ミレニアルは“人”を、シニアは“商品”を思い描く

2025年プロジェクト リーダー 杉野 遥香
杉野(ミレニアル担当):図表1、ミレニアルマーケターの期待のハブ(中心)で、まず目につくのが、「ペルソナ」「Instagram」。これらがマーケティング活動に欠かせないツールとなっているとも読めますが、「共感」も近くにあります。マーケター自らが共感できる人物像、生活者にも共感される“顔が見える”ロールモデルを創りたいという期待が込められているようにも思います。
鮎澤(シニア担当):マーケティング活動と言えば、市場をどのように定義するのか、また未来に向けては、市場拡大に向けた課題がまず浮かぶと考えられますが、ミレニアルマーケターは、周辺ワードの成り立ちも含め、ペルソナなど、「象徴となる人を描く」ことを課題解決の鍵と捉えているのかもしれませんね。
一方、シニアマーケターにおいては、マップの期待のハブ(中心)に「品質」「高品質」「商品」があり、プロダクトの品質を追求する姿勢が見て取れます。同じく、「先進性」「挑戦」も近隣に出現していることから、「品質と先進性を兼ね備えた商品やサービスの創造に挑戦したい」という、先進的なモノづくりへの期待が集結していると言えます。
ミレニアルは“象徴となる人”、シニアは“高品質なプロダクトやサービス”と、近未来への期待の描写とする“対象”が異なることは発見であり、マーケティング活動の知覚にあるインサイトが浮かび上がってきたとも言えます。

それぞれが思い描く「戦略」とは

シニアリサーチアナリスト/ワークショップデザイナー 2025年プロジェクト サブリーダー 鮎澤 留美子
杉野:日本のマーケターにとって、近未来の「戦略」とは何を意味するのでしょう。図表2を見ると、ミレニアルマーケターでは、「戦略」は、北東にあり、周辺には「シーズ」「顧客」「市場」「グローバル」「先進的」「トレンド」「最先端」があり、市場を開拓していく意味合いのエリアにあります。また、最も多い連想ワードだった「AI」もこのエリアに出現しており、IoTや最先端技術を駆使し、グローバル展開を狙い、顧客獲得、市場戦略を緻密に行っていきたい期待が表れています。
鮎澤:一方、シニアマーケターの戦略の意味をひも解くと、ハブ(中心)にある「成功」を起点に同じベクトルのワードをつなげると、「楽しさ」「笑顔」「達成感」の先に「戦略」が登場します。「人脈」「フィーリング」「やりがい」も周辺にあることから、相対的にミレニアルマーケターが想起していたテクノロジー文脈とは違う期待連想がありそうです。

杉野:ミレニアルマーケターとは、ワードの温度感が異なりますね。シニアマーケターでは、働きがいや、自己実現のエリアが「戦略」とひもづけられて形成されており、言葉として「戦略」を活用する場面や経験が異なることが表れたのだと思います。ところで、シニアマーケターに出現した「フィーリング」というワードを、鮎澤さんはどう読み解きますか?
鮎澤:「人脈」がほぼ同位置にあることから、「フィーリングが合う仲間と人脈構築」の連想だと思います。シニアマーケターにとっての2025年の「戦略」は、個人の達成感や笑顔のため、働き甲斐を求め、働き方改革の実現を思い描く。その連想とともに「フィーリングが合う仲間と人脈構築」があることから、これらのワードは、戦略を語るときに重要な要素なのかもしれません。シニアマーケターは、“飲みニケーション”も今より多くしていたと思いますが、そのような活動によって培われた人脈こそ戦略だ、という意識が底堅いという印象を受けます。
杉野:「テクノロジーの進化と顧客“戦略”」と「自ら/周囲の関係性や働き方を構築する“戦略”」とで、同じ「戦略」という言葉一つをとっても、まったく異なる意味を持つことがわかりますね。