誕生しているからこそ、生まれた強みと言えるだろう。
「はま寿司」事例に学ぶ、IDデータのパワー
では実際に企業の課題に対して、ロイヤリティ マーケティングが持つ「データ」と「広告メニュー」がどのように解決できるのか。寿司チェーン「はま寿司」で実施したプロモーション事例をもとに説明する。
はま寿司が抱えていた課題は、客単価を上げること。同時来店者を増やすことにあった。夫婦や子連れファミリーだけではなく、祖父母・親・子の「三世代ファミリー」がターゲットだ。親・子の世代にはPontaディスプレイ広告やPontaカード(公式)アプリといったデジタル媒体でリーチし、来店ポイントのプレゼントキャンペーンにより来店を促すことはできる。しかし、必ずしも同時来店者を増やすことにはつながらない。
そこで、ターゲットを「祖父母」に設定し、シニア層に受け入れられやすい郵送DMを選んだ。しかし、普通に郵送DMを送っただけでは、回転寿司の客単価に対してコストが見合わない。そのため、祖父母が親・子を連れて来店することで客単価を高める企画を検討した。
そうして完成したのは「大人も子どもも楽しめるDM」。はま寿司のブランドロゴにある“波”をモチーフに、葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」になぞらえたデザインとした。シニア層の心をくすぐり開封を促すのが狙いだ。また、寿司ネタと魚を対比させる食育ゲームも兼ねている。イクラのネタと鮭の絵柄を対比させ、子供が楽しみながら学べる。DMを開封すると、中から出てくるのはビンゴカードだ。
「郵送DMはお得な箇所を大きく訴求するのが一般的ですが、そうなると受け手に広告感が伝わりすぎてしまう。そこで広告感をあえて押さえ、手に取ってもらうためのインパクト作りを意識しました」と、DM制作のディレクションを担当した森角氏は説明する。
はま寿司に来店して、お寿司などを食べると、条件に応じてビンゴがめくれるようになっている。めくれる条件は「●●円以上のお皿」「サイドメニュー1品」など。ビンゴとレシートをDMに同梱された返信用封筒に入れて投函すると応募が完了する。ビンゴの列数に応じてインセンティブがもらえるようになっており、最大500Pontaポイントがプレゼントされる仕組みとした。
このような仕組みにした理由に関して、DM商品の企画などを担当している鈴木悟氏はこう語る。
「ビンゴゲームにしたのは、一人でリピートする、サイドメニューを追加してみる、三世代家族で一緒に行って一度でコンプリートするなど、様々な形に対応できると考えたためです」(鈴木氏)
DMの送り先は、Pontaリサーチ結果や行動データから3世代ファミリー層かどうかを把握し、ある程度シニア会員に絞った。
かつ、より効率を高めるために、はま寿司店舗の近辺で別のPonta提携企業を使ったことがある人や、商圏内に居住しているが来店経験がない人をはじめ、過去のキャンペーンで好反応を示した人、Pontaのアクティブユーザー、過去オンライン施策をしても反応しない人の抽出もしていった。
三世代ファミリーの中で祖父母にあたるシニア会員を狙った理由に関して鈴木氏は「シニアに対するリピートの訴求、家族で来店する動機を作ることでLTVを高め、はま寿司さんからの要望も満たせると考えたからです。ビンゴにしたのも、シニア層には手で触れるアナログな手法が好まれるためです」と回答した。
DM到達者の13%が来店、1回あたりの単価も向上
そうしてできた6~7パターンのセグメントに対してDMを送付した結果、全体としての新規顧客の来店率は6%、最も効果が高そうと仮説を立てていたセグメントだけに特化すると13%となった。
「DMを通じて足を運ぶというハードルに対して、1%を超えると成功と言われる中で、6%というのは非常に良い結果だと思います」(鈴木氏)
ビンゴ施策だったこともあって1回の顧客単価も増え、キャンペーン期間中のリピート率が高かったことも高く評価された点だという。
好結果の理由として、吉崎氏はPontaのマスコットキャラクター「ポンタ」の活用と、Ponta会員の帰属意識の高さも関係しているのではと語る。
「DMの封書面にポンタがあしらわれていることで、キャラクターへの親しみや、発送元の安心感を担保でき、開封率の向上に貢献していると考えています。加えてPonta会員は、日々のお買い物の中で会員であることへの意識が強く、こうしたキャンペーンなどに対する興味関心や参加意欲が一般的に高いと分析しています」(吉崎氏)
今回は試験的な取り組みであったことから、関東1都3県での実施となったが、一番良い反応が得られたセグメントを全国に広げた場合、全国で数十万件の質の高いPonta会員に対しアプローチできるという。
ファクトデータマーケティングをワンストップで提供
このように企画からデザイン、データセグメント、来店などの効果検証までワンストップで代行できるのは、ロイヤリティ マーケティングの持つファクトデータによるマーケティングの特徴と言えるだろう。
「特にDMは1通あたりの金額も高く、紙のクリエイティブを作る知識と手間が必要になる上に、広告効果の可視化が難しいメディアです。対して当社にはDM企画からデザインまで対応するチームがあり、さらにPontaカード提示によってコンバージョン(来店/購入)が可視化できる。クライアントに手間をかけさせません」(鈴木氏)
今回DM施策を行ったはま寿司は、Pontaポイントが利用できる提携企業だったが、提携していない企業でも同様の施策はもちろん可能だ。許諾を含めてきちんと管理された個人情報による会員データとなっているので、新規獲得から既存顧客のCRMまで様々な用途での活用が期待される。
ファクトデータを強化し、失敗しないプロモーションを
最後に、今後Ponta IDを活用したマーケティングをどう進化させていきたいか、3名の考えを語ってもらった。
まず、吉崎氏は「IDベースで過去の様々な広告反応結果データを持っているので、事前のシミュレーションがCPAレベルで可能」とした上で、「IDベースのファクトデータの質と量をより強固にし、失敗しないプロモーションを実現していきたい」という。
「たとえば消費財メーカーであれば、消費データをファクトデータとし、購入商品に関連した商品の訴求が可能です。加えて、ターゲットのニーズに合わせたタイミングでアプローチしていくといった広げ方も考えられます。一方で保険や不動産など、人生で数回しか検討タイミングがない業界においては、行動データ、利用チャネルや利用金額をもとにアルゴリズムを作って中長期的なアプローチを行うなど、各業界に合わせた提案を行っていきたいです」(吉崎氏)
続いて鈴木氏は、現状のデジタル施策における限界についてコメントした。
「デジタルはアドベリフィケーションの問題やcookie計測の限界などもあり、壁にぶち当たっている方もいると聞きます。我々はデジタルに加えてDMのようなリアルチャネルを含めた支援ができるため、そうした悩みを解決していきたいです。また、IDベースでデータが蓄積され続けるのが我々の強みだと思っているので、そのデータを活用した提案に引き続き取り組んでいきます」(鈴木氏)
最後に森角氏は、調査分析担当者の目線から今後の展望を語った。
「クライアント企業の多くは、DMやメール、分析・調査など施策単位で部署が分かれていますが、我々はどの部署の方に対しても提案することができます。マーケティングで困っていることがあれば、それに対応できる幅広い打ち手があるということを、より多くの方に知ってもらえる活動をしたいです」(森角氏)
2020年3月に10周年を迎えたPontaは、これから様々な業界と新たな取り組みをしていくという。Cookie規制の話題に限らず、その動向に注目が集まりそうだ。