近未来のマーケティング活動は社会貢献と強く結びつく
杉野:図表3を見ると、ミレニアルマーケターでは、社会課題関連ワードがマップ全体に出現しており、マーケティング業界の期待構造を読み解く大きな鍵であることがわかります。
また、北方向にある「環境問題」「エコ」「少子化」の周辺には、「SNSの活用」があります。SNSを通じた問題提起を含め、SNSの活用そのものが社会課題への参画の仕方のひとつと捉えられているのかもしれません。その先には、「文化」もあり、ミレニアルマーケターにとって身近な発信ツールと環境問題をつなげた新たな文化の創造に、期待が込められていると読みました。
鮎澤:ミレニアルマーケターにとって、近未来のマーケティング活動はソーシャルデザイン活動として捉えられていると、ワークショップでも話題になりましたよね。SNSはプライベートツールに留まることはなく、社会への参画や、意見を述べ合う場としての活用が加速するのかもしれません。
シニアマーケターの期待構造を同視点で見ると、社会課題のカテゴライズとして、グローバルの課題なのか、国内の課題なのかを意識していることがうかがえました。また、ITやIT企業で形成されたエリアと、「社会貢献」が対極の配置にあることも注目に値します。IT技術やIT企業と「社会課題」は、意識連結上、関係が薄いホワイトスペースと捉えられている様子です。知覚として形成されている日本の社会課題と、IT連想(※)が結びつく活動の強化が、新たな事業創造のヒントとも言えるのかもしれません。
2020年の現在の我々は、コロナショック以前に計画していた様々なマーケティングプランの再構築が求められています。新しい生活様式を提案していくためには、市場や生活者に正解を求めにいくのではなく、マーケターとして、また一人の生活者としての自身の気持ちやビジョン、すなわち“ありたい姿”を問い直し、そこから新しいヒントを得ていく必要があると言えるのではないでしょうか。
調査概要
プロジェクト手法は、デ・サインリサーチ(インターネット調査、ワークショップ)。
インターネット調査は、2019年8月に実施した。
対象者は以下のとおり4セグメントのマーケター合計2,000人(各500人)。
- 世界20ヵ国のミレニアルマーケター(20~35歳、マーケティング業務経験13年未満)
- 世界20ヵ国のシニアマーケター(40~55歳、マーケティング業務経験10年以上)
- 日本のミレニアルマーケター(20~35歳、マーケティング業務経験13年未満)
- 日本のシニアマーケター(40~55歳、マーケティング業務経験10年以上)
世界:ESOMAR Global Market Research 2018 An ESOMAR Industry ReportのMarket Research市場規模上位30ヵ国よりエリアを考慮し、20ヵ国を選定。
訂正:誌面版の63ページ「日本の社会課題と、IoT連想が結びつく活動の強化が~」の記載について、正しくは「IT連想が」となります(Web版は訂正済み)。
調査レポート「日本のマーケターの思い描く2025年の“ありたい姿”とは?」(Intage 知る gallery)。
