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「BtoBの事業拡大にブランディングは欠かせない」ラクスル&SmartHRが語るマーケティング戦略


BtoB企業もマス広告、ブランディングは避けて通れない

 そもそも、SmartHRがここまでテレビCMなどをはじめとしたブランディング施策に注力する理由はどこにあるのか。岡本氏は、3つの理由を挙げた。

 「1つ目は、当社のようなSaaSプロダクトは先行逃げ切り型という特性を持っているからです。SmartHRは99.5%という高い継続率を誇っているので、常に先手を打っておくことが求められます。2つ目はデジタルを中心とするリード獲得施策に頭打ちを感じたから、3つ目は競合が増えてブランディングの重要性が増してきたからです」(岡本氏)

 この発言に対し、田部氏は同意し自身の考えを語った。

 「デジタルマーケティングのみでの施策を続けていると、頭打ちを感じてしまうのは多くの企業に共通する点だと思います。ラクスルもそうでしたが、やはり、指名検索数を増やすにはマス広告に投資するべきですね」(田部氏)

 では、マス広告などのブランディング施策に踏み込む際は、どのような指標を設定すればいいのか。岡本氏は「SaaSの一般的な指標で十分判断できる」と解説。

 マーケティング全体では「LTV(顧客生涯価値)/CAC(1顧客あたりの平均獲得コスト)」を計測。「LTV/CAC>3」であれば、積極的に広告投資するべきとアクセルを踏んできた。そして、個別のリードではCOST/MQL(マーケティングによって生まれたリード)を見ているという。

 また、SmartHRでは、マス向けの施策を推進するにあたり、マーケティングの組織体制を変更している。2019年まではメディア・広報・オフライン・オンラインの機能別組織だったのが、2020年からは、メディア・広報・ブランドマーケティング・リードマネジメントに分け、ブランディングとリード獲得・育成の目的別組織に再編した。

予算もプロダクト認知もないとき、どうする?

 講演の終盤、事前に寄せられていたBtoBマーケティングに関する質問に、田部氏と岡本氏が回答した。

 その中でも熱く語られた質問が2つある。1つは「社名やプロダクトの認知がほとんどなく、予算もほとんどない時期に、どうやって認知度を上げていけばいいのか教えてください」というもの。

 これに対し岡本氏は「やはり広報・PR」と回答。メディアに露出できる機会を見つけ、地道に情報発信していくのが重要だという。また、SmartHRでは、オウンドメディア「SmartHR Mag.」を認知目的に運営しており、岡本氏はそのような施策も活用できるとした。

 田部氏も「スタートアップの創業期において、広報・PRの重要度は高い」とした。たとえプロダクト認知や予算がなくとも、その会社・サービスならではのネタを作りプレスリリースを展開していくことで道は切り開かれるのだ。

 そしてもう1つ、2人の議論が盛り上がったのは「プロダクト部門とマーケティング部門は、どのように関係性を構築すればいいでしょうか」という質問だ。

 岡本氏は「SmartHRでは、関係性を構築するという概念が生まれないくらい、お互いオープンにコミュニケーションできている」と、一般企業とSmartHRの企業文化の違いを挙げた。

 具体的には、コミュニケーションは基本Slackで完結し、社員は全Slackのチャンネルに参加できる。ミーティングも自由に入ることができ、議事録もオープンになっているという。

 企業規模が大きくなればなるほど、徐々に部署ごとのコミュニケーションなどに閉じていき、壁ができてしまうケースは多い。SmartHRのように、コミュニケーションをオープンにできる企業文化を意図的に作っていくことが、多くの企業には求められそうだ。

 田部氏はこのSmartHRの文化を称賛し、最後に「プロダクト部門とマーケティング部門は連携を超え、一体化するぐらいの気持ちが重要」とした。

 今回の講演で、両社ともに単なるブランディングでテレビCMなどを仕掛けているのではなく、きちんと事業拡大につながる投資に昇華するための仕組みを考えていることがわかった。

 近年SaaSをはじめとしたBtoB企業のマス広告を見かける機会は増えているが、「うちもテレビCM出稿すればビジネスが伸びるかな?」と考える前に、自社プロダクトや現在の顧客接点、サービスの価格などを見て、4P視点で効果のある投資に昇華するための仕組み作りが求められている。

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この記事の著者

水落 絵理香(ミズオチ エリカ)

フリーライター。CMSの新規営業、マーケティング系メディアのライター・編集を経て独立。関心領域はWebマーケティング、サイバーセキュリティ、AI・VR・ARなどの最新テクノロジー。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/08/25 21:43 https://markezine.jp/article/detail/33956

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