どうやって見つける?WHOとWHATの正しい組み合わせ
セッションの後半では、WHOとWHATの設計で迷いやすいポイントが解説された。
特に難しいポイントは、WHOとWHATの最適解を導くことだろう。ここでも、N1分析を用いると良い。ただし、顧客インタビューで顧客が感じたベネフィットや、そう捉えた背景を、生活習慣や価値観、家族などの人間関係から読み解くには、スキルが必要だ。
「顧客の心理状態を読むのは誰でもできないが、トレーニングで可能」と西口氏。そして、「WHOとWHATの仮説を立て、スケールするかどうかの簡単な調査をしましょう」と話した。
続いては、9segsの各セグメントの定義だ。たとえば、離反顧客とは、最終購買からどのくらいの期間を指すのか? また、ロイヤル顧客と一般顧客の購買頻度の差は? などと設計は難しい。
長氏は、「業界やビジネスモデルによって、セグメントもケースバイケース」と話す。
たとえば自動車の場合、購買頻度は7年から8年と言われている。車種を、以前乗っていた、今乗っている、次に乗ってみたいで分解すると、すべて一致しているときは、積極ロイヤル顧客になる。また飲食業界の場合は、積極離反顧客、消極離反顧客が最も多いそうだ。
「最近行っていないけど、嫌いなわけではない」気持ちがあるため、新メニューを定期的に投入すると、これらの顧客は一般顧客へとシフトしていく。まずは、仮の基準を設けて、その分布を把握することから始めてみよう。このように、業界やビジネスモデルによってそれに応ずる対応策も大きく異なるため、まずは自社ブランドの顧客構造を理解すること。その上で、マーケットにおける自社ブランドの立ち位置を見ることが重要だ。
「カテゴリーごとにクセがあるため、セグメントの基準は決めの問題です。それを理解した上で、WHOとWHATの最適な組み合わせを見つけ、それを提案するHOWを決めていく。これを繰り返していくと、かなり確度が高く再現性のある本質的なマーケティングへ近づきます」(西口氏)
マーケティングは経営に直結する
ここまでの話をまとめよう。マーケティングとは、WHOとWHATを理解し、その組み合わせからHOWを提供することだった。無限に存在するWHOとWHATの組み合わせの中から、最もビジネスにインパクトが出るようプライオリティーを決め、HOWを実行することが、マーケターの仕事だ。すると今日、来月、来年とロードマップが見えてくる。つまり、ビジネスの継続的な成長が実現していくのである。
「マーケティングは経営に直結します。2つを切り離して考えてはいけません」と西口氏。マーケティングサイドから経営戦略を練るぐらいの強い気持ちが、ビジネスの結果を出すと語った。
企業規模が拡大するほど、顧客との距離は離れていきやすい。そんなときこそ、マーケティング部門は顧客と商品の関係性を正しく明示し、戦略設計の役割を担う必要がある。
もちろん、ビジネスモデルや方針から、HOWが中心の事業もあるだろう。しかし、「継続的な成長を考えるなら、WHOとWHATの理解は重要」と西口氏は語る。マーケティングには様々な戦略・戦術が存在するが、シンプルにWHO・WHAT・HOWの原点に立ち戻り、WHOとWHATからなる顧客戦略をまず固めることが大切なのだ。
終わりに西口氏は、次のようにマーケターへエールを送り、セッションを締めくくった。
「マーケティングを経営の力にしていくことが、マーケターの使命だと考えます。WHOとWHATの顧客戦略を参考に、マーケティングに本質的なインパクトを起こしていただけると嬉しいですし、その一助になりたいと思います。大変な社会情勢ですが、がんばりましょう」(西口氏)