ニュースの定義を広げてユーザー層は拡大傾向
MarkeZine編集部(以下、MZ):スマートニュースのマーケティングと「LINE広告」の運用についてうかがいます。まずは網谷さんの業務領域について教えてください。
網谷:我々マーケティングチームのミッションは、スマートニュースのアプリユーザーを増やすことです。私はマーケティングマネージャとしてオンライン施策からテレビCMまですべてのマーケティング領域を横断して見ていますが、特に注力しているのがデジタルプロモーションです。
網谷:この2年間の成長を支えてきたのは2018年3月に開始した「クーポンチャンネル」で、全国4万店舗以上(2020年6月時点)のレストランやコンビニなどで利用できるクーポン情報を集めた専門チャンネルです。政治や経済、スポーツや芸能情報などのニュースだけではなく、スマートニュースはユーザーにとって有意義なコンテンツすべての中から、良質な情報を配信するアプリを目指しています。クーポンチャンネルのようにニュースとの接点を増やす新たなコンテンツを立ち上げて新規ユーザー獲得を狙う際、デジタルでのプロモーションは重要な手段として認識しています。
MZ:ターゲットユーザーとしては、どのような層を狙っているのでしょうか?
網谷:クーポンを開始するまでは、政治経済などのニュースを閲覧する頻度が高い比較的年齢の高い男性が中心でした。しかし、クーポンを開始してからターゲットを広げ、若年層や女性ユーザーの増加によって年代は拡大傾向にあり、現在のユーザー属性は日本の人口構成に近くなっています。
マジョリティへの訴求と相性がいいLINE広告
MZ:LINEが幅広い年齢で使われていることを考慮すると、LINE広告はスマートニュースが狙っているターゲットに重なると言えそうです。LINE広告を含むデジタル広告全体の戦略について教えてください。
網谷:LINE広告以外にも、FacebookやTwitterなど主要メディアに対しては一通り配信していますが、アドネットワークは積極的には展開していません。スマートニュースのコンテンツでは、クーポンなどで他社のブランドを扱うことがあり、ブランドセーフティの観点を重視しています。広告配信でも掲載されるメディアは慎重に選びたいため、アドネットワークは拡大しづらいという背景があります。
広告配信については、メディアのユーザー属性に合わせて訴求内容を変えています。各種ニュースやクーポンチャンネル、アイドルグループの専門チャンネルなど、様々なコンテンツを発信しているため、若年層のユーザーが多いSNS広告ではアイドルグループの専門チャンネルを訴求し、ビジネス層が多いメディアではニュース情報を訴求するなど、メディアのユーザー属性と訴求するコンテンツ内容の親和性を重視しています。
MZ:メディア選定についてはどんな基準がありますか?
網谷:「ターゲット人口×認知率×リーチ×CTR(クリック率)×CVR(コンバージョン率)=CV(コンバージョン)」という考え方をしています。
たとえば、日本のスマートフォンユーザーを8,000万人と仮定し、これをターゲット人口とします。次に、8,000万人の中で認知を獲得できているユーザー割合を仮に70%とすると、ターゲットは5,600万人になります。この5,600万人のユーザーに対して、どのメディアを活用すれば100%カバーできるか。上記の計算式での「リーチ」を「メディア」と考えて選定しています。もし、訴求するコンテンツのターゲット人口に若年層が多い場合、SNS広告なども考慮しますが、8,400万人(2020年3月末時点)という圧倒的なユーザー数を持つLINEはどんな場面でも選択肢に入ってきます。
網谷:また、新サービスの受け入れが早い順にユーザー層を5つ(イノベーター/アーリーアダプター/アーリーマジョリティ/レイトマジョリティ/ラガード)に分類するイノベーター理論に当てはめてみると、クーポンを開始するまでのスマートニュースのユーザー層はアーリーアダプターが中心でした。それが、クーポンのスタートによってマジョリティを取り込むことができたと感じています。
急成長しているソーシャルメディアはマジョリティにも届くメディアですが、頻繁に使っているユーザーはアーリーアダプターが多い印象です。一方、LINEはマジョリティに強く、LINEでしかリーチできないユーザーも一定数存在します。レイトマジョリティ層も多いと見ているため、この層にリーチできるメディアとして重宝しています。また、テレビCMの効果で2年ほど前からスマートニュースの認知率が急上昇しましたが、興味深いことにLINE広告経由のアプリダウンロード数は認知率の上昇と比例するように伸びています。そのため、最近は以前よりもLINE広告を活用するようになりました。