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デジタルシフトで「岩が動いた」、才流・栗原氏が語るBtoBマーケティングの最重要課題


 BtoBマーケティングをリードする才流の栗原康太氏は、新型コロナウイルスの影響でビジネスが大きく様変わりしたと言います。デジタルシフトが加速する中で、栗原氏が感じている変化の核心に迫りました。

この1、2か月で顧客の課題感がまったく変わった

――栗原さんは、BtoBマーケティングを牽引する新しい世代の代表として注目を集めています。今日はご自身のキャリアから新型コロナウイルスの影響にいたるまで、幅広くお話をうかがいたいと思います。

栗原:自己紹介も兼ねてちょっと昔の話をしますと、私はガイアックスというIT系の上場企業に、2008年ぐらいにインターン生として入社しました。ガイアックスは1999年に創業して、2005年に上場したのですが、それ以前はゴリゴリの営業会社として知られていたようです。

 一方、私が入社した2008年頃はウェブからのお問い合わせ獲得に会社をあげて取り組んでいて、SEOやリスティング広告のキーワードをどう選ぶか、サイトをどう直すか、どんなコンテンツを作るかといった改善をしていく中で大きな成果が出ていた頃でした。ガイアックスはその手法を外販してBtoB企業がインバウンドで経営が成り立つように支援する事業も始め、私は入社と同時にそのプロジェクトに加わりました。最終的にはその事業責任者になり、独立して現在に至るという感じです。

栗原 康太氏株式会社才流 代表取締役社長1988年生まれ、東京大学文学部行動文化学科社会心理学専修課程卒業。 2011年にIT系上場企業に入社し、BtoBマーケティング支援事業を立ち上げ。事業部長、経営会議メンバーを歴任。2016年に「才能を流通させる」をミッションに掲げる株式会社才流を設立し、代表取締役に就任。カンファレンスでの登壇、主要業界紙での執筆、取材実績多数。
栗原 康太氏
株式会社才流 代表取締役社長

1988年生まれ、東京大学文学部行動文化学科社会心理学専修課程卒業。
2011年にIT系上場企業に入社し、BtoBマーケティング支援事業を立ち上げ。
事業部長、経営会議メンバーを歴任。
2016年に「才能を流通させる」をミッションに掲げる株式会社才流を設立し、代表取締役に就任。
カンファレンスでの登壇、主要業界紙での執筆、取材実績多数。

――栗原さんが2008年にインターンとして入社したときには、インバウンドマーケティングはすでに主流だったのでしょうか。

栗原:私が入った2008年は半々ぐらい。移行期みたいな時期でした。なので、私も1日100件ぐらいのテレアポを1年ぐらいやっていました。全然売れませんでしたが(笑)。

 移行期だったので、ウェブからの問い合わせは非常に増えていたけれど、まだ上場企業の従業員全員を養えるほどの問い合わせはありませんでした。テレアポをしながら、ウェブでの問い合わせにも対応するという状態が2008年ぐらい。2010年ぐらいからは、もう誰もテレアポはしなくなったという感じでしたね。

――私は2012年からこの業界に関わっているのですが、ガイアックスはスマートな営業をする会社というイメージだったので意外でした。そうした変化を体験してきた今、「営業」という仕事についてどのように分析されていますか。

栗原:マクロで見ると減っている職業ですよね。そもそも販売員やセールスパーソンというのは労働人口の中で減少傾向にあり、BtoBでもミスミやMonotaROといったECサイト、Sales Techと言われる領域の各種サービスやデジタルマーケティングに取って代わられている。医療分野でも、MR(医薬情報担当者)はエムスリーの「MR君」が代替するようになってきました。

 お客さんが自分で情報収集して、問い合わせをして、営業担当者は最後に価格交渉や導入までのサポートをする。商材が安価であれば、お客さんはECサイトやセルフサーブのユーザー登録で直接買ってしまうという方向に、今後5年、10年というスパンでさらに変化していくと思います。

――マクロでの変化もありつつ、新型コロナの感染拡大、緊急事態宣言による外出自粛がビジネスに大きな影響を与えています。栗原さんと才流にとっては、この1、2か月でどのような変化がありましたか。

栗原:才流はBtoBマーケティングのコンサルティング会社としてスタートしました。「BtoBマーケティングを強化したい」「予算はあるけれどノウハウがないので、アドバイスに入ってほしい」というのが、才流が呼ばれる大きな理由でした。

 でも新型コロナで残念ながらそうしたニーズはすべて吹っ飛んだ。そんな話はなくなって、どうなったかというと、「展示会、セミナー、テレアポでのリード獲得が厳しくなったから、オンラインマーケティングでリードを取りたい」、あるいは「営業の組織に何十人、何百人と人員がいるけれど、Zoomを使ったことのないメンバーが多くてどうしたらいいだろう」という相談ですね。

 とにかく非常に切実にオンライン化、デジタル化したいという話に相談内容がガラっと変化しました。なので、真っ先に自社サイトのメッセージや売り物を全部変えて、とにかく「BtoBの営業とマーケティングをオンライン化、デジタル化する支援をします」という内容に差し替えました。

――実際にコンテンツを差し替えるまでどのくらいかかったのですか。

栗原: 2週間ですね。4月6日にコンテンツを差し替えたのですが、こうした戦略のシフトによってより多くの企業の課題を解決できると思いました。デジタル化、オンライン化に伴って発生する疑問に答えるコンテンツをすぐに複数個作成して、ウェビナーも急いで準備して、サイトのキャッチコピーも変えました。そんなこんなで2週間くらいでサイトがガラっと変わりました。

ウェブサイトの方針転換後にも続々とコンテンツが追加された。
ウェブサイトの方針転換後にも続々とコンテンツが追加された。

――オフィスの解約もされましたよね。

栗原:はい。きっかけは、「マイクロソフトが来年7月まで社内・社外のすべてのイベントをオンライン開催のみにする」という記事を読んだからです。新型コロナ関連のデータを見ていて、この状況が長引きそうだなという感覚を持ってはいたのですが、この記事を4月8日に見つけたときに、マイクロソフトの中で優秀な人たちが繰り返し議論をしてこういう意思決定したということは、恐らくもう1年はオフラインの場には密集しない方向なんだろうなと考えて、すぐオフィス解約の連絡を入れました。

――戦略のシフトによって、新規顧客の業種などは変わりましたか。

栗原:大きく変わりました。当初は資金調達をしたSaaSの会社や大企業の新規事業部門が私たちの顧客でしたが、戦略をシフトしたあとはいわゆるエンタープライズ、今まで展示会とイベントとパンフレットを使って、既存顧客に繰り返し営業をかけていて、デジタルマーケティングの経験やノウハウが少ない大企業から問い合わせがくるようになりました。

 これはかなり大きな変化で、これまでデジタルに投資しなかった人たちが、ついに動き出したなという感覚です。最初にお話ししたとおり、2008年ぐらいからデジタルを使ったBtoBマーケティングによる案件獲得を繰り返してきましたが、そういう施策を全然やっていないのに1兆円の売上がある会社っていっぱいあるじゃないですか。

 なぜ、こういう企業は動かないんだろうとずっと思っていました。やれば成果が出るのに、資金も潤沢にあるから一部だけでも予算をかければすごく効率が上がるのにと。でも、まったく動かなかった。それが今回の新型コロナでついに重鎮たちが重い腰を上げたということですね。

――岩が動いた、みたいな(笑)。

栗原:いや、本当に岩が動きました。それによって、ご相談いただく案件の規模も大きくなっています。

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この記事の著者

井浦 薫(編集部)(イウラ カオル)

MarkeZineで主に書籍を作っています。 並行して、MONEYzineにも力を入れています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/06/08 18:06 https://markezine.jp/article/detail/33381

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