「カスタマーマーケティング」の本質とは何か
みなさん、こんにちは。SmartHRの岡本です。
私はテレマーケティングや店舗型ビジネス、ネット証券でのマーケティング責任者を経て、現在はクラウド人事労務ソフトを提供するSmartHRでマーケティング責任者を務めています。これまでBtoC、BtoB、リアル、ネットと様々な形態のビジネスでマーケティングに携わってきました。
さて、本題のカスタマーマーケティングについてですが、ここ数年で話題に上がることも増えてきました。言葉自体は広がり、具体的な施策についても頻繁に語られるようになってきたものの、言葉の本質的な意味や定義について十分に議論されておらず、その理解や解釈が個々人によってばらつきがあるという課題があります。
今回の取り組みは、カスタマーマーケティング、カスタマーサクセス、マーケティングの3つの異なる視点から「カスタマーマーケティング」を見つめなおし、改めて定義しようというものです。本連載では、これまでカスタマーマーケティング、カスタマーサクセスのそれぞれの第一人者として、長橋明子氏、山田ひさのり氏がそれぞれの視点からカスタマーマーケティングにアプローチしてくださいました。
今回は、マーケティングの視点で、カスタマーマーケティングについて考察していきます。
「カスタマーマーケティング」は新しい概念なのか?
一般的に、カスタマーマーケティングは「既存顧客に対するマーケティングのすべて」と言われており、顧客ロイヤリティの向上(LTV向上、アップセル、クロスセル)、アドボケイト、口コミの促進を目的とした活動のこととされています。
私もそうですが、長くマーケティングに携わる方であれば、これ自体が新しい概念や施策かというと、そうは思わない方が多いのではないでしょうか。
パレートの法則(2:8の法則)が叫ばれだしてから、企業の利益創出には、新規よりも既存顧客への投資のほうがROIが良いとされ、各企業は既存顧客への投資に力を入れはじめました。ポイントカードやクレジットカード業界などのロイヤリティプログラム、紹介キャンペーンがそれにあたりますし、SNS登場以前にも古いものでは主婦層、女性を中心とした口コミマーケティングなど、もはや当たり前のマーケティング施策として、私たちの生活する社会に溶け込んでいます。
当然ながら、マーケティングダブルファネルやCRMなどの関連するフレームワークや思想も既に生まれています。企業によっては、マーケティング部門のCRM担当として、「どうしたらLTVが伸びるか?」「どうしたら単価が上がるのか?」「どうしたら口コミが生まれるのか?」と頭を悩ませながら、既存顧客とのコミュニケーションやキャンペーンやロイヤリティプログラムなどの企画・実施に何年も従事されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。