SEOを推進するための「環境」
続いて、SEOを推進するための環境について説明します。SEOの情報収集と言えば、SEO界隈の有名人のブログやTwitterアカウントの投稿を参考にされている方も多いと思います。私も辻正浩さんや木村賢さんなどのTwitterアカウントのSEOに関する話はもちろん、SEOに関係ない話も含めていつも楽しく読ませてもらっています。鈴木謙一さんの「海外SEO情報ブログ」は最新情報をキャッチアップする場として参考にしています。
ただ、大規模サイトのSEOでトップを走り続けるためには、それだけでは足りないこともありますので、SUUMOではSEOの情報を一段高いレベルで収集するための環境を整えています。
《SEO専門代理店》
SUUMOでは複数のSEO専門代理店と契約しており、彼らから最新の情報を取り入れています。事業会社にいる我々よりも広い視野で検索エンジンに向き合っているため、他業界の知見を取り入れる参考になります。自社の事業ドメインだけみていると気づけない検索結果の動きをもとに、将来のSEO施策の方向性を見定めたりしています。《リクルート内SEO担当者》
また、リクルートの各事業のSEO担当者とも情報交換をしています。リクルートでは人材、旅行、飲食、美容、結婚、自動車、教育など、様々な領域で事業を展開しており、それぞれにSEO担当がいます。特にアルゴリズム変動があった際などはディスカッションが盛んに行われます。各事業のキーワードモニタリングはお互いに共有されているため、特にやりとりしなくても、各事業のSEO状況が把握できる環境を構築しています。
《海外カンファレンスへの参加》
さらに、最先端の情報を求めて海外に足を運ぶこともあります。私自身、過去にSerach Marketing Expo(SMX)、MozCon、PubCon、Contents Marketing Worldなどのカンファレンスに参加しています。特にSMXとMozConが開かれるシアトルへは、何度も訪れています。もちろん自費ではなく、出張用の予算を組んでおり、そこから捻出しています。
現代のSEOでは小手先のテクニックは通用しない状況のため、カンファレンスでインプットした情報が、即座に成果につながるかというと、かなり微妙です。ただ、事業会社のSEO担当のプレゼンから米国におけるSEOのレベル感を把握したり、Google担当者のキーノートスピーチからGoogleの目指している方向性をつかんだり、という点では意味のある場だと思っています。
また、カンファレンスでは多くのマーケティングツールベンダーが自社商品をブースで展示しており、その中には日本未上陸のものもあります。先日とあるツールで、日本で最初のクライアントとしてSUUMOが紹介される、ということもありました。
他にも、日本人参加者同士で交流することもあります。日本ではお互い競合だったり、事業会社と代理店など立場の違う人間同士で、SEOに関してああでもないこうでもないと議論したりもします。
もし、あなたがマーケティング部門の管理職なのであれば、SEOを担当するメンバーのため、上に掛け合って出張の予算を獲得し、カンファレンスに参加してもらうことで、部下の刺激になると思います。今は状況が状況なのでなかなか難しいですが、今後カンファレンスに参加できる日がくれば、是非一考してみてください。最近はオンラインでの開催もありますので、そちらから試してみるのもありかもしれません。
《新規SEOツールの開拓》
新規のSEOツールも積極的に導入しています。特に米国ではSEOは基本的にインハウスの担当者が実行しており、ツールでその業務を支援するというのが一般的なため、欧米中心に様々なサービスが登場しています。なんでも自由にというわけではありませんが、比較的自由に導入できるよう、予算を確保しています。ツールの機能の栄枯盛衰もなかなかおもしろく、昔はバックリンクを評価する機能が重視されていましたが、昨今はコンテンツ作成のためのサジェストを行ってくれるツールが増えている印象です。海外のツールは意外と安い値段で導入できるので、一度調べてみるのをお勧めします。
より広い視点で体制と環境の整備を
さて、ここまでSUUMOのSEOを支える「体制」と「環境」について説明してきました。ビジネスモデルによってはここまでSEOにこだわらなくていいという事業もあるかと思いますので、どんな会社でも有用な情報かと言われると、そうではないかもしれません。ただ、専門人材の活かし方という意味においては、考え方は参考にしていただけると思います。
これまで様々な試行錯誤があって今の体制や環境に至っているわけですが、まだまだ道半ばなところもありますし、手薄な部分もあります。逆説的ですが、SEO対策のためにはSEOのことだけ考えていればいいわけではありません。より広い視点での体制と環境の整備が必要だと考えています。