フルファネルから見る「D2Cモデル」のマーケティングとは
今後は、カスタマージャーニー全体にわたって、フルファネルのいかなるポイントにおいても、オンラインとオフライン経験のシームレスな体験を、継続的に提供し続けていくことがますます重要になってくる。カスタマージャーニーはかつてのようにテレビによる認知からだけではじまるものではない。どの接点からも起点となる。
我々が考えるデジタル環境下でのフルファネルは以下の通りである。

認知:マスメディア、インターネット広告、動画広告、動画チャネル、ソーシャルメディア、オウンドメディア、イベント、店頭など
興味・関心:コンテンツ配信、クリエイティブ、ソーシャル、インフルエンサー、タイアップ記事、メール/メルマガ配信、オンラインセミナー、オンラインビデオ、ナーチャリング分析/スコアリング(MA施策)など
比較・検討:オウンドメディア、比較サイト、ショールーミング、ソーシャル、Webルーミング、ホワイトペーパーなど
購入・所有:自社EC、オンライン販売、ECプラットフォーム出店、オンラインサービス提供、ライブコマース、直販モデル(直販店舗、通信販売)など
使用・体験:SNS、ユーザーコミュニティなど
評価:SNSなどでの評判、反応、レビューページ、ユーザーコミュニティ、コールセンターやお客様窓口など
情報発信:SNSでの発信、インフルエンサーマーケティングなど
ファネルの左側は、従来、広告会社が最も得意としてきたブランディングやクリエイティビティの世界である。これに加え、ファネルの右側において、一度買ってくれた顧客を資本と捉えて考える『顧客体験創造』の仕組みがより一層重要になってくる。

ファネルの全領域において、どのようなメッセージやクリエイティブ、コンテンツ、アイデア、実体験で、そのブランドの世界観を伝え、より一層ファンになってもらうかが成功のための大切なポイントとなる。単体ごとの施策を考えるのではなく、全体の設計が重要となってくるのだ。
そのフルファネルの中でも、真ん中にある「購入・所有」は最も重要なポイントだ。単なるECとしてではなく、「Eビジネス」全体として設計していく必要がある。その現状と戦略について、長年、この領域に実務で関わってきて、最近、ADKにジョインしたEビジネス・シニアディレクターの白井秀樹より説明したい。
Eビジネスの成功のポイント~売上の半分はオムニコマース売上~
国内のB2C-EC市場規模は約20兆円(経済産業省調査)だが、購入にECが何らかの形で介在した売上であるオムニコマース市場規模は約60兆円(ITナビゲーター2020版・NRI)もある。小売市場規模が140兆円(経済産業省調査)なので、半分近い消費がECに関係していることになる。
これは販売員ならば肌感覚でうなずける数字だろう。消費者はECサイトで下調べをしてあらかじめ買うものを決めて、レビューもチェック済みなので商品は販売員より詳しいのである。しかしながら、企業側で売上の半分にECが介在しているという認識があまりないのではないだろうか。
新型コロナを機にEC強化を掲げている企業は沢山あるが、強化すべきはWeb上のカートで決済させるECではなく、ECと店舗をひとくくりに捉えて購入を促す仕組みを作り上げるEビジネスこそが重要なのであり、それに本気で取り組まないと小売市場の半分しか取れない時代が来ているのである。近い将来オムニコマースの構成比は80%まで高まるという説もある。つまりほとんどの商品購入にEビジネスが関わる時代が訪れることになる。
自社ECの強化でオムニコマースを取り込む
オムニコマースを取り込むためにはどうすればよいのか? 答えはEビジネス思考での自社ECの構築とその比率を高めることである。自社ECと他モールの適性比率は諸説あるが、まずは半分以上を自社ECで売ることを目指すべきではないか。
自社ECのメリットは、顧客データを自社で保有できること。店舗との連携や施策を独自に打つことが可能なこと。一定の売上規模を超えると利益率が一気に高まる(ECモールの費用は変動費だが自社ECは固定費)ことである。ECモールは独自ポイントで顧客を囲い込んでいるので、自社ECとは棲み分けが可能である。ロイヤルカスタマーは自社ECで囲い込みECモールも複数活用して売上を最大化させる多チャネル戦略が理想形である。
