ユーザーが「やらない理由」を尋ね、原因を潰していく
仮説を導き出したら、次にやるべきは具体的な施策作りだ。そのプロセスが「Reverse」となる。三浦氏は「このプロセスは非常に重要です。最低限、Reverseをやるだけでも数字はかなり上がるはずです」と力説する。
具体的に何を行うのか。これはbottleneckの逆側(リバース)に注目するプロセスになり、今回の例に従って具体的にいうと、「なぜEC(店舗)を使わないのか」という理由に着目することだ。
この解答を洗い出す施策として有効な手段の1つが、ユーザーボイス分析だ。端的にいえば、直接ユーザー自身に理由を尋ねることとなる。たとえば今回、ユーザーに「なぜEC(店舗)を使わないのか」と聞いたところ、「ECを利用する必要がない」「欲しい商品がECにはない」という答えや、「ギフトしか買わないからECで十分」「店舗の商品は高い」という回答が得られた。
こうして理由がわかったら、次はこれを潰していく作業に入る。これが「Unrefusable Offer」、日本語で言うところの「絶対に断れない提案」だ。
「ECを使う理由がない」のであれば、EC限定クーポンを店頭で手渡す、「欲しいものがない」のならEC限定商品を出す。このように「やらない理由」を徹底的に潰していくことで、望ましい行動を促進するわけだ。
三浦氏は「ユーザーの行動解析ができればいいですが、それができないなら、早い話、ユーザー自身に直接理由を聞いてしまうのが有効です。そこで導かれた“購入しない理由”をなくしていくだけで成果は出ます。一見、当たり前のことですが、この“当たり前”をやっていない企業がかなり多い。これをやるだけで、かなり数字は上がるので、ぜひやってみてください」という。
最後の「Operation」は、施策を実施してKPIモニタリングするプロセスだ。日次でKPIのモニタリングを行い、共有する体制を作ることで、現場の感度はかなり上がる。今回のプロジェクトでは、「b→dash」を用いてデータ統合や分析、モニタリングの結果共有を行うことで、購買回数と購買合計額が改善し、店舗・EC相互利用顧客数は137%増、年商約25億円の増加につながったという。
このフレームワークについて、三浦氏は「ポイントは、『当たり前のことをきちんとやる』ことにつきます」と断言する。
「もしすべて行うことが難しいのであれば、まずはfunnelですべてを数値化して歩留まりを洗い出し、数字を良くするためのUnrefusable Offerを考えること。この2つだけでも、数字が上がることを実感できます」(三浦氏)
成果が得られないのなら、この落とし穴を疑え!
一方、この6つのステップを着実に進めても、なかなか効果が出ない場合はどうすればいいのか。再び登壇した久住氏によると、データ活用には2つの落とし穴があるという。
1つは、データが統合されていないこと。特に3番目のMicroscopeのプロセスでは、すべてのデータが統合されてこそ、施策につながる有効な仮説を見つけることができる。逆にいえば、データが分断されていると、ボトルネックが生じる根本的な原因を発掘できなくなる可能性が高い。そのため、様々なシステムに蓄積されており、フォーマットもバラバラのデータを統合できるデータ基盤が必要になる。
もう1つ、データ統合基盤を導入しても、その後の運用で落とし穴にはまる可能性がある。具体的には、データ統合基盤と、そのデータを活用するシステムとの連携作業だ。
このデータ連携作業は、データが蓄積される限り続くもの。データを取り込み、変換して統合する作業で、ある企業をモデルケースにすると380時間もの作業工数が必要になるという。この場合、データ連携を簡素化するツールを使うことで、工数をかなり削減できるという。
成果を出すためのステップを、段階的に進めていき、落とし穴にはまらなければ、データを活用したマーケティングは早い段階で結果を出す。結果がなかなか実感できないのであれば、どこかに問題がある可能性が高い。最後に久住氏は、「データマーケティングに精通し、ノウハウを持つパートナーに相談すれば、その問題点を早めに見きわめることができるでしょう」と述べ、「ツールやパートナーの有効活用も視野に入れた戦略を」と勧め、講演を終えた。