まずは“絶対に買ってくれる1人”を探す
MZ:では、具体的に川端さんはどのようにバナーやLPを制作しているのですか?
川端:たとえば、オーガニックが好きな人というペルソナにはなぜオーガニックが好きになったのかという背景が全く描かれていません。「オーガニック好きの私」が好きなのか、「身体的な関係でケミカルな物が苦手」なのか、という背景です。「港区在住の子供が2人いる38歳主婦」のような、よくあるペルソナを立ててその背景は予測できるでしょうか。そうではなく、この商品を指し出したら絶対に買ってくださる一人の人を探すところから始めます。その方にインタビューして、どんなスタイルを好み、どんな言葉を使うのか、といったことまでしっかり摂取した上で、必要な接点や情報、コンテンツを組み立てます。
同時に、そのペルソナは市場に何人いるのか? そのペルソナだけで目標数値は達成できるのか? というテストを繰り返し、不足している数値、その原因、解決施策を積み上げていきます。ペルソナのインサイトという定性データを定量データで計測し、ニーズを探り仮説、計測、改善を行き来しています。
MZ:架空の人ではなく、実在する人にインタビューして深掘りすることが大事なんですね。
川端:そうですね、インタビューももちろん大事ですし、普段のコミュニケーションでも顧客を把握するための素養を養えると思います。社内のメンバーもそうなんですが、僕らはできるだけいろいろな人に会って、使う言葉や感情の起伏、何を感じているのかという部分に意識的になるようにしています。人間観察ではないですが、そうしたストックを制作に応用していくことが重要だと実感しています。
直接的な獲得施策にも、LTV発想を
MZ:お話をうかがっていると、利益にこだわっているからこそ“売れる”という言葉を安易に使われていないのだなと感じます。利益を出せるLPに必要な考え方や要素とは、何でしょうか?
川端:正直、LPだけで利益を生むのは難しい話だと思います。ROIとROASのどちらでみるのかによっても違ってきますし、獲得件数が多くても離脱も多かったら利益とは言えません。ただ、いくつかポイントを挙げると、まず顧客の期待とクリエイティブのミスマッチを極力なくすことが有効です。そのために、購入の可能性がある人のニーズをしっかり捉えて、訴求をそれぞれ最適化します。
その上で、地道に計測ポイントを設けて採算が合っているのかを確かめていくと、たとえば低関心層はリーチが取れていても採算が合わないからやめるのか、それともいずれ購入者につながるから継続するか、といった判断もしやすくなります。もちろん、このように中長期的な視点でLPやバナーを設計するには前述の「ビジネス思考」が必要ですが、逆にそれができれば、LTVの向上に寄与するLPを実現できると思います。そうすると、おのずとファンと呼べる顧客が増え、CRMまで視野に入れた一貫したマーケティングが可能になります。
MZ:なるほど、そこまで見通して最初の接点を設計することもできるんですね。
川端:もっと言うと、LPはブランディングにもつなげられます。ブランディングは決して“いい感じ”のサイトやロゴや作ることではなく、僕は全部数字に表れるものだと考えています。個々の顧客にいちばん適した接触の仕方で関係ができ、ファンになってくれたら、その熱量が低関心層に届いて興味を引く、そんな好循環が生まれます。
データを最大限活用することと、顧客を“1コンバージョン”と捉えずに丁寧にコミュニケーションを図ることは両立できると思うので、今後もその考えを徹底し、マーケティングとクリエイティブを高い次元で融合できるように努力したいですね。