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ミレニアルマーケターが思い描く2025年

世界のミレニアルマーケターが思い描く2025年とは

 インテージではさらなる取り組みとして、得られたアウトプットを昨秋、マドリードで開催されたマーケティングリサーチ国際会議ESOMAR FUSIONで発表し、参加した世界各国のリサーチャーたちと、ミレニアルマーケターのマップを読み解いた。参加者からは、「切り口によって新しい発見があるから、このマップを1日中読んでいられる」「悩んでいるイノベーションの解決策になりそう」といった声が上がり、大変活気あるセッションとなった。本稿でも、世界のミレニアルマーケター(20〜35歳、マーケティング業務経験13年未満)に焦点を当て、期待構造を明らかにしていく。

 ミレニアルマーケターへの調査では、2025年のマーケティング業界への期待構造のハブには、「strategy」「vision」が表出。また、出現ワードランキング(図表1右)では、8位に「innovation」、12位に「innovative」があり、この2つのワードは、日本マーケターのTop20にはランクインしていない、世界のマーケターならではの傾向だった。ここからは、マップに出現したワードに注目しながら、デ・サインワークショップで得られた知見を紹介したい。

(1)原点は“意志あるストラテジー”

 ミレニアルマーケターのハブには、「strategy」が出現し、近隣には、「serious」「hardworking」「hardwork」があり、(図表3左)「戦略立案への真摯な取り組みへの期待」と読むことができる。

図表3 ハブに出現したワード(ミレニアル/シニアマーケターの比較)(タップで画像拡大)
図表3 ハブに出現したワード(ミレニアル/シニアマーケターの比較)(タップで画像拡大)

 また、ハブに存在していることから、マーケティング活動において重要な要素であると捉えられているようだ。さらに周辺に目を向けると、「vision」が存在する。マップ上では近隣に存在するワードは同じ意味を持つと読む。マーケターとしてビジョンドリブンな戦略を立てる、“意志あるstrategy”を持つことが期待構造の中枢となっていることがうかがえる。

 なお、世界のシニアマーケター(40〜55歳、マーケティング業務経験10年以上)のハブは、ミレニアルとは異なる(図表3右)。ハブには「proven」「visibility」「change」「growth」「success」が出現。「変革や成長は見える形で示したい、成功を可視化したい」という期待が表れている。

 戦略にビジョンを持つことをハブ連想に持つミレニアルマーケターに対し、変革や成功の可視化を重視するシニアマーケターと、世界のマーケターであっても世代によって、その期待構造の中枢に違いが見られた。

 次に、ミレニアルマーケターのハブ「strategy」を起点に、北西方向に「innovative」、北方向に「innovation」が存在している。このことから、“意志あるストラテジー”で目指すものは、“革新”、“革新性”であることがわかる。ここからは、2つのワードの意味を読んでいく。

(2)イノベーティブ品質という新指標

 北西方向の「innovative」周辺には、「quality」、「different」、「unique」が出現する(図表4北西)。

図表4 “意志あるstrategy”の先にあるもの(タップで画像拡大)
図表4 “意志あるstrategy”の先にあるもの(タップで画像拡大)

 「quality」は、出現ワードランキング4位(9%)であるが、「innovative」の近隣に存在することに注目したい。革新的な商品の品質の良さが認められるには、企業ブランド資産や効果的なコミュニケーション施策を用いるか、ある程度市場形成を進める必要がある。マップ上では同じポジションにあることを足掛かりに解釈を拡げると、商品のコモディティ化が進む中で、「新規性」や「自分向け」などの指標に加え、商品の品質の良さを測る新たな指標として、「その商品は、innovativeかどうか」が問われるとも考えられる。2025年のマーケティング業界では、革新性を定義し、指標として用いることが、重要度を増すのかもしれない。

(3)ソーシャルグッドな商品市場の形成

 次に、「strategy」から北方向にある「innovation」に着目する(図表4北)。周辺には、「product」、「marketing」が存在し、世界のミレニアルマーケターは、マーケティングとは「イノベーションプロダクトを開発すること」と捉えていることがわかる。

 では、このイノベーションプロダクトとは、具体的にどのような商品なのだろう? さらに同じ方向にワードを読み進めると、「eco friendly」「environmentally friendly」「challenge」「proud」「kind」が並ぶ。企業の成長、顧客の満足のためだけに革新的な商品を生み出すといったニュアンスとは異なり、社会、地球環境への影響を考慮した商品を、innovationと定義しているのだ。マーケターとして、社会や地球環境に“kind”であり、ソーシャルグッドな商品を生み出すことに挑戦したいという意思や、ソーシャルグッドな商品市場の形成が進むことへの期待が垣間見える。

(4)イノベーションに不可欠な“遊び心”

 北西方向には「innovative」、北方向には「innovation」があったが、その意味合いは異なるものであった。しかし、いずれの方向にも共通する期待要素が浮かびあがる。北西方向には、「humorous」「funny」「sense」、北方向には、「humour」「fantastic」「enthusiastic」、が存在する。ミレニアルマーケターは、革新・革新性を目指す上で、個人のユーモアや、センス、楽しさ、といった“遊び心”が欠かせないと考えている。

 マップのハブは、「strategy」という、一見ロジカルで堅実なワードであるが、それを起点とした文脈に存在する、人間の楽しむ欲望や高揚感が、マーケターとしてありたい姿、マーケティング業界への期待と言える。

 今回は、世界のミレニアルマーケターに焦点を当て、その期待を探索した。次回は国内マーケターの世代間の違いに着目し、紹介していきたい。

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この記事の著者

杉野 遥香(スギノ ハルカ)

株式会社インテージ カスタマー・ビジネス・ドライブ本部 事業デザイン部 デ・サインリサーチグループ リサーチアナリスト/ワークショップデザイナー 2025年マーケティング業界への期待Proj.リーダー
インテージでは、リサーチとワークショップを組み合わせ、新しい商品やサービス開発を支援するプログラム『デ・サインリサーチ』を担...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/07/27 15:00 https://markezine.jp/article/detail/33871

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